巫女の守護者はサラリーマン
なろうラジオ大賞2第十七弾。今回のテーマは「サラリーマン」です。テーマも残り五つ! 終わりが見えてきましたね!(Bの一族から目を背けつつ)
現代風ファンタジー的な書き出しになっていますが最初だけです。女の子が何か悪いものと戦ってるって認識だけで十分読めると思います。
肩の力を抜いてお楽しみください。
人知れず、闇に跋扈する悪霊。
見えないものを敬わなくなった現代で、見えないものと戦う少女達がいた。
神の社で育ち、悪霊を祓う彼女達は、自然その名を『巫女』と呼ばれた。
「ま、魔法少女、みらくる☆めいでん! えっと、や、闇に囚われた貴方を、か、解放してあげるっ!」
ギィ……!
目を光らせた悪霊が、飛びかかろうと身を屈める。
(来る! 浄化を……!)
少女が身構えた瞬間、
「てぇーっ!」
鳴り響く発砲音。悪霊に雨霰と降り注ぐ弾。
ヒギャア!
悪霊は敢えなく四散した。
「はいお疲れ様でした。撤収です」
「……」
少女はテキパキと指示を出す眼鏡の男を、複雑な表情で睨み付けていた。
「何なのあれ!」
「と申しますと」
「今日の全部よ!」
清芽星華の詰問に、館森修悟は眼鏡を押し上げる。
「巫女しか浄化出来ない悪霊が、何で倒せたの!?」
「効率化の賜物です」
「効率化!?」
「今まで国の機関は、直接巫女と悪霊を戦わせていました。しかし非効率的な上、希少な巫女を損耗させた為、弊社に指揮権が委託されました」
「……それは、知ってるわ」
仲間が傷付き、離れていった苦い記憶を、星華は奥歯で噛み締める。
「我々は教訓を生かし、悪霊を効率良く退治すべく、この武器を生み出しました」
「エアガン、よね?」
「はい。そしてこれです」
その銃口の上の液体の入った瓶を指し示す。
「何? 浄めの水か何か?」
「巫女が触れた物には一定の霊力が宿る事が実証されています。そして古来より魔除けには塩が有効とされます」
「ちょっと待って。まさかとは思うけど」
「昨日貴女が入浴した塩湯です。それをまぶして撃つ機能を搭載しました。これで悪霊に攻撃が通ります」
「変態!」
激昂する星華に、修悟は涼しい顔を崩さない。
「作戦は成功したので、今後星華さんには魔法少女兼囮役と素材提供をお願いします」
「私は由緒ある巫女よ!? 囮はともかく何で魔法少女なんて名乗らなきゃいけないの!?」
「私の趣味です。給料安いんでこれ位の役得は然るべきかと。あ、次はこの桃色の衣装で」
「死ね!」
星華は怒声を投げつけて、仮設の作戦室を飛び出して行った。
「……はい、館森です。
……えぇ。無事成果を上げる事が出来ました。今後も巫女の残り湯を回収して下さい。
……はい。巫女が着用した服も回収しました。新たな武器の開発をお願いします。勿論費用は私持ちで。
……構いません。経費が掛かっても費用対効果が悪くても、女の子が傷付くよりマシですから」
読了ありがとうございました。
最近の魔法少女ものって鬱なのが多い気がして、シリアスをブレイクする話を書こうとぽつぽつ作っていたものの短編バージョンです。
天才的頭脳とロリコンの魂を併せ持つ変態が、悪霊との戦いで身も心も削られていく少女達を全力で守る、そんな話があっても、いいんじゃあないか……。
今回のキャラ名は、
清芽→浄め
星華→(星を明星の読みで)浄化
館森→盾、守り
修悟→守護
と言った感じです。こじつけ感が凄い。でも清芽はお気に入り。
それではまた次回作でお会いしましょう。