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ブラック企業戦士は転職の夢を見る

下手だろうが何だろうが、書かないと経験値を貯められないので初投稿です。

完結を目標に投稿していきます、よろしくお願いいたします。

「うーん、減産か……」


俺はARゴーグルにポップアップされた会社からのメッセージを確認してつぶやく。

このARゴーグルってブツは、太古の昔でいうパソコンとスマートフォンとその他色々を全部ぶち込んだ代物で、着用感はゴーグル型サングラス程度のものだ。

旧世代型VRHMDのような重ったるい機器はとっくに時代遅れであり、常時着用を目指すARゴーグルは本当に軽い。

なんなら着用者の視力に合わせるメガネ機能だってあるくらいだし、そのうち眼鏡サイズになるかもしれない。


話が戻るが、経済ってのはよくなったり悪くなったりするもので、文字通り気合い入れて仕事してもおっつかないこともあれば、暇すぎてどうにもならなくなるときだってある。

しかし今回のこれはそういうのとは別もので、ちょっとタチが悪いものだ。

なぜならば、経済自体は好調で会社の業績も悪くなく、そっちの理由で減産する理由はないからだ。


「まさか、労基に駆け込むやつがここまで増えるとはなあ」

「そりゃそーだろ、知ってたけどこの会社ってブラックだしな」


俺が続けた言葉に返してきたのは、俺が今の会社に入社した当初から一緒にやっている、ボサボサの髪に伸ばしっぱなしのヒゲが特徴のマッチョなゴリラである。

日本人の平均体格を超越する恵まれたボディを持つこのオヤジは見た目通り性格も常日頃の言動も豪快である。

ちなみにこのゴリラはブラック労働程度でへこたれるほどヤワじゃないし、俺のほうはと言えばブラック・カンパニーを渡り歩いてるのでブラック労働程度はお手の物だ。


今いる会社は車の部品製造工場で、数百年前から続いているような昔ながらの企業風土を持つ中小企業だ。

西暦2222年になっても根性論がまかり通るような企業――お約束のようにブラック!――が生き残っているのには多少理由はある。


いわゆる戦間期は人口が爆発的に増えることになり、人が増えれば色々な需要が死ぬほど増えるので、その需要を満たす仕事を生み出すということが必要になるわけだ。

なにもしなくても食って寝て遊べるなんて経済構造を持つことは現実的に不可能で、ヒトの代わりにAIやロボットに仕事を任せてお前ら飢えるか遊んどけ、なんてやってたら即治安が悪化してしまう。

実際には超高性能な量子サーバーに専用のAIを搭載させて、AIが要求する機器を用意すれば俺がやってるような仕事はAIやロボットに任せられるのだが、こいつを揃えようと思うとまたべらぼうなコストを払うことになる。


世界的大企業であっても、それらが持つ生産設備すべてにAIを投入するなんてことは無理なのだ。

AIに比べて圧倒的安価ということになる大量のマンパワーを投入するほうが、コスト面でも治安面でも、地域貢献という意味でも上等ということになる。

起業家たちの共通思想として、労働力は使い捨てというのがあるので本当の意味でいいのか悪いのかは俺には判断できないが。


さて、そんな数あるブラック・カンパニーのなかで俺たちの会社が直面している労基駆け込み案件だが、単純な話「調子に乗りすぎた」ということだろうか。


現在の日本は好景気と言えるほどではないが世界的な需要は安定していて、営業は調子に乗ってバカスカ仕事をとってきて、現場のキャパシティーは既に大爆発している状態だ。

そういう状態だとまず頭の出来のいいやつからやめていくことになり、慌ててテキトーなやつを大量に補充したところで効率が上がるわけもなくさらに大爆発を引き起こすというよくあるやつだ。

かといって納品先大企業様の要求を無視してあげられるわけもなく、焦りに焦った管理職たちがパワーなハラスメントの言動をとり始めたり、無茶なスケジュールでの労働を強要させちゃったりし始める。

そして次に起こるのが労基への駆け込み、この手の中小にありがちなのは極端から極端への移行……この会社でいうと減産と残業禁止令が発令されている。


この状況になるまで残ってる俺っすか?そりゃあもう。


「つーか俺んとこにもう引き抜きのアポイントが来てんだけど、お前んところはどうよ?」

「はえーっすね流石20年選手。まあ俺んところにも来てますが微妙すね」


首の後ろをかきながら答える。

そこには生体由来ではない電子デバイスが埋め込まれていて、業務は自分が仕事をする場所から突き出ているコードを引っ張り首の後ろに差し込むことになっている。


頸椎置換手術……頸椎とそこを通る神経群の一部を置き換える手術。

元は軍用だったこの技術は今では民間にまで完全に浸透していて、成人になると同時にその施術を行うのが少なくとも日本では一般的だ。

ここから脳に行く信号や、逆に脳からデバイスにアクセスしたりする神経信号によって仮想現実にアクセスしたりできる。


今この時点での関連する例を一つ上げるなら、仕事中に俺の脳から発せられる信号とARゴーグルのカメラ部から収集される実際の動きから俺の仕事の能力を評価し、政府が管理している職業技能リストに転送されるなんてことだろうか。

職業選択の自由ってやつがいつのころから少しばかり行き過ぎたのか、政府が主導となって労働者が持っている技能の評価とかはすべて収集され、リアルタイムで日々更新され続けている。

もちろんプライバシーという理由でデータ収集を拒否ができるのだが、国に登録している企業の人事部ならば、そのデータベース全てに自由にアクセスできるという利便性のため、社内人事評価にも使われており拒否するメリットは皆無だ。。

俺ら底辺労働者にとって秘匿される個人情報なんてあってないようなものだし、よくよく考えてみれば必死になって隠すようなものでもないのでどうでもいいな。


俺が働き始めてから今この瞬間までの経歴全部に、それぞれの評価などは全て政府管轄の量子サーバーに格納されており、それをもとにAIが俺という労働者の価値を算出して、どこかの企業の人事部がそれを見つけて「うちに来ませんか?」と送り付けてくるわけだ。


このタイミングでアポイントが飛んでくるのは、今いる会社のこの状況が広まったからだろう。

弱肉強食、資本主義の世界では当然のことだといえる……一方俺のアポイントリストに目を引くような大企業の名が無いのは悲しいことだが正しいともいえるし、いずれにせよこの会社はもうダメだろう。


俺の年齢は38で、ケツに火が付き始めるお年頃であることは確かだが、この時代においてこの年齢は不利になるような数字じゃない。

では転職先はアポイントが来ている同業他社は他製造業か……答えはノーだ。

それならば異世界に運ばれるのを待つか、トラックにはねられるのを期待するか?他人任せどころか神頼み以下の妄想が信頼できるんなら初めっからそうしてるだろう。


ひとつ言い忘れたが、結婚するにはブラック・カンパニー・ソルジャーすぎるし貯蓄もない。


我が両親は俺が結婚相手を見つける可能性なんて完全にないと思っているし、俺自身もそう思っている。

人生においてモテたりする時期は確かに0じゃなかったが、しかしそれが過ぎ去ってしまうと、以降はそのための努力を惜しまず続けなければノーチャンスだ。


俺が言いたいのは、チャンスが転がっていてそれを望むのであれば、確実につかめということくらいだ。

敗者の助言は実体験に基づくものであるため、心の片隅にでも留めておいてもらえると嬉しい。

書き始めのきっかけは、なろうのVRMMOものでした。

なので、仮想現実を現実に引っ張ってみたら宇宙に飛び出すしかなくなったのでSFです。

SF、あるいはサイバーパンクを堂々と名乗るには知能も文章能力も足りないのが悔やまれます。

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