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名も無き英雄の冒険譚  作者: オレオル
クエスト開始
41/41

第38話

 皆様のおかげで総PVが4000を突破いたしました!

 ここまでたくさんの人に読んでもらえてとても嬉しいです!!

 これからも沢山の人に楽しんでもらえる様に頑張っていきますのでご愛読してくださると嬉しいです。

 伯爵との模擬戦を行っていた僕は、早速二の足を踏んでいた。

 伯爵の魔法は強力で、僕の魔力では防ぐことが出来ず、必死に逃げることしかできなかった。

  僕は、伯爵が水の槍を投擲したのと同時に駆け出し、必死に距離を縮めようとする。

 そんな必死に走る僕を見た伯爵は、愉快に笑っていた。


 「どうやら自暴自棄になったようだな!!」


 伯爵が放った水の槍をどうにかギリギリで避けて、少しずつではあるものの、しかし確実に距離を縮めていた。

 あと10メートルかそこらと言う距離になった時、不意に後ろから何かの気配を感じて僕は素早く回避行動をとる。

 後ろから迫っていたのは、つい先ほど躱したはずの水の槍だった。


 「どうした、随分驚いている様じゃないか。ただ放つだけが魔法ではない、魔力のコントロールを極めていけばこの様に自在に魔法を操ることが出来るのだ。」


 そう言い放ち伯爵は、先ほどの様なただの射出ではなく、一つ一つの槍が意思を持ったように縦横無尽に駆け回り、僕に襲い掛かって来る。

 必死に回避する過程で、気づいたら先ほどまで詰めていた伯爵との距離が突き放され、また振り出しに戻ってしまった。


 「クソッ、また振り出しか……。」


 伯爵の魔法使いとしての技量はかなりの物で、放たれた魔法は殆ど誤差がなく僕を標的として追いかけてくる。

 しかし先ほどの水蒸気爆発の時も感じたことだが、魔法が地面に着弾して砂埃が舞っていたり、煙が漂っていて見通しが悪い中、僕を正確に捉えることが出来るのだろうか 。

 僕が見つけたつけ入る隙とは、この探知方法を逆手に取ったものだった。

 恐らく伯爵は僕の位置を魔力を使って探知している。

 どれだけ見通しが悪くても、魔力を感じる能力が長けていれば、相手の魔力を頼りに位置を把握することが出来るはずだ。

 修行中の時、師匠に高位の魔術師は視界に頼らないと言われたことがあった。




 「いいかアレク、いつかお前も自分より格上の魔法使いと戦う時が来るかもしれない。そんな時に1つ気を付けて置くことがある。それは『魔力探知』と言う技能だ。」


 「魔力探知?」


 「魔法使いは空間に存在する魔力を感知する感覚が優れている。その感覚を更に研ぎすますことで、周囲の生物の魔力を感じ取ることが出来る。これが『魔力探知』だ。」


 「そんなのズルいじゃないか!こっちが隠れていても場所がバレちゃうってことだろ?」


 「そうだな、しかしどんな魔法や技術にも必ず穴は存在する。例えば魔力探知は魔力の量も重要で、人間の魔力は普通の小動物などよりも多い為、誤認することがない。しかし人間と同程度の魔力を宿す魔石などがある場合、その魔石から発せられる魔力を人間と誤認することがあるんだ。戦い慣れた冒険者は魔力を宿した囮を使って魔法使いに接近して優位にたつことも多いんだ。」


 「魔力探知も万能じゃないのか…。」



 

 師匠の言葉から魔力探知の欠点を思い出した。

 魔力を感じ取る機能を逆手に取った作戦、それが僕の狙いだった。

 頭の中で作戦の流れを素早く確認して、改めて伯爵に向かって走り出す。


 「何度接近を試みようと同じことだ!業火の書・第1章・『火炎の壁(フレイムウォール)』、激流の書・第1章・『大洪水(ビックフロード)』!」


 伯爵は先ほどと同じように水蒸気爆発を狙って魔法を同時に放つ。

 僕は直撃を避けながらも伯爵に向かって歩を進める。

 水蒸気爆発は規模が大きいため、恐らく伯爵の近くで起こすことはできないはずと踏んだからだ。

 幾ら魔力で自身を保護できるとしても、直撃した威力を相殺しきることは難しいはずだ。


 「……ク゚ッ!」


 水蒸気爆発が起き、爆風にさらされながらも、僕は伯爵の近くまでたどり着くことが出来た。

 周囲には水蒸気の霧が漂っており、視界はすこぶる悪い。

 しかし、視界の悪い中での行動の仕方は師匠から教わっていたので、ある程度の誤差はあるものの伯爵の位置をとらえることが出来ていた。

 更に、伯爵はこの模擬戦を通して一度も動いていない。

 きっとそれだけ自分の魔法に自信があることの証拠だろう。

 僕は黒剣に魔力を全力で流し込み、伯爵に向かって投げつける。

 そして僕自身は残り少ない魔力で身体能力を強化して素手で直接攻撃に踏み切る。 

 しかし……。


 「甘いな!!魔力探知の弱点を私が知らないとでも!!」


 背後に迫った僕に気づいた伯爵は本をかざしチェックメイトと言わんばかりの表情で魔法を放つ。


 「頑張った方だと思うがこれで終わりだ。業火の書・第3章・『灼熱の鎖(ブレイズチェイン)』。」


 伯爵の本から炎の鎖が勢いよく飛び出してきて僕を拘束する。

 炎で出来ているのでもちろん熱く、肌が少し焼けるような感覚が広がっていく。

 しかし、この時僕は自分の作戦が成功したことを確信した。不敵に笑う僕に伯爵は何か見落としているのではないかと不安に駆られ、攻撃魔法を中断して自身の身を守ろうとするが、もうすでに遅かった。


 「これで僕の勝ちだ!!」


 この瞬間、伯爵の背後から大きな黒い大盾が迫ってきていた。

 その大きさは大人三人が横に並んだのと殆ど同じで伯爵を押しつぶすには十分すぎる大きさだ。


 「何!?………グハッ!」


 何が起きたか分からないとばかりに動揺し、伯爵は大盾に押しつぶされて、戦闘不能になった。

 一部始終を見ていたギルバートさんは一瞬唖然としたものの、ハッと我に返り、終了の合図を出した。


 「サルビア伯が戦闘続行不可能になったため、勝者アレク殿になります!!」


 ギルバートさんの宣言によって模擬戦は終了した。

 端で観戦していたアステルたちが駆け足でこちらにやって来る。


 「すごいわアレク!!」


 そう言いながらアステルは僕に飛びつく。

 避けるわけにもいかなかったので、アステルを受け止めて喜びを分かち合う。


 「お父様とあんなに戦えるなんて……やっぱりアレクは凄いわ!!」


 屈託のない言葉で褒めてくれるアステルに僕は少し照れてしまう。

 この年で彼女のような可愛い子に褒められて嬉しくない男は存在しないはずだ。


 「アステルたちが応援してくれたおかげさ。言葉は聞こえなくても僕を応援している気持ちは戦っている時も感じていたよ。ありがとうアステル。」


 僕の言葉にアステルは顔を赤くして俯く。

 ストレートに褒めるとこのような可愛い反応をしてくれるからからかい概があるというものだ。

 アステルの後ろでカエラさんが僕たちのやり取りを後ろから見ながら楽しそうに微笑んでいた。


 「ふふふ……本当に二人は仲が良いのね。」


 カエラさんは僕たちの仲を肯定的に捉えてくれているみたいだ。

 しかし、僕の後ろから大盾に変形した黒剣をどかして起き上がった伯爵はその光景を見て全く面白くなさそうな顔をしていた。


 「アステルと距離が近すぎるのではないか?」


 伯爵の大人げない態度をカエラさんが笑いながら宥める。


 「そんなこと言って~アレク君に嫉妬してるだけでしょう?」


 「わっ……私が嫉妬だと!?そんなことあるわけないだろ!」


 大きく動揺して反論する伯爵にアステルが呆れている。


 「もうお父様!アレクの前で恥ずかしいわ!!」


 アステルから御叱りを受けた伯爵は咳払いをして、何もなかったかのような態度で僕と向き合う。


 「ゴホンッ……アレク君、君の実力はよくわかった。アステルを頼んでもいいかな?」


 「ハイッ、もちろんです!!」


 僕の返事に伯爵は満足したようで、普段の温厚な雰囲気に戻っていた。


 「今日は疲れただろう?食事を用意したから食べていかないか?」


 「それが良いわ!模擬戦の話も聞きたいもの!!」


 二人の様子を見ていたカエラさんも僕に一緒に昼食を食べないかと提案してくれた。


 「分かりました、ご馳走になります。」


 僕はアステルと一緒に屋敷を案内されて食事場へと向かう。


 「それにしてもさっきの模擬戦、凄かったわね!お父様の魔法も途轍もなかったけどアレクがそれを躱してるのもカッコよかったわ!!」


 アステルが褒めてくれたことに、僕は少し頬を紅くしながら謙遜する。


 「そんなに凄いもんじゃないよ。実際は余裕なんて全くなかったし、伯爵はかなり手加減してくれていたはずだからね。」


 「そうなの?」


 「後で伯爵に聞けばわかるさ。」


 アステルと一緒に食事場に行くと、先に向かっていたカエラさんや伯爵が待っており僕たちに座るように促した。


 「さあ座り給え、遠慮なく食べてくれ。」


 テーブルに並べられた料理は、どれも僕のような平民が食べれるようなものではなかった。

 少し前に伯爵たちの屋敷にお世話になったことがあったが、その時でもここまでの食事は用意されていなかった。

 

 「いただきます。」

 

 料理を一口食べてみると、僕の口から表現するには難しいような複雑な味が口の長に広がる。

 食材もきっと名前すら知らないものだろうし、味付けのソースも一体何で出来ているか分からなかった。


 「早速だが先の戦いについて聞きたいことがあるんだ。」


 僕が肉を頬張っている仲伯爵が話す。


 「最後の攻撃、君は魔力探知について知っていたね?あの奇襲は魔力探知の特性を深く知っていないとできない芸当だ。」


 「僕に戦いを教えてくれた師匠が魔力探知の事を話してくれたことがあったんです。戦いの際中でその話をたまたま思い出したんです。」


 「なるほどな……。」


 僕たちの会話を横で聞いていたアステルが伯爵に先の戦いでの魔法について話しかける。


 「そういえばお父様が使っていた魔法ってなんだか普通の魔法と違う気がするのだけど……。」


 それは僕も疑問に思っていたことだ。

 一般的に魔法は初級・中級・上級そして最上位の四つで区分されているものだ。しかし伯爵が使用していた魔法は僕が知っている魔法とは別物のような気がした。


 「そうだね、説明してあげよう。まず、魔法使いには魔法を行使するための媒介として杖がよくつかわれているだろ?しかし私が使っているのはこの魔導書と言われるものなんだ。」


 「魔導書?」


 アステルがきょとんとした顔で聞き直す。


 「魔法に関する知識や魔法そのものが刻まれている本の事だよ。」


 僕がアステルに分かりやすく大まかな説明をしていると伯爵は関心していた。


 「魔導書の事についても知っているのか……その知識も君の師匠によるものかい?」


 「まぁ……。」


 「随分と優秀な指導者だったようだ。アレク君の言う通り、私の二つの魔導書には魔法が刻まれている。これは私が学生時代に友人と完成させたものでね、いくつかの魔法を改良してより強力に使うことが出来るんだ。もちろん普通の魔法を使う媒介としても機能するがね。一冊に大体15個ほどの魔法が刻まれていて今回の模擬戦では使う魔法を絞っていたんだ。」


 魔法を改良だなんてかなりの技術がないとできないはずだ。きっと相当な手加減をしてくれていたんだろうと改めて感じた。

 そして今度は伯爵が僕に模擬戦の疑問を投げかける。


 「最後の攻防、君はどうして自分を囮に使ったんだ?」


 「魔力探知には弱点がありました。視界が悪い中では魔力を持つ物質と人間の区別がつかないという点です。そこであえて魔力を流した黒剣を投げました。でも伯爵が気づかないはずがない、きっと僕の方を見抜いてくると思いました。だから自分を囮にして予め大きな盾にした黒剣を伯爵にぶつけることにしたんです。」


 僕の答えに伯爵は関心したように言う。


 「なるほど……あの状況でよく考えたものだ。君になら安心してアステルを任せられる。」


 伯爵がフッと小さく笑った気がした。

 それから談笑をして食事を終えて、屋敷の出口へ向かうと、カエラさんが話しかけてきた。


 「私たちは王都での仕事を終えたからそろそろ領地に帰るのよ。アステルの準備もあるでしょうから明日また来てくれるかしら?」


 「分かりました!それじゃあご馳走様でした。」


 こうして僕は伯爵との模擬戦に勝ち、アステルと一緒に冒険者として旅ができるようになった。

 ギルドに立ち寄って手頃な依頼を受けようかと歩いている時、模擬戦を静観していたフレイに話しかけた。


 「模擬戦、フレイもあっちで見てたみたいだけどどうだった?」


 「まぁ及第点ってとこだな、最初にもたついてなきゃもっとよかったがな。」


 「手厳しいなぁ。」


 「オレの契約者なんだ、いずれはあれくらいの魔術師を軽くあしらえるようになってもらわないと困るわ。」


 「簡単に言ってくれるな~。」


 フレイの厳しいお言葉を賜りながら、僕はギルドへと向かう。

 掲示板には荷物運びの依頼があったので、ギルドの近くにある老夫婦に荷物を運び、銅貨20枚を稼いでその日を終える。

 明日はいよいよアステルと一緒にダンジョンに挑戦できると考えるとなんだかワクワクしてきた。

次回はアレクたちが初のダンジョン攻略に挑戦します!

それではまた次回でお会いしましょう!!


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私のやる気が猛烈に上がります。

感想や質問なども書いてくれると嬉しいです。

アドバイスや誤字は優しく教えてください。

次回でまたお会いしましょう!!


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