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名も無き英雄の冒険譚  作者: オレオル
王都へ
25/41

第22話

20話を改稿して、伯爵の名前を追加しておきました。

サルビア・アルヴィリス伯爵です

今まですっかり忘れていました……。

 アステルの屋敷に帰ると、メイドさんに僕の客室に案内してもらうことになった。屋敷は三階建てでかなりの広さがあるため、利便性を考えて一階の客室にしてくれたみたいだ。メイドさんの後をついて行くとフレイがこっそりと僕に耳打ちしてくる。僕はメイドさんに不信感を抱かれないように注意を払いながらフレイの話に耳を傾ける。


 「おい小僧、貴族の客室の意味についてちゃんと知ってるのか?」


 「知ってるって何が?」


 フレイのいまいち要領を得ない質問に疑問で返す。

 

 「いいか、例えばこの屋敷なら三階まであるだろう、基本的に客室の階層ってのは来客の格によってきめられているんだ。基本的に一階の客室を使うのはその家と同格かそれ以上の格を有する貴族に充てられるんだ。小僧さっきメイドに説明された時に便利だな~とか呑気な事言ってただろ、この調子だといつか不敬罪で訴えられるぞ。」


 「そ……そんな決まりがあるのか!?師匠にはそういう貴族のマナーみたいなやつは教わってなかったからな。大丈夫かな……。」


 「まぁ今回は小僧は命の恩人だからそういう対応をしたんだろう。よそじゃ気を付けるんだな。」

 

 僕はフレイの忠告に頷く。貴族とこれからどれだけ接するかはわからないがこういう知識は持っておいた方が後々為になるだろう。安易に一階が当たり前とか思ってたら大変なことになるかもしれないからな。僕は貴族の暗黙の了解的なものに辟易しながら用意された客室へ向かう。


 「な……なんだこれ……。」


 客室に到着し、扉を開けるとそこには見たこともないような豪華な部屋が広がっていた。精巧に作られた机と椅子は家具でなくインテリアと言われても違和感を抱かないほどの高級感を醸し出している。ほかにも貴重な鏡やバスタブ、キングサイズのベットまで至れり尽くせり状態だった。こんなところでこれからしばらく生活すると考えるとどうにかなってしまいそうだ。裕福でない農村出身の僕にはこの部屋は少し精神衛生上よろしくない。僕はメイドさんに部屋を変えてもらうように頼む。


 「もう少し落ち着いた雰囲気の部屋ってないですか?この部屋はちょっと………。」


 僕の反応にメイドさんは少し微笑みながら答える。


 「そう言うと思いましたので別の部屋もご用意していますよ。旦那様がこれくらいの誠意があるということを伝えられればそれでいいとおっしゃっていましたので。」


 アルヴィリス伯爵には僕のような平民の考えはお見通しだったみたいだ。僕は二階に案内され、さっきの客室よりもずいぶんと落ち着いた雰囲気の部屋に案内された。


 「ここなら気兼ねなく過ごせそうだ!アルヴィリス伯爵に感謝を伝えておいてくれる?」


 「かしこまりました。それではお食事の時間になりましたらまたお呼びしますのでそれまでごゆっくりしてください。」


 礼をして去っていくメイドさんを見届けた僕は、1人用にしては少し大きめのふかふかなベットに横たわる。


 「あ~何かどっと疲れがおしよせてくる~。」


 盗賊団の一件が終わりようやくしっかりした休みが取れると思うと今まで見て見ぬフリをしてきた疲れが一気に体にのしかかる。


 「まぁ今の小僧にはあのデカ物は堪えただろうな。」


 「……そういえば僕の剣が弓に変形したのって何でなんだ?今になるまで聞きそびれちゃってたけど。」


 「あの剣はお前の師匠……あのババアが使ってた武器でな、本人曰くどんな形にも変形してくれるらしい。そして持ち主の思い描いた武器に変形させることが出来るんだと。」


 やっと合点がいった。あの戦いの時のような森の中では剣は振り回しにくく、弓のような遠距離から攻撃できる方が相手に邪魔されずに攻めやすい。実際僕は弓があったらと考えていた時に魔力を流したら弓に変形した。


 「そんなすごい武器を師匠は僕にくれたのか……今までいろんな武器の扱いを教えてもらってたのはこれを有効活用するためってことなのか……。師匠に教わった技術をもっと使いこなさないとな……。」


 鞘から取り出した黒い刃を見つめながらつぶやく。盗賊との戦いで師匠から教わった魔力の運用法も緊張と焦りから全く使えなかった。今度こそ油断せずに全力を出せるようにしないと……。


 「ちなみにその武器は持ち主に帰属するからな。今の持ち主は小僧に変更されているようだ。」


 フレイの言葉からますますこの武器が貴重なものだとわかる。持ち主に帰属する武器なんて魔剣や聖剣レベルの武器しかない。いったい師匠は何者なんだろうか……師匠の謎は深まっていくばかりだ。そうこう話していると、扉がノックされる音が聞こえる。時計を見てみるがまだ晩御飯には少し早い時間だ、いったい誰が尋ねてきたのだろうか。


 「どうぞ~」


 僕が返事をすると部屋に入ってきたのはアステル……ではなく彼女の父であるアルヴィリス伯爵だった。

 

 「お疲れのところすまないね、君と二人きりで話してみたかったんだ。」


 「え……えぇもちろんです……。」


 僕と話したいと言うアルヴィリス伯爵に何か裏があるんじゃないかと少し訝しげに伯爵を見る。


 「そう気を張らなくてもいい、今回はアステルの父親として礼を言いに来たんだ。」


 アルヴィリス伯爵は最初に会った時よりも柔らかい雰囲気で話す。どうやら本当にお礼を言うのが目的だったみたいだ。


 「娘を救ってくれて改めて感謝する……。」


 「こちらこそ部屋を用意してくれて助かりました。宿については何にも考えていなかったので……。」


 「そうかそうか、君が居たいというならいくらでもゆっくりするがいい。ただし!!アステルにもし何かしたら……分かってるな。」


 「はっはい!……もちろん!!」


 急に脅してくる伯爵に冷や汗をかきながら返事をする。この人は相当な親バカで間違いなさそうだ。僕がそんな風に考えているとフレイがからかってくる。


 「小僧だって大概だろ……。」


 「うるさいなぁ。」


 確かにアステルに少し(めっちゃ)引かれたかもしれないけど僕はただアリエを愛しているだけだ。


 「とまぁ冗談はこれくらいにしておこう。……アレク君、これからもアステルの良き友でいてくれ。」


 「はい!もちろん!!」


 アルヴィリス伯爵の娘を思う気持ちがとても強く伝わってくる。本当に大切に思っているのだろう。僕が勢いよく返事をすると伯爵は少し微笑んだ。


 「ところでアレク君、これからどうするのかは決めているのかい?」


 伯爵に尋ねられた僕は少し考えた後にこれからの予定について話す。


 「しばらくは王都のギルドで依頼を受けていこうと思っています。」


 「そうか、無理をしないように気を付けてくれたまえ。何か困ったことがあったら何でも話してくれ。」


 二人で今後の予定について考えていると、ノックをしてメイドさんが晩御飯の準備が出来たことを伝える。


 「もうそんな時間か、アステルを待たせないようにしなければ……。」


 そういって僕と伯爵は食堂まで一緒に行く。食堂は広々としていて解放感がある空間だった。テーブルにはアステルと彼女の母親らしき人が座っている。


 「あなたがアレク君ね!!アステルから話は聞いてるわよ~。」


 「ちょっとお母さま!変なこと言わないで!!アレク、この人は私の母カエラよ。」

 

 「よろしくね!アレク君!」


 カエラさんはとても活発な人のようだ。アステルより少し淡いピンクの髪をなびかせ、控えめながらも丁寧に作られたドレスを着こなす綺麗な女性だ。とても明るい笑顔をしていて、周りの雰囲気も自然と明るくなるような不思議な人だと感じた。アステルの笑顔の明るさは母譲りなのだとわかる。


 「はい、よろしくお願いしますカエラさん!」


 「あら、お義母さんって呼んでいいのよ。」


 「お……お義母さんなんてそんな……!」


 カエラさんが発した冗談に伯爵が立ち上がりメガネを光らせて伯爵がこちらをじっと見つめてくる。

 

 「君にお義父さんと呼ばれる筋合いはないっ!!」


 「何も言ってませんよ!!」

 

 僕と伯爵のやり取りにアステルたちは楽しそうに笑う。楽しい食事の時間はあっという間に終わり、ぼぅは用意された客室に戻った。


 「明日はやっとアリエに会えるのか……。」


 「言っておくが恐らく小僧の妹も記憶を無くしているはずだ。それでも会いに行くのか?」


 「あぁ…様子を見れればそれでいいんだ。」


 「……そうかよ。」


 フレイとの会話を終え、僕はベットに横たわる。アリエは幸せに過ごしているだろうか、そんな考えをしながら僕は目を閉じて眠りについた。

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私のやる気が猛烈に上がります。

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次回でまたお会いしましょう!!


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