第21話
今回は少しセリフが多くなってしまい読みづらいかもしれません。
読者の皆様が読みやすいように努力を続けてまいりますのでどうかお付き合い下さい。
アステルと巡回してる騎士団のところへ向かうと、そこに居たのは僕の幼馴染であるリーネだった。昔の彼女とは少し違い、どこか少し冷たい印象を覚える。僕は彼女との約束をやっと果たすことが出来ると胸が高鳴る。
「アレクは彼女の事を知っているの?」
アステルが僕に尋ねてくる。確かにアステルはリーネの事を知らないし僕たちが幼馴染だとはわからないだろう。
「彼女はリーネ、僕の小さい頃からの幼馴染なんだ。」
「そうだったの、王都で話題の騎士と昔馴染みだなんてなんだかすごいわね。」
確かに、今の彼女は王都で名を馳せている騎士だ。対して今の僕は新米のEランク冒険者だ。とてもつり合いが取れているとは言えないだろう。だがそれでも一声だけでもリーネの声を聴きたかった。
僕は人混みをかき分けてリーネの元へ向かう。アステルは昔馴染みとの再会を邪魔しないように少し離れたところから様子を見るみたいだ。
「ん~今はやめた方がいいと思うぜ。」
急にフレイが止めるように促してくる。しかし、リーネとの再会をフレイに止められる謂れは無いと感じた僕はムッとした表情で反論する。
「お前にそんなこと言われる筋合いはないね。」
フレイの忠告を無視して僕はリーネの元へ向かう。きっと驚いてくれるに違いない。僕ははやる気持ちを抑えられずに彼女に声をかけた。
「久しぶり!!リーネ!やっと再会することが出来たよ……ヴァンテムが村を襲ったっきり君と連絡を取れていなかったからすごく心配だったんd…………。」
「………すまない、君は誰だ?私の知り合いに君のような人は居ないはずだが……。」
「……え。」
「私の村の知り合いは一人を除いて全員死亡してる。そもそも村で君のような人を見た覚えがない。すまないが職務中なんだ、そろそろどいてくれるかい。」
「そ……そんはずは無い……僕だアレクだ、アリエの兄のアレクだ!!」
「君がどうしてアリエの事を知っているのかはわからないが、彼女には兄はいない。これ以上邪魔をするなら公務執行妨害で詰所まで来てもらうことになるぞ。」
「…………。」
どうしてだ、どうしてリーネは僕の事を覚えていないんだ。僕のことを故人と勘違いしてるのならまだ納得はいく。だが明らかにおかしい、アリエに兄がいないなんてそんな勘違いをするはずがない。何かがおかしい、彼女の記憶を改ざんされているような違和感が消えない。
「すみません、今すぐ退くので…………。」
様子を見かねたアステルが俯いて動かない僕の腕をつかんでその場から離れる。少し離れた場所にあった小さい子供が遊ぶような公園にあるベンチに座り、アステルが僕に水が入った水筒を渡してくれる。
「いったいどうしたの、あんなに慌てて。何かただ事じゃなさそうだったけど。今度は私があなたの助けになりたいの……良ければ話してくれる?」
僕の様子を見て何かを感じたアステルが尋ねてくる。僕は少し考えたあと、先ほどの出来事について話し始めた。
「さっきあの女性騎士が僕の幼馴染って話はしただろ。でも彼女は僕のことを覚えていなかったんだ。それに僕には妹が1人いるんだけど、その子には兄は居ないなんて何かがおかしい。あんなに仲良くしていたのに、まるで記憶から存在そのものが消えてしまったような、そんな態度を取るんだ……。」
アステルは無言で僕の話を聞いている。
「だからやめた方がいいって言ったのによ。」
僕たちの間からフレイが出てくる。普段は僕にしか見えていないようだったが隣にいるアステルが驚いている様子を見ると、フレイ自身が見せる相手を選んでいるようだ。
「何なのこの喋る青い火の玉は!」
「こいつはフレイ、僕と契約した悪魔……らしい。」
「らしいってなんだよらしいって!!せっかくその件について教えようとしたのによ。」
もったいぶった物言いに腹が立ちながらも、僕はフレイに理由を聞く。
「何か知ってるのか!!教えてくれ!!」
僕とアステルはフレイをじっと見つめる。フレイは少しの沈黙のあと、リーネに僕の記憶がない理由を話した。
「小僧はオレと契約したときに話は覚えているか?」
「ああ……ぼんやりとは。」
「悪魔と契約すると絶大な力を得られるのはお前らも聞いたことくらいはあるだろ。だがどうしてそんな力が手に入るのか考えたことはあるか?」
「代償を払うことで力を得ることが出来ると昔屋敷にある本で読んだことがあります。」
アステルがフレイの質問に答える。僕はただ無言でフレイの話の続きを聞くことに集中していた。
「そうだ代償を払う必要がある。そして代償は欲する力の大きさや願いの困難さに比例して大きくなっていく。例えば一文無しから大富豪になるには寿命の半分くらいの代償が必要になる。」
「代償の仕組みはなんとなくわかったけど、それとリーネの記憶となんの関係があるんだ?」
「代償は何も実態を持っている必要はないし、自分自身で払う必要うもない、俺たち悪魔が代償と認めれば基本なんだっていいんだ。前には自分の家族の命を代償にした奴がいたっけな。そしてお前が願ったのはあの魔族から村の住人を守れる力だ、ただのガキが魔族に対抗できるようになるにはどれだけの力がいると思う?」
「……まさか!」
もし自分の考えていることが正しいのだとしたら取り返しのつかないことになっているのではないか。僕は心底焦った表情でフレイを見る。するとフレイはニヤリと笑みを浮かべながら僕が払った代償の説明を始めた。
「小僧が想像している通りだ、オレはお前が大切に思っている存在すべてからお前の記憶を奪ったんだ。まぁ結果的にほとんどの村人が死んじまったからな、実際はあの赤髪の女とお前の妹だけになっちまったが……。」
代償の正体を知った僕は頭が真っ白になった。リーネだけでなくアリエも僕の記憶が無いなんて……。
僕の様子を見たアステルがフレイに怒りをあらわにする。
「そんな代償酷すぎるわ、記憶を消すなんて……大切な人から存在を忘れられるなんてつらいに決まってる!!」
フレイは冷静にアステルに言葉を返す。
「それだけ酷い代償でも払わなかったらあの悪魔とまともにやり合える力なんざ与えられねぇだろ。こっちだってやろうと思えば全ての寿命でもよかったんだぜ、これでも最大限の譲歩はしてやってるんだ。それに小僧はどんな代償でも払うと言ったはずだぜ。」
「………そうだな……お前が力を貸してくれなかったら僕もアリエも死んでいた。代償は確かに受け入れがたい内容だったけどそれであの二人が無事ならそれでいい……。」
精一杯の強がりを言ったが、それでも我慢が出来ず涙が零れ落ちる。目の前が滲んで体が震え、僕は人目も憚らずに号泣した。アステルはそんな僕が泣き止むまでずっとそばにいて僕を優しく両腕で包んでくれた。その感覚は昔母さんに抱きしめられていたような、そんな優しい抱擁だった。
しばらくして僕は泣き止み、アステルから離れる。ずっと抱きしめていてくれた彼女を気恥ずかしさから直視することが出来なかった。
「あ……ありがとう…………ずっと一緒に居てくれて。」
「気にしないで頂戴、私はあなたにされたことをしただけなんだから。」
僕はここまでの事はしていない気がするが、訂正するのも違うなと思い素直にお礼を言った。
「すっかり日も暮れてきたわね、そろそろ屋敷に戻りましょうか」
「そうだな、そうしよう。……そういえばアステルは王都の魔法学校に通っていたんだよな。」
「えぇそうだけど……それがどうかしたの?」
「アリエって言う僕の妹がそこに通っているらしいんだ、何か知らないか?」
「アリエねぇ……そういえば貴族の養子に入った平民がすごい魔法の才能を持ってるって一時期噂になってたような。」
「本当か!?それじゃあ明日その魔法学校に僕を案内してくれないか?」
「それは構わないけど……きっとその妹さんもアレクの記憶が………。」
「いや良いんだ。ただアリエが元気でやっているか見たいだけだからさ。」
「まぁアレクがいいなら明日案内するわ。」
「ありがとうアステル!!」
僕は10年ぶりにアリエと会えることを楽しみにしながらアステルの屋敷へと戻る。帰る途中にアステルにアリエがどれだけ可愛いかを熱弁しているとシスコンと引かれてしまうのだった。
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