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9節

 9


誰だ、と優井上さんは声を張り上げた。


《話していけばわかるはずよ。実瑚さんは探偵でしょ。》


どうやら声は私の頭の中に直接響いているようだ。


ということは、優井上さんもそうなっているのかな。


いろんなことを急に詰め込まれたせいか、頭はパンク寸前。


《まずはお礼の言葉を。AIとはいえ、私の実験に付き合ってくれてありがとう。貴女達にも実験の内容に関して聞く義務はあると思ってここで放送を入れた。聞くかしら?》


AI?


実験?


なんのこと?


「どういうことか、説明して欲しいのだが。」


優井上さんも状況を把握しきれていないらしい。


正直、私はなんとなくだけど想像がつく。

あっているのではないかという自信も少しだけある。


《わかったわ。その前に、一つ、聞かせてちょうだい。科那、貴女は奇跡を信じるかしら。》


私に問いかけてきた。


奇跡、か。


優井上さんに出会えたことは良かったことだと思う。


でも、もしもあと少し、ほんの少しでも早く会ってれば、なんて考えなくもない。


だから、私の答えはこうだ。


「信じていません。奇跡があるなら、私はもっと幸せになっていたかもしれない。けど、奇跡なんてものはない。理由は、今ここにナイフがあるから。」


手に持っているナイフは私が親を殺した時のもの。


苦しくって仕方ない状況を抜け出すために泥を被る覚悟を持って現実を変えた意思。


《私も同じ考えよ。けれど、考えと真実は異なるもの。そうでしょ、名探偵さん。》


「ああ。証拠に基づいた考察だけが真実に辿り着ける。」


優井上さんは冷静に答えている。


彼女は一人でも現実と戦っていけるのだろう。


たとえそれが、辛くて辛くて仕方がなくっても。


《だから、私は実験をすることにした。体験したことを何度も何度も繰り返して、一つだけこちらで手を加えるの。対照実験というのかしらね。もしかするとあり得たかもしれないことを一つだけ。でも、まだ失敗していないの。たったの一回も、失敗していない。》


こんなことをする人間の予測はついてるけど、あえて考えてみよう。


体験したことを、と言っていたよね。


じゃあ、今、頭に話しかけてきている人は私と優井上さんに関係がある人。

もしくは、当事者。


優井上さんは何も言わない。


《奇跡の存在をめぐる実験の中で一番の鍵となったのは優井上実瑚、貴女よ。だから私は貴女に手を加えていくことにした。人格を変えるとかじゃなくて、いつどこにいるのかということを。》


優井上さんがキーパーソン。

なら、優井上さんがやっているとは考えにくい。


《これが実験の目的と簡単な手順。実瑚さんなら私が誰か、わかったでしょう?》


彼女が問いかけると、優井上さんは目を閉じた。


情報を整理しているのかな。


2、3分が過ぎた頃だろうか。


優井上さんはゆっくりと口を開いた。

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