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名も無き英雄の冒険譚  作者: オレオル
クエスト開始
38/41

第35話

最近FGOにハマってしまい更新が遅くなってしまいました。皆さんもゲームのやりすぎには気をつけて下さい。


 小ネタ

・アステルは今まで恋愛をまともにしてこなかったのでアレクとの距離感がたまにバグっている。


・フレイはアレクとアステルの関係を焦ったいなと思いながら見守っており、面倒見がとてもいい。


 僕たちはコーナーさんの案内で店内へと入ることになった。

 内装はボロボロな外装と違って、年季が入っていながらも手入れが行き届いており、予想以上に居心地の良い店内だった。

 品揃えも豊富で初心者向けの鞣し革を使ったチェストプレートや上級冒険者が使うようなドラゴンメイルまで様々な防具が売っていた。

 僕がその防具たちを見ていると、視線に気づいたコーナーさんが僕に話しかけてきた。


 「お前さん、アレクと言ったか、防具を探しているのか?」


 コーナーさんは額から生えている立派な髭を触りながら、僕が防具を探しているかを聞いてきた。

 そして、僕が現在来ている装備をじっと見る。


 「ふ~む……随分と使い込まれた防具じゃな。」


 コーナーさんは僕の着ている装備をみてそう漏らした。

 僕が師匠から貰った装備は、師匠が昔使っていた装備を僕用に丈を合わせてくれたものだと言っていた。師匠がどれくらい前まで冒険者として活動していたかは分からないが、よく見てみると確かに随分と使い込まれている。

 僕はもう違和感もないが、傍から見れば駆け出しの冒険者が古い防具を着ているというのは少し疑問に思うかもしれない。


 「お前さんが着ている防具、随分と古いものだな、しかもよく手入れが行き届いている。」


 コーナーさんの言葉に僕は少し嬉しくなった。胸当てや籠手、腰当やブーツまで僕の為に調整してくれた師匠が褒められたような気がしたのだ。


 「これは僕の師匠がくれたものなんだ。でも僕の実力が足らないせいで痛んできたから防具を新調しいようと思って。」


 僕の返答に対してコーナーさんは一考した後に言葉を続ける。


 「ん~それも良いだろうが今の防具も大切なのだろ?それだったらお前さんの防具を基にした新しい防具のオーダーメイドをしてやろうか。」


 「オーダーメイドってそれなりの値段がするんじゃないの?」


 コーナーさんにオーダーメイドをしないかと言う提案にアステルが質問し、僕は少し思案する。

 確かに師匠の防具をもっと使えるならそれに越したことはないが、オーダーメイドだとどれくらいの値段がかかるのだろうか。

 もうアステルを救出したときの謝礼金もあまり残っていない、どうしたものか。


 「あまり金は無いんだが……。」


 「材料を持ってきてくれれば安くしてやるぞ、工賃代で大体銀貨30枚ってとこか。」


 「そんなに安くしてくれるのか、ありがたい。」


 銀貨30枚であれば討伐依頼をいくつかこなせば稼げる金額だ。


 「それで素材って何を持ってくればいいんだ?」


 金額は問題なくなったが、どのような素材が必要なのか全くわからないので始まらない。

 僕たちの手に負えるようなものであれば良いのだが。


 「そうだな、ワイルドボアの毛皮と魔鉄鋼を持ってきてくれるか?」


 師匠から学んだことが正しければコーナーさんから要求された魔鉄鋼は主にダンジョンで生成されるものだ。

 ワイルドボアは前回探索した森を更に深く進む必要がある一方、魔鉄鋼はダンジョンでそれなりの深度に潜らないと生成されない為、今回は大変な依頼になりそうだ。


 「ワイルドボアってどんな魔物なの?」


 ふと横からアステルが質問してくる。彼女のような貴族にとっては魔物は全く聞き覚えが無いのだろう。

 興味深々な彼女に僕はなるべくわかりやすく説明をすることにした。


 「ワイルドボアは主に森の深くに生息していて硬い外皮と鋭いツノ、そしてとても獰猛な魔物なんだ。」


 「なんだか物騒ね。」


 アステルは僕の話を聞いて少し萎縮したみたいだ。純粋な反応に少しクスッと笑ってしまう。

 そしてコーナーさんの方に向き直りオーダーメイドを頼むことにした。 


 「分かった、オーダーメイドをしてくれ、3日以内に取って来るから待っててくれ。」


 こうして僕たちは新しい防具を新調するために、コーナーさんの店を後にしてワイルドボアの討伐と初めてのダンジョン攻略へと向かうことにした。

 このような形でダンジョンに挑むことになるとは思わなかったが、初めての攻略に僕のワクワクは止まらなかった。

 一先ず僕たちは冒険者ギルドへ向かい、ワイルドボアの討伐依頼とダンジョンに挑む手続きをすることにした。

 僕とフレイ、そしてアステルで並んで歩いていると、不意にアステルが立ち止まり、緊張した面持ちをして小さな声で尋ねてきた。

 

 「その……ダンジョンなんだけどさ……私も一緒に行っちゃダメかな?」


 アステルの唐突な発言に僕は驚いてしまった。

 前回の薬草採取で同行した際に伯爵がとても怒っていたのを思い出し、また着いて行ったことがバレてしまえば僕の首が胴体とお別れしてしまうかも知れない。

 物騒な未来が頭に一瞬よぎったが、ふと我に返りアステルを見てみると顔は俯いており、手は小刻みに震えていた。

 アステルの気持ちが真剣な事は、今の態度を見ればよく分かるが、どうしてそこまで冒険者として危険な依頼を一緒に受けようとしているのかまでは理解することが出来なかった。


 「僕は全然構わないけど伯爵にまた怒られちゃうよ?」


 僕の言葉にアステルは強く返答する。


 「説得は私が自分でやるわ!だから私も一緒に貴方と冒険させて!!」

 

 アステルの目は今まで見た中で1番と言っていいほど輝いていた。

 それは決意の表れなのかも知れない。


 「アステルが凄く真剣なのは分かったよ、でもどうしてそこまで冒険者に拘るんだ?」


 僕は1番の疑問をアステルにぶつける。そして返ってきた答えはとても彼女らしい内容だった。


 「私ね、小さい頃はとても退屈だったの。何不自由ない生活だったけど、毎日つまらない貴族としての振る舞いや教養を学ぶ日々はとても空っぽだった。お父様は忙しくて全然構ってくれないし学校は派閥や貴族特有の交友関係にも飽き飽きしていたわ。そんな窮屈な生活を送っていると、街に視察に行った時に馬車から見える子供達が冒険者ごっこをやっているのを見ていつも羨ましいと思っていたの。」


 アステルから溢れた言葉は今までの生活が窮屈で冒険者の様に自由に行きたいと言う貴族の令嬢が持つには余りにも障害が高いものだった。


 「小さい頃お母様に読んでもらった冒険譚に凄く心踊らされたわ。そしてアレクに盗賊から救ってもらった時、私は場違いだったかも知れないけどとても世界が鮮やかに映ったの。ようやく私の心が晴れた様な気がした。だってあんなシチュエーション、まるで冒険譚に登場するお姫様みたいじゃない?それから貴方と一緒に冒険にも行って私の夢が少し叶ったわ。」


 アステルは柔らかく笑いかけながら自分の心の内を打ち明けてくれた。

 その様子を僕とフレイは静かに見ていることしか出来なかった。


 「私は貴方ともっともっと一緒に冒険したい!どれだけ危険でも命の保障がなくとも構わない!だって私の退屈で窮屈で面白味の無い人生がこんなにもワクワクドキドキでいっぱいになったんだもの!だからアレクが迷惑じゃなかったら私を一緒に冒険に連れてって!」


 「………。」


 アステルの熱い思いが僕にぶつかってきた。

 きっと今まで貴族として僕が想像もつかないくらいの日々を過ごしてきたのだろう。

 貴族は平民と違い領民を束ねる長なのだ、その責任というのも僕には全く分からない。

 僕の一存でアステルの貴族としての幸せを台無しにしてしまうのかも知れない。

 でも、それでも、僕はアステルと一緒に冒険をする光景を想像してしまう。

 

 「わかったよ、まったくアステルはわがままだなぁ。」

 

 「貴方が言ったんでしょ、少しはわがままになってもいいって。」


 そうだ、ジルバでアステルと初めて出会った時、僕は自分を押し殺していた彼女にわがままになってもいいのだと言っていた。

 今でも覚えているとは思わなくて驚いてしまった。

 

 「それじゃあ一緒にアステルのご両親から許可を取りに行こか!」


 こうして僕たちの行き先は冒険者ギルドから急遽アルヴィリス伯爵家の別荘へと変更になった。

 伯爵家へと向かっているとフレイから疑問が投げかけられた。

 

 「あの親父さんを説得できるのか?どう考えても断固反対する光景しか浮かばないんだが。」


 フレイの意見はごもっともだ、僕もただの話し合いではまともに取り合ってもくれないだろう。


 「まぁ少しは考えがあるさ。」


 何か手段があると言う僕に、アステルは少し意外そうな顔をした。


 「そうなの?私はお父様と喧嘩別れしてもいいくらいの気持ちだったんだけれど。」


 そんなことになったら伯爵は悲しさで再起不能になりそうだな。

 まぁ僕の考えている方法も確実とは言えないが、成功すれば多少は有利に事が運ぶだろう。

 そうこうしている内に、アルヴィリス伯爵家の別荘へとたどり着いた僕たちは少し緊張した面持ちで門をくぐり、伯爵の元へ向かうのだった。

 

 

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次回でまたお会いしましょう!!


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