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名も無き英雄の冒険譚  作者: オレオル
クエスト開始
27/41

第24話

遅れてすみませんでした。

 ギルドの入り口を開けると、活気が溢れる空間が広がっていた。人族だけでなく、様々な種族の亜人がギルドの依頼を受けていた。僕たちは周りの空気に気圧されながらギルドの受付に向かう。

 受付では猫の亜人である女性が僕たちの対応をしてくれた。


 「おや、見ない顔ですね!新入りですか?」

 

 「Fランクでも受けられる依頼はあるか?」


 僕は舐められないようにあえて少し粗暴な口調で話す。師匠に冒険者になるなら舐められないようにしろと昔言われていたのだ。


 「あぁ、もう冒険者登録はお済なんですね!!それではお付きの人も一緒に冒険者カードを確認させてもらってもよろしいですか?」


 明るく接してくる受付嬢に冒険者カードを渡す。


 「Fランク冒険者のアレク様ですね、職業は……無職ですか……。」


 「無茶な依頼を受けるつもりはないから安心してくれ。彼女は冒険者の登録をしてないんだが……。」


 受付嬢がアステルを見つめるので彼女が冒険者登録をしていないことに気づく。アステルは貴族である為そう安易と冒険者登録なんてできないだろう、一体どうしたものかと悩ませているとアステルが受付嬢に質問をする。


 「冒険者登録をしていないと依頼は受けられないですよね?」


 すると受付嬢が僕の冒険者カードを確認した後、アステルの質問に答える。


 「アレク様は冒険者登録を行っていますのでその付き人ということなら一応同行は可能です!ただ報酬の分配などは不可能ですのでこちらとしては登録して頂いた方がスムーズでありがたいですね!」


 どうやらアステルは僕と一緒に依頼を受けたいみたいだ、伯爵にバレたら大変なことになりそうだがそこは今は考えないようにした。


 「それじゃあ私も冒険者登録をするわ!!」


 「えぇ!!大丈夫なのか!?」


 今日の彼女の服装は僕の王都案内のために平民と殆ど変わらないので貴族とはバレないだろうが平気なのだろうか…。まぁ僕に決める権利はないので彼女が登録したいというならその気持ちを尊重しようと思う。


 「あの親バカ伯爵にバレたら首でも落とされるんじゃないか?」

 

 ニヤニヤしながらフレイが話しかけてくる。コイツは僕の困っている顔を見て愉快だと言いたげに笑っていた。


 「今回だけだろうし大丈夫だろ……もしもバレても何とか説得するさ。」

 

 僕がフレイと話しているとアステルが登録するために小さなナイフを人差し指の先端に当てて装置の上に乗っているカードに自身の血を一滴垂らす。すると僕の時と同様にカードに身体情報とスキルが記載されていった。彼女の天職は聖職者(プリースト)と言う職業で回復魔法が得意な職業だ。


 「こちらに可能な限りの個人情報の記入をお願いします!」


 受付嬢がアステルに個人情報記入用の紙をアステルに渡す。アステルは少し考えた後、姓は名乗らずにただのアステルとして登録を行ったようだった。


 「以上で登録は完了になります!もし宜しければ魔法適正の検査も行いますか?」


 「魔法適正の検査?」


 アステルの代わりに僕が声を上げる。魔法適正の検査なんて僕が最初に登録した時には言われて無かったのでどんなものなのか気になってしまった。


 「アレク様も行いますか?適正検査といってもこの魔水晶に手をかざしてもらい、適正のある属性の色が現れるという簡易的な物なのですが。」


 魔水晶は高価な物らしく、田舎では滅多に出回らないため王都の様な大きなギルドでないと置いていないという。

 受付嬢に促されてアステルが魔水晶の上に手をかざす。すると明るく光り、更に青い色のような光りに変化した。


 「この光りは聖属性と水属性の魔法に適正があるみたいですね、2つの適正を持つなんて珍しい方ですね!特に聖属性魔法の適正がある人はすごく珍しいんです!!」


 「そうなんですか?」


 そりゃ彼女は貴族だから当然と言えば当然の才能なのかもしれない、彼女の母親であるカエラさんは聖属性魔法の使い手だったと食事の時に聞いた気がする。 気を取り直して今度は僕が魔水晶の上に手のひらをかざす。すると不思議なことに水晶から魔力反応はするものの色が全く無かったのだ。


 「何か光ってるが透明だな…。」


 「私もそれなりにここのお仕事をされて貰ってますが無色透明なんて初めて見ました。」


 受付嬢がどうしたものかと困惑しているとギルドの奥から貫禄の男性がやって来た。全身にとてつもない筋肉がついており、顔には勲章のような傷が幾つも刻まれていた。佇まいだけでとてつもなく強いことが肌で分かる。


 「ギルドマスター!!どうしてこちらまで?」


 どうやらこの男性はここのギルドマスターらしい。見たところ元冒険者って感じだ。


 「何やら困ってそうだったんでな、どうしたんだ?」

 

 ギルドマスターに事の経緯を話すと彼は顎に手を当てて珍しそうに頷く。


 「なるほどなぁ、確かに無色透明は珍しい。だがこれがどういったものかは知ってるぞ。」


 「そうなのか?是非教えてくれ!」

 

 魔水晶が示す反応の正体を知っていると言うギルドマスターにお願いする。


 「お前さんがこの魔水晶を?」


 「あぁ、俺はアレクだ。」


 「そうかアレク、お前の魔法適正は……残念ながら無い!」


 「えぇ!!」


 師匠にも魔法の才能は無いと言われていたけどまさか適正自体が無いなんて、それなら属性魔法が使えないのも納得だ。しかしやはり魔法が使えないと言うのは少し悲しいところがある。僕が落ち込んでいるとギルドマスターが続けて言う。


 「だがな、メリットもあるんだ。透明な魔力は他の属性の魔力との親和性がとても高いと言われていてな、味方から受ける補助魔法の効果が高く、身体強化の魔法効率が高いとされているんだ。」


 なるほど……だから師匠は僕に身体強化の魔力運用法を教えてくれたのか。師匠はそこまで考えて僕に戦いの仕方を教えてくれたのかもしれない。


 「そんな効果があるんだな。」


 僕はギルドマスターの言葉に関心を示す。


 「そういやお前、アレクって言ったよな。アルヴィリス伯爵から話を聞いててな、お前が郊外の盗賊を仕留めたってな。無職ってのにやるじゃねぇか。」


 「俺は時間稼ぎしただけで実際に倒したわけじゃないぞ。」


 「まぁ伯爵もお前さんの顔を立てたいんだろう、職無しはこの国に限らず冷遇されるからな。それと身元を確認したんだがあの盗賊は元冒険者でな、Cランクに上がった後から素行に問題があって最近資格の剥奪をしたんだ。まさかこんな狡いことをやてるなんてな、迷惑をかけた。」


 「気にしないでくれ。」


 「今すぐのランクアップは厳しいがいずれ何かしらの形で恩返しさせてくれ。」


 「わかった。それじゃあ何かいい依頼を見繕ってくれないか?」


 依頼が貼ってあるボードから探そうとしていたが、ギルドマスターから斡旋してもらった方が危ない綱を渡ることはないだろう。


 「そうだな……この薬草採取の依頼なんてどうだ?これはギルドから出してるんだが回復ポーションの素材が不足していてな、状態が避ければ報酬に上乗せして少し割高で買い取ってやる。」


 「わかった、その依頼を受けよう。」


 それから僕は依頼の受理を済ませてから、ギルドを出て薬草があるという近郊の森に向かう。


 「アステルもついてきてよかったのか?伯爵に怒られたりしないか少し不安だぞ。」


 「これも社会経験の一環よ、お父様は少し過保護なのよ。」


 市場で水や保存食の干し肉をいくつか購入した後、近くにあった武器防具屋でアステルの装備を軽く整えた。

 

 「この装備貰っていいの?」


 「そこまで高いものでもないし、装備してないと危険だからね。」


 「なんだか私、アレクに貰ってばっかりだわ。今度何かお礼させて頂戴!」


 「ははは、楽しみにしてるよ。」


 装備品をある程度整えた後、僕たちは馬車に乗って目的の森まで向かうことにした。しばらく馬車に揺れてまったりとした時間が流れる。乗客は僕たちしかいないのでフレイも堂々と辺りを飛んでいる。

 

 「薬草採取なんてクソつまらない依頼受けるんじゃねぇよ。もっと魔物の討伐とか面白いヤツ受けろよな。」


 フレイが薬草採取の依頼について文句を言う。確かに討伐依頼は人気かもしれないが、それに比例して危険度も増していく。アステルがいる手前そこまで危険な依頼を受けることは憚られたのだ。


 「そんなこと言うなよ、薬草採取だって立派な仕事なんだから。」


 「そうよ、回復ポーションは需要がすごく高いんだから、とっても大切な仕事だわ。」


 「ちぇっお堅い奴らだぜ。」


 僕たちが楽しく話していると、目的地に到着したらしく、御者さんから声がかかる。


 「到着しましたよ~。」


 「ああ、ここまで送ってくれて感謝する。これはお代だ。」


 御者さんに代金を渡して、僕たちは森に目を向ける。


 「それじゃあ初依頼開始だ!!」


 僕の冒険者としての初めての依頼が始まった。

アレクの一人称が変わったのは冒険者として舐められないようにするためです。

これからはこの喋り方が基本になります。根は変わってないので心情描写はそのままです。


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私のやる気が猛烈に上がります。

感想や質問なども書いてくれると嬉しいです。

アドバイスや誤字は優しく教えてください。

次回でまたお会いしましょう!!


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