第20話
皆さんのおかげで総ユニークユーザー数が1000人を突破いたしました!!
これからも『無色の英雄』をよろしくお願いいたします!!
次回は20話突破、総ユニークユーザー数1000人突破記念として設定集的なものを上げる予定です
メイドさんの地図を頼りに僕はルーメンス王国の王都であるイリオスティアを練り歩いていた。道を行き交う人々の数が凄まじく、歩くというよりはもはや流れに身を任せている感覚だ。
人混みに流されながら少しずつ王都の中心部に向かっていく。中心部に行くまでの大通りでは様々なものが出店で売られていて野菜、肉、果物、武器、ポーション、生活用品と数えるときりがないほど沢山の種類の品が揃っていた。
「す……すごいなぁ……こんなに人が行き交うところだとは……。正直なめていたかもしれない。」
僕は大通りから少し外れて一息つく。ここまでの人混みを経験したことがなかったので少し酔ってしまった。最初にジルバにお遣いに行ったときも人の多さに驚いたがイリオスティアはその比ではなかった。
師匠から聞いた話だと、ここルーメンス王国は太古の聖竜の祝福を受けた一人の英雄が建国したのだという。その名残が今も残っているのか広場にある噴水も竜を模った素晴らしい造形美を誇っていた。
街並みを眺めるのもそこそこに中心街を通り抜けると地図で示されていたアステルが王都で過ごしているという屋敷にたどり着くことが出来た。屋敷の入り口まで歩くとその大きさに圧倒される。
「な……なんて大きさだ……これが貴族のお屋敷ってやつなのか……。」
僕があっけにとられていると横からフレイが話しかけてくる。
「あの嬢ちゃんの言ってた感じだとこの屋敷は王都にある別荘みたいなものなんだろうな、きっと領地の屋敷はもっとすげぇぞ。」
「このお屋敷だって十分すぎるくらい広いのにこれよりもっと規模がでかいのか!?」
僕がフレイの話を聞いて驚愕しているとフレイが呆れた様子で僕に答える。
「これだから田舎育ちは……いいか、貴族にとって屋敷の大きさって言うのはその家の力の大きさを直接表してると言っても過言じゃなのさ。だから貴族たちの屋敷ってのは無駄にでかくて派手なのさ。」
「へぇ……屋敷の大きさにそんな意味があったなんて。お前意外と物知りなんだな、少し見直した。」
「そうだろうそうだろう……ってお前今遠まわしにオレ様のことバカにしただろ!!」
「ハハハソンナコトナイヨ。」
「棒読みすんじゃねぇ……!!」
僕たちがくだらない口喧嘩をしていると入口の扉が開いてアステルとメイドさん、そして護衛のギルバートさんが僕たちを迎えてくれた。
「来てくれてうれしいわアレク!!さぁ遠慮なく上がって頂戴!!」
アステルの案内で屋敷の中を進んでいく。廊下には今の僕じゃ一生かけても買えないような絵画や花瓶などが飾られていて改めて貴族というもののすごさを実感する。少し歩くとアステルに客室で少し待つようにお願いされた。
「ここで少し待っててくれるかしら?お父様がアレクにぜひ会いたいって言っていたの!!」
どうやらアステルは僕と彼女の父親を会わせたいみたいだ。しかし何か粗相があったりして機嫌を損ねたらとんでもないことになってしまうのではないかと危惧する。貴族の中には血統や家柄を遵守する人も多いから厄介で面倒くさい奴らが多いと師匠も言っていた。
「アルヴィリス伯爵が!?僕みたいな平民なんかが本当に会ってもいいのかい?それに僕の態度で伯爵の機嫌を損ねるかもしれないよ?」
僕は彼女の父親であるアルヴィリス伯爵との面会に難色を示す。僕は平民なので貴族の機嫌を損ねたら一発アウト、首チョンパ確定だ。アステルは貴族にしては珍しい感性をしているから僕みたいな人とでも気兼ねなく話してくれているのだろう。
「お父様に限ってそんなことないわよ、アレクは私の命の恩人でもあるのだからむしろお礼を直接言いたいって言ってたのよ。」
「じゃあ……そこまで言うなら……。」
彼女がここまで言うんだ、そこ好意を無碍にするのは気が引ける。僕は一抹の不安を抱えながらもアステルにアルヴィリス伯爵と会う旨を伝える。
「それじゃあさっそくお父様を呼んでくるわね!!」
そういってアステルが客室から出ていこうとした時に客室の扉の向こうから貫禄があり部屋によく響く声が聞こえる。
「その必要はない、何せ私が直接来たのだからな!」
そういって扉を開けて入ってきたのは少し鈍い金色の髪をスッキリとした長さで整えて四角い眼鏡をかけている中年くらいの男性が部屋に入ってきた。着ている服装や佇い、一挙手一投足から気品の溢れる貴族ということがすぐにわかる。
まだ心の準備が出来ていない僕は突然の面会に緊張しすぎて頭が真っ白になった。
「君がアレク君だね、娘を助けてくれてありがとう。私はアルヴィリス伯爵家の当主、サルビア・アルヴィリスだ、よろしく。」
アルヴィリス伯爵が僕に頭を下げる。彼の貴族らしくない態度に僕は驚きを隠せなかった。
「いやいやいや、頭を上げてください!僕はただ時間稼ぎをしたに過ぎませんので……。」
平民に頭を下げたことが貴族の間で広まったらどんな影響を及ぼすか分からなかったので、僕は急いで頭を上げるように言った。
「はははっ何もそれだけで頭を下げたのではない。聞くところによると娘が小さいころお世話になったようじゃないか、おかげで今では娘と妻ともに良好な関係を築けているんだ、感謝している。」
彼の言葉は貴族のそれではなく一人の父親としての感謝の言葉だった。
「気にしないでください、当然のことをしたまでです。」
僕はアルヴィリス伯爵に笑顔で返す。
「……そうか、君は謙虚なんだな……その気持ちをこれからも大切にしてくれ。さて、話は変わるが君は王都が初めてなのだろう?これからどうするのか決めているのか?」
アルヴィリス伯爵が僕のこれから予定について聞いてくる。確かにここまで来たはいいが宿も取っていないしこれからどうするかのちゃんと考えていなかった。
「お恥ずかしいことに宿はまだ取っていません。とりあえず王都にある冒険者ギルドで依頼をこなそうと思っています。」
「宿をまだ取っていないならここで過ごせばいいさ、君は娘の恩人だからな、歓迎するよ。」
伯爵が屋敷で過ごさないかと提案してくる。ちらっとアステルの様子を伺うととても嬉しそうな顔をしていた。行く当てもないし、あんなに嬉しそうな顔をされたら断れないだろう。
「それじゃあ暫くの間お世話になります。」
「それじゃあ君の客室を用意しよう、少し時間がかかるからアステルと王都を観光してみるといい。」
「それはいい考えだわ!!ぜひ一緒に行きましょう!!」
僕は伯爵に感謝の言葉を述べた後、アステルに引っ張られて王都の観光に向かう。
「やっぱり何度も見ても壮観だなぁ……。」
僕が街並みに圧倒されているとアステルが話しかけてくる。
「ここ王都イリオスティアはこの国一の都市なの。この国のありとあらゆるものがここに集まってくるのよ。」
確かに露店では様々なものが売られている。中には国産の物だけではなく外国から仕入れている品がたくさんある。この国一というのも間違いないだろう。
僕たちが歩いているとアクセサリーを取り扱っている露天商に話しかけられた。それなりに年齢を重ねている元気なおばさんだった。
「そこの坊ちゃん、このアクセサリーはどうだい?隣にいる彼女にぴったりだよ。」
「わ…私が……かっ彼女っ!?」
露天商の一言にアステルが頬を赤らめる。僕は露天商の冗談を軽くいなすが、アクセサリーには少し興味があった。商品を見ているとふとある商品に目が行った。
「このネックレスは?」
僕が気になったのは淡いピンク色の宝石に丁寧な銀の装飾が施されていたネックレスだった。アステルの髪の色に似ていたのと、露店で扱う商品にしてはやけに高価そうなものだったので気になった。
「お目が高いね、それはドワーフの国で採れた鉱石を加工して作られたネックレスなんだ。身に着けていると精神安定の高価があると言われているんだ。」
「なるほど……じゃあこれをくれ。」
「毎度!」
僕は今回のアステル救出で貰った報酬の一部を使いネックレスを買った。少し値は張ったがアステルのプレゼントと考えれば安いものだ。
「僕たちの再会を記念したプレゼントとして受け取ってくれるかい?」
僕はネックレスをアステルにプレゼントする。アステルはとても嬉しそうな表情をしてはにかみながら受け取った。
「とても嬉しいわ!!一生大切にする!!」
少し背伸びした買い物になってしまったが、こんなアステルの笑顔が見れたならむしろ格安だろう。
それから僕たちは王都の街並みをみて周った。最近王都で流行っているという果実を使ったスムージーと言うものを飲んだり、広場でやっている大道芸人のショーを見たり観光を楽しんだ。
そして僕とアステルが休憩がてらゆっくり歩いていると、向こうに人だまりが出来ていた。
「あそこに人がたくさんいるけど何かイベントでもあるのか?」
「多分騎士団の人たちが見回っているんだと思うわ。この国で騎士団はすごく信頼されて人気だから。それに最近ある女性騎士がすごく強くてちょっとした有名人になっているらしいわ。」
アステルの話を聞いて騎士団がどんなものなのか興味が出てきたので僕たちも騎士団のもとに向かうことにした。
「あれが王都の騎士団……皆もの凄く強いな……。」
「騎士団に所属している人のほとんどは上級職と言われているの。」
遠目から眺めているだけでも彼らが凄腕ということがひしひしと伝わってくる。奥から一際大きな歓声を浴びている女性がいた。きっと彼女がアステルの言っていた腕の立つ女性騎士なのだろう。
よく顔を見てみるとその顔は成長こそすれ僕がよく知っている人の顔だった。
「まっまさか……リーネなのか!?」
偶然にも僕は小さいころに別れた幼馴染であるリーネと十数年ぶりの再会を果たすのだった。
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