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名も無き英雄の冒険譚  作者: オレオル
クエスト開始
28/41

第25話

やっとファンタジーっぽい戦いが出来ました。

 荷物を整理して、僕たちは森の入り口までやって来た。ギルドマスターの話だと、ここには危険な魔物はあまりいないらしく初心者にはピッタリとの事だ。一応スライムやワイルドボアなどの魔物は居るらしいがそれくらいであれば僕一人でも対処できるだろう。僕たちは森を進みながら今回の目的の薬草の確認をする。


 「今回の薬草はどんな見た目なの?」


 「俺たちが採取するのはクラル草って言う薬草で、葉の形が少しギザギザしてるのが特徴の葉だね。」


 アステルに採取する薬草の詳細を伝えて採る際のコツも伝える。


 「茎の付け根から摘み取るといいよ。辺りにある薬草を全部採ると薬草が生えなくなるから少し残して置こう。」


 「分かったわ!!それじゃあどっちがたくさん採れるか競争しましょ!!」


 そういってアステルは張り切って薬草の採取を始めた。こういう葉を摘む行為でさえ彼女には新鮮なのかもしれない。アステルはとても楽しそうにクラル草を探して袋に詰めていた。


 「それじゃあ俺も始めるか。」

 

 師匠から薬草の知識について教えてもらっているので、クラル草がどのあたりに生えているか知っているので、僕は効率的に摘むことが出来た。クラル草は木の根元に生えていることが多いので、辺りにある太い木の根元を調べると効率よく採取することが出来るのだ。

 しばらく採取をして、準備していた袋がいっぱいになったところでアステルに声をかけた。


 「俺の袋はもう一杯になったけどアステルはどうだ?」


 昼過ぎになり、そろそろ休憩を取ろうとアステルに声をかける。


 「えぇ!もう袋いっぱいになったの?!」


 アステルが驚いた表情で僕の方へやって来る。


 「まぁ俺は師匠にサバイバルの技術をある程度教わってるからね、クラル草がよく生える場所とか知ってるから。」


 「そんなのズルイわ!私なんてまだ半分しか集まってないのに…。」


 アステルが頬を膨らませながら怒る。その姿はどこかリスみたいで可愛らしかった。


 「はははっ。」


 僕が笑うとすかさずアステルが詰め寄ってくる。


 「何が可笑しいのよ!」


 「怒ったアステルの顔がリスみたいで可愛くて思わず……。」

 

 僕が正直に思いの丈を述べるとアステルはみるみる顔が赤くなっていった。


 「かっ……かわ……。」


 照れている様子のアステルは両手で顔を覆って悶絶していた。少し意地悪し過ぎたかなと反省しつつ休憩のために開けた場所まで移動して、事前に購入した干し肉を頬張り休憩をする。干し肉は冒険者御用達の食料で長期間の保存が利くうえ、仄かな塩気があり料理がしにくい環境で塩分を取ることが出来る優れたものなのだ。アステルの分も干し肉を渡すと、少し恐る恐る口に運んだ。彼女のような貴族なら干し肉のような保存食を食べる機会は殆どないだろうから躊躇うのも当然だろう。しかし、少しづつ噛んでいくと躊躇っていた表情が明るくなり、美味しそうに食べていた。


 「意外と美味しいのね!この塩味が疲れた体に丁度いいわ!」


 僕たちは水分補給も済ませた後、森を更に進みクラル草の採取を再開した。森の奥では魔物が出る可能性も高くなっていくのでアステルになるべく離れないように声をかける。


 「アステル、魔物が出るかもしれないからあまり離れて行動しないようにしよう。」


 「分かったわ!」


 アステルは僕の目の届く範囲で黙々とクラル草の採取をしていた。普段こんな作業をすることは無いだろうから新鮮で面白いのかもしれない。僕は魔物がいつ出現してもいいように警戒しながらもう一袋分のクラル草を採取した。するとアステルが小さい悲鳴のようなものを上げた。


 「きゃっ!!」


 「どうした、何かあったのか?」


 僕がアステルの元へ向かうと、そこにはスライムの小さな群れがいた。4体のスライムが自由気ままに跳ねている姿を見てアステルは目を輝かせていた。


 「わぁすごい、スライムなんて初めて見たわ!とっても可愛いのね!!」


 辺りをぽよんぽよんと跳ねるスライムをすっかり気に入ったようだ。確かに柔らかそうな丸いフォルムはどこか癒しを感じさせる。スライムも魔物の一種だが、一般的なスライムは無害なので冒険者が積極的に狩るような魔物ではない。むしろ雑食という特性からテイムする人が多いくらいだ。


 「スライムの核は一応売れるよ。」


 ぼくがスライムの素材がお金になることを教えるとアステルは面を食らったような顔をする。

 

 「えぇ、そんなの可哀そうじゃない、こんなに可愛いのに……。」


 「ははは、冗談だよ。スライムは人に危害を加えることは無いから狩る必要はないよ。素材もそこまで高く売れるわけでもないしね。」


 初めての魔物とふれあい癒されたところで、アステルの袋が丁度いっぱいになったようだ。


 「アステルの袋もいっぱいになったみたいだしそろそろ王都に戻ろうか、ここから歩きだと結構かかるから。」


 僕たちが帰る支度をして森を出ようとした時、どこか奇妙な感覚が襲う。鳥や小動物の鳴き声やスライムが跳ねる音がしていたのにキッパリ止んでいた。僕は嫌な予感がした為、アステルに自分から離れないように声掛けする。


 「アステル、なんだか森の様子が変だ、俺から離れないようにして。」


 「わ…分かったわ。」


 僕の真剣さが伝わったようでアステルも緊張した面持ちで僕の背後に隠れる。辺りの茂みからカサカサと音がする。僕は警戒して黒剣を抜いていつでも迎撃できるように構える。しばらく緊張状態が続き、茂みから音が鳴らなくなった途端何かか僕たちに向かって襲い掛かってきた。こん棒を振りかぶって襲い掛かってきたのはここら一帯には生息していないはずのゴブリンだった。


 「な…なんでこんなところにゴブリンが!?」


 僕に攻撃を仕掛けてきたのは一体だけだがそれだけとは到底思えない。仮に数十体以上の群れであればアステルを守りながら戦い切るのは困難だろう。森では普段使っている黒剣では使い勝手が悪いので魔力を流して刃渡りを少し短くして、片手で扱えるように変形させる。

 体に魔力を流し、身体能力と五感を強化して 辺りを見回す。大まかだが十匹以上は確実にいる気配を感じる。


 「アステル!合図したら全力で森の外まで走るんだ!」


 ゴブリンは一体ごとの強さは大したことは無い、精々五歳児ほどの知能と身体能力しかない。しかし厄介なのは数とずる賢さだ。厄介な罠や数の暴力は力の差があったとしても侮ることはできない。さらには魔法を行使する個体、魔物を乗りこなす個体など特徴を持ったゴブリンもいるという。

 僕はアステルの安全を最優先にして、逃げるように指示をする。ゴブリンに切りかかると同時にアステルに合図をする。


 「今だ!!」


 「アレクも無理しないでね!!」


 「あぁすぐ追いつくさ。」


 そう言い残して僕はゴブリンの群れに体を向ける。一体を切り伏せたことで起こっているのかギャーギャーと叫ぶ声が周りから聞こえてくる。狙いを僕に定めて取り囲んでいるようだ。アステルに標的が移ってしまうと彼女が危ないので、時間を稼ぐために正面に向かって走り、ゴブリンを誘導する。


 「お前たちの相手は俺だ!こっちに来い!!」


 正面にいた二体のゴブリンを切り伏せて大きな声で叫ぶ。後ろから足音が物凄い勢いで迫って来るのが分かる。ただのゴブリンだけではなく、ワイルドボアに跨ったゴブリンライダーも現れて想定以上の規模に驚愕した。待ち伏せしていたゴブリンを切り伏せ、迫って来るゴブリンライダーはワイルドボアを切り付けて転落させて何とか追いつかれないように逃げる。走っていると途中途中に木を切りつけて道しるべにしながらこれからどうするか考える。するとおもむろにフレイが僕に話しかけてくる。

 

 「おい小僧、何ずっと逃げてんだよ。正面から戦え。」


 フレイの指示に僕は走りながら文句を吐く。


 「あの数相手に正面から戦うなんて自殺行為だろ!!」


 するとフレイが自身ありげな声色で言う。


 「オレの指示に従えばあの数相手でも勝てるぜ。」


 フレイの言葉に僕は懐疑の念を抱く。仮にもコイツは悪魔だ、そんな奴を信じていいのだろうか。一瞬の内に考えを巡らせる。たとえ悪魔だとしてもフレイのおかげで命拾いしたのは事実だ、少しは信じてみてもいいのかもしれない。


 「本当だな!」


 「あぁ、悪魔は嘘はつかねぇぜ。」


 それから僕はフレイの考えた作戦を走りながら聞き実行に移す。


 「それじゃあ作戦開始だ!!」


 

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