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名も無き英雄の冒険譚  作者: オレオル
王都へ
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第16話

やっとアレクが出発してくれました

 僕は今、王都に向かって歩みを進めている。師匠のもとを離れて一人で旅をするのは少々寂しい所がある。しかし、僕の旅には一つの問題があった。


 「おいおい、さっきから無視してんじゃねぇよ。」


 こいつだ、今まで出てこなかったフレイが急に話しかけだしたのだ。家を出て1時間ほど経つが、ずっと話しかけてきてとてもうるさくて耳障りだった。


 「今まで現れなかってのになんで急に出てきたんだ。」


 僕はイライラしながらフレイを睨みつけて言う。


 「フォルトゥナのババアがうるさくてな、お前があのババアの元から離れるまで待ってたんだ。」


 フレイはケラケラと笑いながら言う。


 「これからはお前の旅について行くからな、よろしく頼むぜ。」


 唐突な同行宣言に僕は呆れ、面倒なのがついてきたと思う一方、静かな一人旅が賑わうのは少し嬉とも思った。調子に乗りそうなのでフレイには絶対に言わないが。


 「頼むから変なことをしないでくれよ。」


 「わぁってるよ、いったいお前の目の前には誰がいると思ってるんだ?大悪魔の……」


 フレイがなんか言っているが僕はそれを無視してため息をつきながら歩き続ける。


 「おい話を聞けよ!ったくよぉ……ところでお前は今どこに向かってんだ?」


 「いい加減お前呼びはやめろよな、僕にはアレクって名前があるんだから………今はジルバに向かってるんだ、あそこから王都行きの馬車が出てるからな。」


 「じゃあお前を小僧と呼ぶ、オレに対する態度が悪いからな、もっと敬え。しかしジルバか……久々に名前を聞いたぜ。」


 フレイが僕に文句を言いながらついてくる。フレイの口ぶりからして人間の世界に来たのは久しぶりなのだろうか。フレイは悪魔だから普段は別のところにいるのかもしれない。

 

 「そういえばフレイは悪魔だから結構長く生きてるだろ?この剣について何か知ってるか?」


 僕は師匠から貰った剣をフレイに見せる。フレイはしばらく剣を見ると何かに気づいたような声を出した。


 「……!なるほどあのババア、これを小僧に渡したのか……だいぶご執心ってことか。」


 「この剣のこと知ってるのか!」


 フレイはこの剣がどういうものか知っている口ぶりだった。


 「確かに知ってるが小僧に教える義理はねぇな。それにあのババアも言ってたろ、いずれ分かるって。焦ってもいいことはねぇぞ。」


 ふざけた言動しかしてこなかったフレイに正論で諭され少しムカついたが、僕は文句を飲み込みこれ以上は剣の話をするのをやめた。

 僕たちはこれからのことを話しながらジルバへ向かう。フレイも久々の外だったのか機嫌がよかった。太陽が真上に上ろうとした頃、僕たちはジルバへと到着した。久々に訪れた町は相も変わらず活気のある様子だった。


 「ここに来るのも久しぶりだな……。」


 ここに来た理由は王都に行くためと、冒険者登録をするためでもあった。入口の門を通り冒険者ギルドに向かおうとすると、衛兵に呼び止められた。


 「そこの君、ちょっといいかな?」


 僕は何か怪しいことをしてしまったか不安になりながらも後ろを振り返ると、懐かしい顔があった。


 「あなたは……最初に町を案内してくれた衛兵さん!?」


 「覚えていてくれてうれしいよ、君もずいぶん大きくなったね……僕はもうおじさんになってしまったよ。」


 そう言う衛兵さんの顔は確かに最初に町に来た時より老けている気がする。それでも人の好い笑顔は変わらずで安心した。


 「今日は冒険者登録をしに来たんです。」


 「もう登録ができる歳になったのか……なんだか時間が経つのは早いなぁ。」


 衛兵さんは感慨深そうに言う。


 「それじゃあ無理しないように頑張ってね。」


 僕は衛兵さんと少し雑談を交わした後、冒険者ギルドへ向かう。最初に来たときは、幼かったため中に入ることが出来なかったので、どんなところなのかワクワクしながら扉に手をかける。


 「あんまり期待しない方がいいと思うぜ……。」


 フレイが何か言っていたが、僕は気にせずに扉を開けた。そこで広がっていた光景は…………




 「もっと酒を持ってこ~い!!」


 「料理はまだかよ~!!」


 「何ガン飛ばしてんだゴラァ!!」




 屈強な男たちが大声で叫んでいる光景だった。女性の冒険者たちは、そんな大声で騒いでいる男たちを笑いながら料理や酒を飲んでいた。


 「ここが冒険者ギルド……。」


 僕が想像していたものとは全くの別のもだった。活気があることはわかるが何というか……豪快?な人が多いように感じた。もちろん中には気品を感じる人もいたがきっと高位の冒険者で良い生まれなのだろうと自己完結した。


 「だから期待しすぎるなって言ったろ。」


 フレイがガッカリしてる僕に話しかける。確かに僕が想像していた冒険者ギルドはもっと志が高い人たちがたくさんいるのではと思っていたが、実際は荒くれのような見た目をしている冒険者が大半を占めていた。


 「別に何とも思ってないから。」


 僕は嘘をついてフレイから目線を逸らす。


 「それよりも僕は冒険者登録をしに来たんだ!」


 僕は意を決して受付に向かう。受付に立っていた人は美人なお姉さん……ではなく屈強な大男だった。僕はビビりながらも冒険者登録をしに来た胸を伝える。


 「すみません、冒険者登録をしに来たんですが……。」


 大男は僕を見つめた後、少し小さな声で言った。

 

 「この装置の上にあるカードに血を一滴垂らせ。」


 小さなナイフを手渡された僕は、人差し指にナイフの先端をあてる。少し指先がヒリヒリしながらも血をカードに垂らす。するとカードに僕の身体能力やスキルが自動的に書き込まれていく。


 「一応書ける範囲で構わないから個人情報を記入してくれ。」


 そう言われて紙を渡された。自分の名前や出身などの常識的な範囲の情報だった。僕は紙に情報を記入して受付の人に渡すと、関心したように言った。


 「字を淀みなく書けるとは、お前貴族か何かなのか。」


 受付の人に字を書けたことに対して質問された。確かにこの国の識字率はあまり高くない、文字を書ける人は何かしらの高等教育を受けている人がほとんどだ。


 「僕の育ての親がたまたま字が書けたもので……。」


 師匠に教わったと正直に言うと、男は


 「そうか、いい親を持ったな」


 と一言残し、これ以上質問してくることはなかった。


 「では冒険者ギルドの説明をしよう。」


 紙を受け取った男は僕に冒険者ギルドのシステムについて説明してくれた。


 「まず冒険者にはランクがあることをしっているか?」


 「確かSランクが最高だったような…。」


 「そうだ、冒険者のランクは下からE.D.C.B.A.Sの6段階に分かれている、スタートはEランクからだ。クエストは自分と同じかそれ以下のランクしか受けることが出来ない。もし期限が過ぎたり失敗した場合は違約金を払ってもらう場合がある、クエストは身の丈に合ったものを選べ。ランクの昇格はギルドで管理している貢献度が一定に達した場合に、昇格テストとしてクエストもしくは試験監督の高ランク冒険者と模擬戦をしてもらう。ひとまず以上だ、何か質問はあるか?」


 「いえ特には。」


 「そうか、それじゃあ頑張れよ。」


 丁寧な説明をしてくれた受付の大男はまた普段の業務に戻る。こんな簡単に冒険者になれてしまうのかと呆気に取られと同時に、やっと夢が叶ったという興奮も感じていた。

 登録を済ませた僕は馬車の乗り合い場に向かう。その途中に水と食料をある程度買っておくことにした。お金は師匠が餞別として金貨5枚もくれた。

 この世界のお金は基本的に共通で、銅貨、銀貨、金貨、白金貨の4種類ある。特殊な硬貨もあるみたいだが、今の僕には縁遠い物だ。

 銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚、金貨100枚で白金貨1枚だ。

 硬貨を大量に持っていると危険だから高位の冒険者たちは宝石などに変えたりしてギルドの銀行に保管していると師匠が言っていた。ちなみにりんご1つが大体銅貨3枚で普通の人の月収が銀貨20枚ほどらしい。

 冒険者はギルドの銀行にお金を預けると、冒険者カードを使って支払いができるみたいだ。僕は水とパンを数日分選び、お店の水晶にカードをかざす。緑色に光ると支払いが完了で赤色の場合はお金が足りないことを示している。

 支払いが完了した僕は馬車の乗り合い場で王都行きの馬車を探し、先払いをして乗り込む。僕のような冒険者や一般の人も何人か乗っていた。護衛に3人の冒険者が同行するみたいで御者の人と話しているのが目についた。

 しばらくして馬車が出発した。僕はジルバの町を後にして王都に向かう。これからどんなことが起こるのかワクワクしながら、僕はフレイと王都に着いた後のことを嬉々と話した。

 



 この時、僕はまだ自分がフレイに払った代償を王都で知ることになるとは微塵も思っていなかった。




 

 


 


 

 

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