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名も無き英雄の冒険譚  作者: オレオル
クエスト開始
36/41

第33話

間隔がかなり空いてしまい申し訳ありません!!

もう少しペースを上げれるように頑張ります!!

次回から設定の小ネタを少しずつ上げていく予定ですのでお楽しみに!

 ギルドの休憩室へ運ばれたアレクは気絶したように眠っていた。この部屋にはアレクの呼吸以外に音は無く、静寂な空間が広がっていた。

 そんな中、フレイはアレクを見つめながらつい先ほどまで行われていた戦いについて1人で振り返っていた。




 「まさかあのフェンネルとか言う奴があそこまで強いとはなぁ。小僧に勝ち目はないと思ってはいたがあそこまでとは…………恐らく奴は全力の3割ほどしか出していないはずだ……落ち込んでないといいがな。」


 あの戦いぶりを見るにフェンネルの実力はSランクに片足を突っ込んでいても何んの不思議もない。そしてそれはほかのパーティーメンバーも同様だ。

 小僧のユニークスキルとオレが貸し与えた魔力を全力で使えば一時的とはえBランクの冒険者すら倒せる可能性があったはずだ。だから上手くいけばいいとこまで行くかもしれないと思っていた。しかしそれは大きな誤算だった。奴の強さの底は未だ見えていない、あそこまでの手練れを見るのは数百年ぶりだった。それにあんな無茶を通せばこうなることは予想できたはずだ。しかし、オレは小僧を説得することは選択肢に無かった。


 「オレも焼きが回ったもんだぜ、こんなガキ1人にここまでするなんてな。」


 オレは小僧とフォルトゥナの元を離れてからの数日間に思いを馳せる。ここ数日はこれまでの人生で久しぶりに充実したものだった。

 悪魔として忌避されるオレを、大切な人間から記憶を奪ったオレを未だに仲間として接してくる小僧に好感を持っているからだろう。ここまで楽しいと思えたのも()()()以来だ。

 最初はただの暇つぶし程度にしか思ってなかった。しかし、アレクと過ごしているうちに少しづつ居心地の良さを感じていた。ここまで肩入れするつもりもなかったが、今はアレクに手を貸すのも満更ではなくなっていた。

 

 「それにしても呑気に寝てやがるなコイツ。」


 いびきをかいているアレクをじっと見つめる。アレクは気づいた様子も無く未だにぐっすりと寝ていた。

 そしてふと戦いが終わった後の事を思い出す。


 「そういや確かフェンネルの奴オレの存在に気づいていたよな。」


 アレクとフェンネルの戦いの後、フェンネルはオレに話しかけてきていた。普通の人間にはオレの意思がない限り見えないはずだ。恐らく勘のようなもので()()がいると察知したのだろう。まったく不気味なヤツだ。


 『アレク君のことよろしく頼むよ』


 「ケッ、そんなこと言われなくても分かってるっての。」


 アレクがどんな道を歩んでいくのかを近くで見るためにも、死なないようにしっかりと注視していないといけない。


 「小僧のような才能のさの字もないヤツが英雄と呼ばれるようになるにはいったいどれほどの苦難を乗り越えなきゃいけないのか、これから楽しみだな。」


 オレは改めてアレクの旅について行くことを決めることにした。






 「……………っんん。」


 どれくらい寝ていたのだろうか。僕は未だすこし重い瞼を開き、辺りを見回す。そしてブレットさんに運ばれてギルドの休憩室で休ませてもっらったことを思い出した。

 まだ少し重い体をベットから起こし、テーブルにある籠に目を向ける。黎明の扉(ヘオス・デール)の皆から送られた籠いっぱいの果物が置いてあり、その中には小さめの紙切れが入っていた。


 『ケガが早く治りますよう 黎明の扉(ヘオス・デール)一同より』


 丁寧で綺麗な字が紙に書かれていた。文の丁寧さから恐らくエリナさんが書いたのだろう。

 紙からどことなく温かさのようなものを感じる。誰かが気にかけてくれているという事実に少し嬉しくなった。

 しっかり寝ることが出来たおかげか体の痛みや疲労感もだいぶ引いていた。まだ少しだるさは感じるが普通に動くのに問題はなさそうだ。

 伸びをして固くなった体をほぐして窓に目を向ける。外は日が暮れ始め、窓に橙色の光が差し込んでいる。そしてフレイが窓の前に浮いていた。

 火の玉であるフレイの表情を読み取ることはできない、もしかしたら心配してくれたのかもしれない。

 僕が目を覚めたことに気づいたフレイはこちらにやってきて僕に気さくに話しかける。


 「やっと目が覚めたか、このまま一生起きないと思ったぜ。」


 「悪い、心配かけて………。」


 僕の言葉にフレイは鼻で笑い返す。


 「はっ、オレが小僧の心配?寝言は寝て言えよな。」


 「ははっ、そうか……ありがとう。」


 「いやぁ、それにしてもフェンネルさん強かったなぁ~。」


 先の戦いで冒険者としての格の違いを見せつけられて、少し落ち込んでいた。

 完膚なきまで叩きのめされた事実は僕の心の中でモヤモヤと雲が覆うような感覚を残していたのだ。

 師匠から修行を10年間と言う長い期間つけてもらいヴァンテムと戦った時よりも強くなったという自負があったが、それも砕け散ってしまった。

 

 「あれだけ修行したのに全く敵わなかった。フレイの魔力や身体強化、そしてユニークスキル……今の僕が出せる全力で挑んだのに足元にも及ばなかったんだ。フェンネルさんは褒めてくれたけど、実際はすごく手加減をして貰ってた。戦っている最中はそんなこと考えている暇は無かったけど思い返せば返すほどどれだけ手を抜いてもらっていたかがわかるんだ……。」


 ブレットさんの前では勝ちたいと言ったものの、実際の勝敗は僕の中でそこまで重要なものではなかった。

 これまでの修行で強くなったという確信が欲しかっただけなのだ。何も救えなかったあの頃とは違い、格上にも一矢報いるほどの力が自分にはあるという確信が。

 しかし現実はそう甘くは無かった、特例Bランク冒険者と言う高い壁が僕の前に立ちはだかったのだ。

 このままで本当に大切なものを守れるのだろうか。僕は自分の両手を見る、その手の平はひどく小さくすこし水を注いだだけでこぼれてしまいそうに見えた。

 僕の努力は間違っていたのだろうか……。


 「それがどうしたんだよ。」

 

 俯いている僕に、フレイが面白くなさそうな声色で言う。


 「確かに今の小僧はクソ雑魚かもしれねぇけどよ、それのどこに落ち込む必要があるんだ。」


 「ク……クソ雑魚って……。」


 慰めているつもりなのだろうが、フレイの容赦のない言葉の刃が僕の胸にグサッと突き刺さる。


 「いいか、一番情けないのは強くなることを諦めることだ。どれだけ自分の弱さを嘆こうがそれで小僧の強さが変わるわけじゃない、特に才能が皆無のお前は常に努力し続けないと強くは成れない。いいか、比較対象を間違えるなよ、お前が比べなきゃいけないのはあのフェンネルって奴じゃねぇ、昨日の自分だ。昨日の自分より強い自分になれ、そうすればどんな些細な成長であったとしてもその努力は無駄になることは無い。」


 フレイの言葉は今までで一番真剣なものだった。そしてその言葉はどこか重みがあるというか、まるで実体験から出た言葉に聞こえた。

 確かにフレイの言う通りだ、他人と比較したって自分が強くなるわけじゃない、一歩一歩前進して強くなることが大切なんだと改めて気づかされた。

 しかしフレイがこんな含蓄のある言葉を言うなんて……フレイは長く生きていると言っていたから過去に何かあったのだろうか。そんな推測をしながらこれから何をしようか考える。

 今日はもう日が傾いているので依頼を受けることは厳しいだろう。


 「今日の残りの時間はまだあまり言ったことのない場所へ足を運んでみようと思うんだけどどうかな?」


 「まぁもう依頼を受けてる暇も無いしな、王都の()()を知るいい機会か……。」


 フレイの言葉に少し違和感を感じる。王都の裏とはスラム街の事ではないのだろうか……。

 まぁそれもこの広大な都を探索すればいずれ分かることだろう。

 今日の行動方針が決まったので、部屋の端に綺麗に置いてあった装備を装着して受付へと向かう。


 「ケイシーさん、ベットを貸してくれてありがとう。」


 僕の顔を見てケイシーさんはパッと笑顔を見せてこちらへと小走りで来る。


 「お体はもう大丈夫ですか?」


 女性に心配される経験がない僕にケイシーさんのような綺麗な女性が気配りをしてくれるのは少しドキドキする。

 ケイシーさんの顔が僕の近くまで迫り、少し驚く。ケイシーさんから柑橘系のいい香りがこちらに来た勢いで伝わり、女性としての魅力が直に伝わる。

 道理で冒険者からの人気が高いわけだ、愛嬌の良さと女性らしさを持ち合わせている美女なんて女性に縁遠い冒険者の男性にとっては女神のような存在だろう。

 ケイシーさんに手を握られでドギマギしている後ろで亡者と化した冒険者たちのうめき声が聞こえてくる。きっと幻聴だろう……幻聴であってくれ。


 「おかげですっかり良くなったよ、もう体も普通に動く分には問題ないから。それで僕の冒険者カードの更新はもう終わってる?」


 「はい!こちらが更新した冒険者カードになります!」


 ケイシーさんから手渡されたカードを見てみるとFランクからEランクへと文字が変わっていた。冒険者としてはまだまだ低ランクだが、確実に一歩前進しているということを実感させてくれる。


 「これからどうされる予定ですか?」


 「今日はもう依頼は受けずに王都を散策してみるつもりなんだ。まだまだ行ってないところが沢山あるだろうから。」


 僕の予定を聞いてケイシーさんが少し考えた後、オススメの場所を教えてくれた。


 「なるほど……それなら職人街に行ってみてはどうですか?専門性の高いお店が多いのでいい装備品が見つかると思いますよ!」


 確かに今の装備は師匠から貰ったものだが、元々使い込まれていたこともあり大分痛んでいた。

 装備替えに丁度いいかもしれない。


 「なるほど、じゃあ折角だからその職人街に行ってみるよ!」


 「気を付けてくださいね~!」


 僕はケイシーさんに手を振りながら冒険者ギルドを後にした。

 そして目的の職人街に向かって足を運ぶことにしたのだった。

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私のやる気が猛烈に上がります。

感想や質問なども書いてくれると嬉しいです。

アドバイスや誤字は優しく教えてください。

次回でまたお会いしましょう!!


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