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名も無き英雄の冒険譚  作者: オレオル
始まり
10/42

第9話

キャラの名前って考えるの結構大変ですよね

 僕とアリエは、村の入り口に向かって走り続けた。道中に壊れた民家や荒らされた畑があり、いつもの光景が跡形もなくなっていた。立った半日立たない間に、ここまで地獄のような光景になるとは、子供ながらに唖然としてしまった。遠くでは、大人たちが魔物と応戦している声がする、まだそこまで近くはないがそれも時間の問題だ。村の自警団はここまで大量の魔物と戦う訓練はしていないうえ、中には訓練をあまりしていない人も家族のために戦っているため、魔物を全滅させることは限りなく不可能だ。しかも、まだ魔族が姿を現していない。これほどの規模の魔物の暴走を引き起こすことができるのは、それなりに高位の魔族であるはずだと僕は考えた。

 必死に今できることを考えながら走っていると村の入り口に着き、僕たちをカリナさんが迎えてくれた。


 「あんたたち無事だったかい!」


 カリナさんが僕たちの方へ走り、抱きしめた。カリナさんの抱擁とても強い力でまるでクマにハグされるが如くだった。アリエと僕は息が苦しくなり、カリナさんの腕を叩いてギブアップをした。


 「カ……カリナさん……く……苦しい……。」


 ノックアウト寸前の僕たちに気づき、カリナさんは慌てて解放した。


 「ごめんごめん、あんたたちが心配で心配でねぇ、私にとって二人は家族も同然だからね。それに、アルガンの奴にも頼まれたからね。」


 カリナさんに案内され、僕たちは隣町との取引で使われている3台の馬車に乗り込み、他の子どもや女性が乗るのを待っていた。

 時間にして5分ほどだったが、僕の体感では1時間に感じた。もし今魔物たちや魔族がこの馬車を襲ってきたらどうなってしまうのだろうと永遠と考え込んでいた。すると隣で座っていたアリエが僕の袖を小さくつまんだことに気が付いた。アリエの顔を見ると、今にも泣きそうな顔をしている。きっと僕の不安を感じ取ってしまったのだろう。妹にこんな顔をさせてしまうなんて僕は兄として失格だと思った。

 僕はアリエの手を握り、不安を和らげるために笑顔でいるように努めた。


 「大丈夫、アリエのことは僕が絶対に守るからね。」


 アリエの頭を撫でながら僕は落ち着くまで優しく言葉をかけ続けた。

 

 「人数の確認が取れたので出発します。」


 僕たちは隣町に向かって避難を開始した。周りでは子供たちが泣いているのを母親がなだめている光景が見られた。

 アリエはそれを羨ましそうに見ていた。アリエが生まれてすぐに母さんは亡くなってしまったため、心の底では寂しい思いをしていたのかもしれない。

 しばらく何事もなく道を進んでいると、先頭からとてつもない轟音が鳴り響いた。


 「な……何が起こったんだ!?」


 僕はアリエをカリナさんに預けると馬車から飛び降り、一抹の不安を抱きながら先頭に向かって走り出した。

 そこに広がっている光景はバラバラに壊れた1台の馬車と、1人の男だった。

 

 「おいおいおいぃ……なぁに逃げようとしちゃってんのよ、そんなことされちゃあ俺が怒られちまうでしょうがぁ。」


 その男は、薄灰色の肌に額から生えている2本の角、肩まで伸びたボサボサの髪に気だるそうな目をした男だった。

 馬車の破壊から難を逃れていた御者が怯えながら訪ねた。


 「あ……あんた何者だ……。」


 男はため息を吐いたあと、怠そうに言った。


 「オレか?オレは魔王軍四魔将が1人、<暴風の支配者(テンペスト・レクトル)>のヴァンテムだ。」


 その一言で僕たちは絶望の底に叩きつけられたような錯覚がした。誰も泣くこともできずにただただ自分の命が目の前の男、ヴァンテムに握られていることを悟り唖然としていた。

 誰も一言も発すことができない中、僕は今にも押しつぶされそうなプレッシャーを何とか振り切り、ヴァンテムに尋ねた。


 「ぼ……僕たちを皆殺しに来たのか……。」


 少しでも気を抜いたら意識を失ってしまいそうなほど、ヴァンテムから放たれている圧はすさまじかった。生物としての格があまりにも違い過ぎる。ただの子どもである僕でも、彼の気分次第でいつでも殺されるということが本能で理解できた。しかし、今ここで黙っているわけにはいかない、少しでも時間を稼ぎこの状況を打開しアリエや村の人々を救う方法を考えなければならないからだ。

 ヴァンテムは僕を一目見て感心した様子で言った。


 「お前ぇガキのくせに物怖じないとは大した肝の据わりようだなぁ、今どうすればこの状況を脱することができるか考えてるだろ、オレ相手によぉ。皆殺しにするのかっつったなぁ、まぁ最初はそのつもりだったんだがよぉ、お前面白れぇからチャンスをやるよ。」


 ヴァンテムはカラカラ笑いながら僕に皆を助けるための条件を提示した。


 「今からお前が丁度死んじまうくらいの魔法を放つ、お前が生き延びることが出来たら見逃してやるよ。」


 そう言ってヴァンテムは右手を空に掲げると手の平から猛烈な竜巻が発生した。

 

 「さぁ生き延びてみろガキ。」


 僕に向かって竜巻が放たれた。僕が避けてしまえばヴァンテムの魔法が後ろの馬車に直撃してしまう。僕は意を決して親父からもらった短剣を構え、竜巻の前に立った。

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