第19話
勢いでどうにか書いてますが大陸や国の地理などの設定はほぼ白紙なので近々設定を練ってお伝え出来ればと思っています。
盗賊たちを倒した僕たちは開けた場所に移動して、ケガ人の手当と休憩をはさむことにした。
護衛の騎士と冒険者の手当をして、僕たちはこれからの行動について話し合っていた。
「この度は助けていただき誠にありがとうございます。」
アステルが冒険者たちにお礼をして頭を下げる。冒険者たちは貴族が自分たちに頭を下げると思っていなかったのか、ものすごく慌てていた。
「頭を上げてくれ……貴族様にそんなことされたらこっちが困っちまう。」
ベテラン冒険者は頭を掻きながらアステルに頭を上げるように頼む。冒険者たちの顔をみてしぶしぶ納得してアステルは冒険者たちへ向き直る。
「このような事態に巻き込んでしまい申し訳ありません……重ねてお願いがあり、私共も王都まで御一緒させていただきませんか?」
「乗りかかった船だ俺たちは構わねぇぜ、あとは俺らの依頼人次第だな。」
冒険者たちは御者さんの方をみて、返事を待つ。
「もちろん構いませんよ、王都まで是非ご一緒させてください。」
御者さんが快諾したおかげで、アステルたちは顔をパッと明るくしてお礼の言葉を述べる。
「ありがとうございます!屋敷に戻ったら是非お礼をさせてください!」
僕は向こうで交わされている会話を聞きながら、今回の戦いについて振り返ってみる。師匠の元を離れての初めての戦闘で思うように動けなかったように思う。それでもアステルたちを守ることが出来たのは、紛れもなく僕の努力の成果だろう。今はアステルたちを助けられたことを喜ぶことにした。
「隣いいですかな?」
そういって僕の横に座ったのは、巨漢から僕を助けてくれたギルバートさんだった。彼は僕に頭を下げて今回の一件の感謝を述べた。
「今回はお嬢様を助けてくださり感謝申し上げます。」
「いえ……僕はギルバートさんに助けられた身なのでお礼なんて………。」
最後で油断したせいで僕は危うく命を落とすところだった。むしろ僕の方がお礼を言わなければならない立場なのに気を使わせてしまったみたいだ。
「あなたが時間を稼いでくれたおかげで私が助けに入れたのです、あそこまでの大立ち回りができるものは中々いません、あなたの行動は無謀ではありましたが立派なものです。」
「僕は弓矢でとどめを刺せたはずなのに出来なかった。それなりに成長したと思ってたけどいざ実戦となると誰かを殺すことを割り切れなかった……。」
あの時大男が体勢を崩した時、狙おうと思えば頭を狙えた。しかし人を殺す行為をしたことなかった僕は割り切ることが出来ずにあのような結果を招いてしまった。
「その気持ちは戦うものにとってとても大切なものです、忘れずにいてください。しかしもし相手を殺める以外に大切な人を守ることが出来ないのであれば、その時は覚悟を決めなければなりません。」
「…………。」
「お嬢様があなたと話したがっていましたよ、後で馬車の方にいらしてください。」
そういってギルバートさんはアステルたちの元へと戻っていった。ギルバートさんが僕に言ってくれた言葉はどれも正しい。きっと僕には覚悟が足りなかったのだろう。誰かを守ることがどういうことなのか真に理解していなかった。ぼくは己の未熟さを痛感した。
「初めての戦いはどうだったよ。」
フレイが出てきて今回の戦いについて聞いてくる。
「さっきの会話を聞いてただろ、僕には覚悟が足りなかった。」
「まぁ小僧は甘ちゃんだからな、今回はそれが裏目に出たな。」
「わかってるよ……。」
フレイの言葉へ言い返すことが出来なかった。僕は悔しさを噛みしめて馬車の方へと戻る。
休憩が終わり王都へ再出発をした僕たちは順調に進んでいた。しかし、僕には一つ大きな問題があった。僕が馬車の方へ戻ると、アステルが僕を一緒の馬車に乗せると言って利かなかったのだ。おかげで今僕はアステルから質問攻めされている。
「まさかアレクが助けてくれるなんて……本当に驚いたわ!!どうしてここまで来たの?」
ちらっとアステルから視線を下げると、彼女の手には昔僕が上げたハンカチが握られていた。10年も経っていて何度も修復した後が見え、こんなに大切にされてるなんて思わなかったので凄く嬉しかった。
「実は王都に行きたくてジルバから出てる王都行の馬車に乗ったんだ。そしたら道中で盗賊が出たって噂になってて、まさかその盗賊にアステルが襲われていたなんて驚いたよ。やっぱりアステルは貴族だったんだね。」
「そうよ、私はアステル・アルヴィリス、アルヴィリス伯爵の娘よ!」
まさかアステルが伯爵令嬢だったなんて思いもしなかった。伯爵は貴族の中でもそれなりに高い地位で地方に領地を持つ位だったはず。そんな彼女に砕けた口調で接していたことに僕は焦りを覚える。
「も……もしかして今まで無礼な口調だっ……でしたか?」
僕は敬語を使ってアステルに話しかける。一応言葉遣いは師匠から一通り教わっていたのが幸いだった。しかし僕が堅苦しい口調で話すとアステルは不機嫌そうな顔をした。
「今までのような砕けた口調でいいわよ、あなたは私たちを救ってくれたのですから。」
「アステルがいいなら遠慮なく……。」
アステルとの挨拶を済ませると、彼女の横にいるメイドさんが申し訳なさそうに口を開く。
「お嬢様、この方とはいったいどのような間柄なのでしょうか?」
メイドさんの発言にアステルは嬉しそうに答える。
「8年前、私がジルバで抜け出したことがあったでしょ、その時に彼と出会ったの。当時お父様との関係を悩んでいた私を救ってくれたの!」
アステルがメイドさんに話す内容は大筋はあっているが脚色されている部分が多く、かなり美化された内容になっていた。これではメイドさんが変な勘違いをしてしまうかもしれない、そう思った僕はやんわりと否定する。
「そんな大層なことはしてないよ。僕はただアステルが父親との接し方について悩んでいたから話を聞いていただけだよ。」
「お嬢様とはぐれた間にそんなことがあったのですね……アレク様、お嬢様の悩みを解決してくださりお礼を申し上げます。」
メイドさんが頭を深々と下げてお礼を言う。まさかそんな大事になっていたとは思わず、僕は慌てながらメイドさんに顔を上げるよう言う。
「顔を上げてくれ、そんなお礼を言われるような事じゃないからさ。」
僕がそうメイドさんに言うと、彼女は首を振りながら続けて話す。
「今まで我儘も言わずに利口に振る舞うお嬢様を旦那様は心配されていました。しかしあの日以降、お嬢様は旦那様とよく話すようになり、気軽に話せるようになったと大層嬉しそうにしておりました。」
僕はただアステルの悩みを聞いていただけだが、それがきっかけで家族中が良くなったのなら喜ばしい事だ。
「恥ずかしい事は言わなくていいわ!」
アステルはメイドさんに自分の話をされたのが恥ずかしいようで顔が赤くなっていた。
「ほら、そんなことより見て!あれが王都よ!!」
慌てて話を逸らすようにアステルが窓の外を指差す。その先に広がっていたのは立派な王城とその周りに建てられている大きな街並みだった。僕の故郷やジルバとは比較にならないほどの規模でありルーメンス王国が栄えていることを如実に表していた。
「なんだか感慨深いなぁ。」
僕は王都を遠目に直近の出来事を思い出す。
師匠の元を離れてジルバで冒険者登録をして、王都行きの馬車に乗って魔物や盗賊に襲われてここまで来たのだ。たった3日、4日の出来事の筈なのに長い旅と感じたのはそれだけ想定外な出来事の連続だからだろう。アステルと再開できたことも嬉しい誤算だった。
「私たちを助けてくれたお礼がしたいわ!是非お屋敷にいらして!!」
アステルに屋敷へ招待されたため、僕は元々乗っていた馬車の御者さんと護衛の冒険者たちに挨拶を済ませることにした。
「今回はありがとうございました。」
「こっちこそ助かったぜ。嬢ちゃんを馬車から逃すなんて事はよほど肝が据わってないと出来ねぇからな!お前はいずれビックになりそうな予感がするぜ!」
ベテランの冒険者たちに褒め言葉を貰い、僕は一礼して別れを告げた。後から聞いた話だが、彼らもアステルを救出してくれたお礼に金貨を幾らか貰ったらしい。貴族の資金力は底知れないものだと感心しながら僕はメイドさんから貰った地図を頼りにアステルが王都で過ごしている屋敷に向かうのだった。
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