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名も無き英雄の冒険譚  作者: オレオル
王都へ
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第18話

最近天気がコロコロ変わって体調崩しやすいですよね

私は絶賛風邪を引いております、皆様も体調には気をつけて

 一瞬しか見えなかったが、馬車の中にいたのは間違いなく10歳の頃に会ったアステルだった。馬車の中にはメイドがアステルを覆う形で身を守っている。


 「助太刀に来たぞ!!」


 「ありがたい、君たちの善意に感謝する!」

 

 護衛の騎士と思われる3人と冒険者2人が合流してなんとか貴族の馬車に盗賊を近づけないように牽制することが出来ていた。しかし、盗賊たちは引き下がらずに今か今かとチャンスを虎視眈々と狙っている。


 「この調子だと最悪馬車が襲われちまうぞ。」


 フレイが賊との戦いを見ながらそう言う。


 「確かに賊も全く引き下がろうとしてないな。このままじゃアステルが危ない……。」


 僕もフレイの意見に同意する。冒険者が加勢して状況がよくなったように思えるが、賊は撤退する素振りどころか余裕すら感じさせる。仮に盗賊がこれで全員でないとするならば、この膠着状態が長引いてしまうと賊の増援が来てしまうかもしれない。僕たちの馬車に残っている冒険者も加勢に行きたそうな表情を見せるが、僕と同じことを考えているのか盗賊の増援が来た時に僕たちの乗っている馬車に被害が及ばないようにするため迂闊に動けなかった。


 「僕が裏からこっそり回り込んであの馬車から逃がすのはどうだろう……。」


 護衛の騎士や冒険者のおかげで盗賊の包囲網が崩れ、裏からならこっそり抜け出せるのではないかと考える。一か八かの賭けだが、このまま傍観しているだけで事態が好転するとはとても思えなかった。


 「僕も加勢に行きます!」


 馬車に残った冒険者に加勢に行く旨を伝える。


 「君は駆け出しだろ?逸る気持ちもわかるがここにいるんだ、ヘタしたら死ぬぞ。」


 中年のベテラン冒険者は僕に釘をさす。王都に行く道中で聞いた話だと、彼は冒険者歴が20年を超えるベテランらしく、僕のような駆け出しを何人も見てきたという。中には大成したものもいるが、一方で命を落としたものも大勢いるという。きっと僕の身を案じて厳しいことを言っているのだろう。


 「あの馬車に僕の知り合いがいるんです!」


 「…………分かった、俺はここから動くことが出来ない、代わりに行ってくれるか?」


 「はいっ!!」


 「無茶はするなよ」


 僕は冒険者の先輩に許可を取り、アステルを救いに貴族の馬車に向かう。


 「別に許可とる必要なかったんじゃねぇか?勝手に行きゃよかったろ。」


 「そういうわけにもいかないだろ。あの人たちは馬車の護衛をする依頼を受けて行動してるけど、僕たちはただの乗客だ。下手に動いたら場を混乱させるだけだろ。」


 「そういうもんかね………人間は回りくどいなぁ。」


 フレイの質問に小声で答えながら僕たちは裏手に周り、盗賊たちに気づかれないように馬車の扉を開ける。


 「助けに来たぞ。」


 そこには怯えながらうずくまっているメイドとアステルがいた。僕をみて驚いているメイドとアステル。


 「静かに、盗賊にばれないようにこっそり出よう。」


 二人は口に手を当てて頷き、物音を立てないように馬車から降りる。外では護衛の騎士と冒険者が馬車から盗賊を遠ざけている。今のうちに遠回りして僕たちが乗っている馬車に避難すればあとは脱出するだけだ。そう考えながら身を屈めて森の中を歩く。


 「おい小僧!奥から誰か近づいてくるぞ!!」


 フレイの声に耳を傾け、音のする方向を凝視する。すると林の奥から二メートル近い巨体の盗賊が迫ってきた。このままだと二人の存在がバレてしまう……。

 

 「奥から盗賊の増援が来たみたいだ、二人は先にあそこにある僕たちが乗っていた馬車に向かうんだ。これだけ離れていれば盗賊たちには気づかれないはずだ。」


 二人は心配そうな目を僕に向けるが、今の緊迫した状況を感じ取り頷いた。おそらくあの巨漢は盗賊たちの増援だ、醸し出している雰囲気が普通じゃない。盗賊たちに余裕があるのもおそらくこの巨漢がいるからだろう。


 「今の僕で勝てるか?」


 「正面から馬鹿正直に戦えば十中八九負けるな、馬力が違い過ぎる。」


 「じゃあ時間稼ぎに徹するのが最善か……。」


 フレイと短い会話を交わし、巨体の男を迎え撃つ。


 「やけに遅いと思ったら冒険者が横やり入れて来たのか。おいガキ、死にたくなかったらその馬車の中に居る女を渡せ。」

 

 おそらくこの巨漢の大男はアステルたちが抜け出していることに気づいていない。アステルたちはもう少し馬車にたどり着くまで時間がかかりそうだ。この巨漢に二人の存在がバレないように気を引かなければ。


 「嫌だと言ったら?」


 「ぶち殺すだけだッ!!」


 大男は手に持っている戦斧を叩きつけるように振り下ろす。僕は剣で受けようとするが、勢いがすさまじく受け流せずに吹っ飛ぶ。


 「なんて馬鹿力だ……。」


 何とか受け身を取り体勢を立て直す。衝撃の強さに剣を持っていた腕がしびれている。これ以上まともに受ければ腕が持たないだろう。僕は辺りを見回して何とか自分に有利な地形を探す。しかし、森の中では剣が振りにくく、小回りが利かない。僕が考えごとをしてる間にも巨漢が迫ってくる。


 「よそ見してんじゃねぇぞクソガキッ!!」


 大きな戦斧を軽々振り回し、僕に襲い掛かる。辺りにある木々もお構いなしに、なぎ倒しながら攻撃をしてくる具ぅ

 

 「クソッ……!」


 どれだけ距離を取ろうとしても、木々をなぎ倒して追ってくるせいで作戦を考える時間がない。

 このままだとジリ貧だ……どうすればこの状況を覆せる。僕が焦っていると横からフレイが話しかけてくる。


 「苦戦してるみたいだな小僧、あんな三流相手になに手を焼いてるんだ。」


 「あれで三流!?Cランクくらいの強さはありそうだぞ?」


 「Cランクなんて俺にとっては雑魚同然だ。」


 「今はお前の冗談を聞いてる場合じゃないんだよ、茶化すだけなら黙っててくれ!」


 必死に大男の攻撃を躱して時間を稼いでいる僕をフレイが茶化してくる。この緊迫した状況で話しかけてくるなんてふざけているようにしか見えなかった。


 「じゃあ一つ助言をやる、その剣に魔力を流せ、あとは自ずとわかるはずだ。」


 フレイの助言を素直に信じることは出来ないが、今はほかに打開策が思いつかない以上信じてみるしかない。僕は剣に魔力を流しこむ、すると剣が光り急に変形し始めた。光が収まると僕の手には美しい曲線をしている弓と丈夫なつくりで出来ている矢があった。


 「こっ……これは……。」


 「なんだその武器は、急に光ってビビらせやがってよぉ。ちょこまかと逃げ回りやがって、もうこれ以上お前に時間をかけてられねぇんだ、次で確実に殺してやるよ。」


 大男は魔力のオーラを全身に纏い、格段に速いスピードで迫ってくる。 

 どうして剣が弓矢に変形したのかはわからないが、これでやるしかない。


 「死ねぇ!!」


 目にも留まらぬ速さで迫ってくる巨漢が振り下ろした戦斧を寸でのところで躱す。


 「ぐっ…!」


 少し反応が遅れ、腕に戦斧が掠れる。腕の痛みに耐えながらそのままバックステップをして、体勢を崩した大男の両足をめがけて矢を二本放つ。巨漢は全力で振り下ろした反動で躱そうにも体がうまく動かず、僕が放った矢が両足の太ももに突き刺さる。


 「ぐおぉ……クソガキがぁ!!」


 両足を射られた巨漢は跪き、これ以上の戦闘はできそうになかった。


 「アステルたちは!?」


 あの二人が無事に馬車までたどり着けたのか気になり振り返ると、二人は無事に馬車に着いていた。


 「よかった、二人とも無事に辿り着けたのか…。」


 安心しているのも束の間、フレイから大声が上がる。


 「後だ小僧!!」


 そう言われて振り返ると膝を付いていたはずの大男が僕に一矢報いようと戦斧を振り下ろす。


 「お前だけは殺してやる!!」


 振り下ろされた斧に反応できず、死を覚悟したその時、老年の騎士が間に入り真っ正面から戦斧を受け止めた。


 「お嬢様を襲う不届きものめ、あの世で後悔するがよい。」


 老年の騎士がそういうと、斧を弾き剣を一振りして巨漢の体から無数の切り傷が出来、巨漢は生き絶える。


 「速すぎて一振りしているようにしか見えなかった…なんて強さだ。」


 「今のお前じゃ逆立ちしても勝てねえな。」


 僕は老年の騎士の剣戟に戦慄し、その場を動かずにいた。


 「お怪我はありませんかな?」


 剣を鞘にしまい毅然とした態度で僕に話しかける。


 「は…はい、おかげさまで……。」


 「無事で何より、さぁ向こうも片付いてる頃でしょうし戻りましょう。」


 「な…名前を教えてもらってもいいか?」


 「私はギルバート、ただの老いぼれた騎士ですよ。」


 ギルバートと名乗る騎士について行くと残りの盗賊たちが全員倒されていた。助太刀に行った冒険者たちも全員無事だった。僕たちが乗っていた馬車に向かうと目元が赤くなっているアステルがいた。


 「アレク?あなたやっぱりアレクなのね!」


 「じゃあやっぱり君はアステルなのか!?」


 盗賊たちを倒して、僕たちは8年ぶりの再会を果たすのだった。




 

 



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