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名も無き英雄の冒険譚  作者: オレオル
修行
12/41

第11話

今回はキリがいいので少し短めです

 「うっ……うぅ……。」

 

 目が覚めると、目の前には知らない天井が広がっていた。辺りを見渡すと、僕は趣のある古民家のベットに横たわっていることに気づいた。横たわっているベットは、僕が普段寝るような木材の上に布を被せた安い作りではなく、驚くほどふかふかで体が包まれているような安心感がする。僕が部屋をキョロキョロと見まわしていると、入り口から一人の女性が入ってきた。

 腰まで伸ばした銀色の艶のある髪を一本に縛っていて、しなやかでありながら筋肉がついてる、目つきが鋭い美しい女性だった。右目に傷跡があり瞼が閉じているのでおそらく見えないのだろうと思う。


 「気が付いたか。」


 その女性はどこか神秘的な雰囲気をまとっており僕から話しかけるのを少し躊躇してしまう。

 視線を顔から下に移すと彼女の手には木製のお盆があり、そこにはスープとパンが並べてあり温かな湯気が立ち上っていた。彼女は僕にお盆を渡し、食べるように促す。スープからは香草の香りがほのかにし、パンは僕が食べやすいように薄く切ってあった。スープを一口飲むと体全体が温まっていくのを感じる。そして体だけでなく、村で起きた出来事で疲弊していた心までもが温まり癒されていくように思た。

 食事がひと段落して、僕は銀髪の女性に事の顛末を聞くことにした。


 「僕はアレクって言います、助けていただいて本当にありがとうございました。あなたのおかげで僕は死なずに済みました。それに手当と食事まで……本当にどうお礼をすればいいか……。良ければ貴女の名前と、あの後どうなったのか教えてくれませんか?」


 「あたしの名前はフォルトゥナだ。お前がヴァンテムに殺されかけたところをあたしが助けた……それだけだ。」


 フォルトゥナさんはあまり深く話すつもりはないだった、ただただ端的に事実を述べていた。


 「あたしが奴を追い払った後お前は死にかけだったからあたしの家まで担いで移動したんだ。ほかにも人がいたみたいだが、途中で壊れた馬車が二台道端にあった。おそらく村を襲った魔物とは別に待機させていた別働多のようなものがいたんだろう、隣町の兵士が何人か来ていたからもしかしたら生き残りがいるかもな。」


 彼女の話を聞いて、僕の心にアリエが生きているかもしれないという希望の光が差した。それと同時に村の人たちを守れなかった不甲斐なさを攻める自分がいた。

 アリエが生きているかもしれないという希望と村の人たちを助けられなかったという罪悪感で葛藤しているとフォルトゥナさんが口を開いた。


 「もしお前が村の人たち全員を助けられなかったと自分を責めているのならそれは傲慢な考えだ、波の冒険者であれば抵抗もできないうちに殺されるような相手にお前は立ち向かい僅かな希望を自らの手で作り出したんだ、それ以上の結果は今のお前には高望みもいいとこだ。」


 彼女の言っていることは辛辣で正論だが微かに僕を慰める優しさを感じた。僕は涙を抑えきれずに豪雨のような勢いで号泣した。フォルトゥナさんはそんな僕をただただ無言で見守っていた。






 しばらくして泣き止んだ僕は決心をしてフォルトゥナさんにあるお願いをすることにした。


 「フォルトゥナさんはヴァンテムと戦えるくらい強いんですよね、僕をあなたの弟子にしてくれませんか?」


 しばらくの間、部屋に沈黙が生じる。フォルトゥナさんは僕の目を見て、見定めるように質問をした。


「……お前は何の為に力が欲しい、魔族に復讐するためか。」


 彼女の鋭い目つきは僕の喉元に剣を突き立てられているようなプレッシャーを感じさせる。


 (何の為……か)


 僕は今一度どうして彼女の弟子になろうとしたのかを考える。確かにヴァンテムに復讐したいという気持ちも少なからずある、僕が今まで過ごしてきた村を壊滅させたのだから当然だ。しかし、僕が力を欲したのはそんな理由ではなかった。


 「守るため……もうこれ以上僕の大切なものを奪われないように、自分の弱さに後悔しないように、誰かを守る力が欲しいんです!」


 そうだ、僕が欲しいのは……アリエがまだ生まれる前に生前の母さんが読んでくれたおとぎ話に出てくる初代勇者のような、誰かを倒す力じゃなく誰かを守るだ。

 僕はフォルトゥナさんの目を真っすぐと見据える。


 「いいだろうお前を弟子にしてる、ただし一回でも弱音を吐いたら即刻出てってもらうからな。」


 こうして僕はフォルトゥナさんの弟子になり過酷な修行に身を投じるのだった。

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