第3話
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次の日から僕は世界初の『無職冒険者』に成るために特訓を始めることにした。
特訓といっても、いつもより親父の仕事の手伝いを多くこなしたり、村の周りを走ったりと子どもで出来る範疇でしている。
親父には、幼い時から筋肉を付けすぎると背が伸びないと言われたので、無理をしない程度に毎日特訓に勤しんでいた。
「今日も頑張ってるな、アレク!ほれ、うちで今さっき採れた新鮮なトマトだ、食え!」
「ありがとう、ガントのおっちゃん!」
「どうってことねぇよ、アルガンの奴から冒険者になろうとしていると聞いたときは驚いたが、面白れぇじゃねか!頑張れよぉ!!」
「おう!!皆のことを養える位にスゲェー冒険者になってやるせ!」
親父の友人のガントのおっちゃんがくれたトマトはとても美味しかった。
おっちゃんがいつも挨拶をしてくれたおかげか、僕が村の周りを走っていると、みんなが僕に挨拶をしてくれるようになった。
最初は白い目で見られていたこともあったけど、今ではみんな僕のことを応援してくれている。
みんなの期待を裏切らないように絶対に冒険者になろうと改めて心に誓った。
「ふぅ、今日はこれくらいにしておこう、無理は禁物だって親父が言ってたし。」
クールダウンをしてから家に戻る途中誰かの声がした。
その声がした場所は僕の家の前だった。
嫌な予感がしたため急いで家に向かう。
そこにいたのはアリエと三人の男子だった。
「俺の妹に何してくれてんだ。」
アリエを囲んでいる悪ガキたちは、僕の方を向くと笑いだした。
よく顔を見ればこの村の自警団の団長を務めているブレットさんの息子であるクルトと、その取り巻きだった。
「お?正義の味方の登場だぞ、みんな。」
「職無しのな!」
クルトたちは、口を揃えてそう言いケラケラ笑っている。
言っていることは事実なので、僕は何も言い返さなかった。しかしアリエは涙目になりながらも必死に抗弁していた。
「お兄ちゃんは強くて優しくて、あんた達なんかよりずっとすごいんだから!!」
アリエの頬を見ると僅かに赤くなっていた。きっと泣きながら僕のことを擁護してくれていたのだろう。
妹にそこまで言われたらここで引き下がれない、だって僕はアリエにとってカッコいい兄だから。
「危ないから少し下がっているんだぞ。」
「分かった、無理しないでね。」
アリエが離れたので心置きなくこいつらを懲らしめることができる。
「お前ら、こんなことして恥ずかしくないのか?」
「ケッ、偉そうにしやがって、職無しの癖に。調子に乗ってんじゃねぇ!」
アリエをいじめていた理由がしょうもなかったので、僕は呆れていた。
だけど、そんなしょうもない理由でアリエ泣かせたコイツらを許す気には到底なれなかった。
「かかってこいお前ら、バカにしてる職無しがどれだけ強いか教えてやるよ。」
「お前頭大丈夫か?こっちは三人で俺は『戦士』の天職なんだぞ?お前が勝てるわけなッ!!」
僕はクルトの顔に思い切りパンチをした。
思いの外人を殴るのは痛かった。
「て、てめぇ...ぶっとばしてやる!!」
二人に押さえつけられて滅茶苦茶に殴られる。
天職があるかないかではやはり大きな差があると身に染みて分かった。
いったいどれくらい殴られたのだろう、夕陽が沈んで辺りが少しずつ暗くなってきていた。
気付いたらアリエは居なくなっていたので、上手く逃げられたのだろうと安心した。
すると、後ろから声がした。
僕が一番知っていて一番聞きなれた声だった、そうリーネの声だ。
「こら、喧嘩はやめなさい!!」
どうしてリーネがここに来たかは分からなかった。
もしかしたら、アリエが呼んできたのかもしれない。
しかし、そんなことよりもリーネの前で無様に横たわっている自分に腹が立った。
全身に痛みが走るのを我慢して立ち上がり、リーネに声をかけた。
「どうしてアリエがここにいるんだ?」
「そんなことよりも何でアレクがこんなにボロボロになっているの?」
リーネがドスを効かせた声でクルトの方を見た。
正直こうなったリーネはヤバい、最悪の場合半殺しだ。
それを知っているからか、クルトやその取り巻き達は冷や汗をかきながら言葉を選びながら答えた。
「い、いや~、アレクが最近冒険者に成るって馬鹿げたこと言って調子に乗ってたからさ~、僕たちが現実を教えてあげてたんだよ。」
そうクルトが言うと次の瞬間、リーネはクルトとその取り巻きを一瞬のうちに倒してしまった。
「あんた達、自分が天職を貰ったからってその力を無暗に使ったら駄目でしょう!!
特にアレクは天職を貰ってないんだから!」
リーネは大きな声でクルト達を叱った。
リーネの良く通る声は辺りを木霊していた。
彼女には悪気はないのだろうが、僕は自分が「弱者」とリーネに認識されていることに腹が立った。
勿論リーネにではない、力がない自分に腹が立ったのだ。
僕は改めて自分にもっと力があればと強く思った。
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