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3節

 3


部屋には椅子が一つしかなかったから探偵さんに座ってもらって、わたしはベッドに腰掛けることにした。


「では、まず君のことから聞こうか。名前、年齢、誕生日、性別、学校名、学年、クラス、家族構成。この辺りを聞きたい。」


どうせ調べているだろうし、普通に答えようか。


湿念(しつねん)|科那(かな)。一四歳。誕生日は二〇七二年六月十一日。女子。G中学校二年四組。家族は、母・父・祖母・祖父。これでいいですか。」


「……、嘘は言っていないな?」


「言ってませんよ。」


わたしがそう答えると、優井上さんは何かを考えるかのように手を顎に当てた。


どこか不自然なところでもあったのだろうか。


嘘はついてないつもりなんだけどなぁ。


「では、一つ問題だ。三角比の正弦定理の式を言ってごらん。」


「?……ええっと、2R=a/sinAですよね。」


「あっている。さて、このことから君が高一数学の知識を有すると分かった。その上で話そう。食い違っているんだよ、年齢と生まれた年が。おそらく誕生日の方はあっていると思う。君の資料にもそう書いてあった。先ほどの問答からもそうであると予想可能だ。娘さん、君は十四歳ではなく十七歳、高校二年だ。」


だが、君は嘘をついていないと言う。


そう、彼女は続けた。


計算が合わないことは事実。

けれどわたしはそのように記憶していて、そこに嘘偽りはない。


矛盾はたしかにあって、であるというのに違和感を感じないことはとっても不気味なんだと思う。


気付いた時に鳥肌が立ったもの。


「アタシも君は嘘をついていないと考える。瞳孔が大きく開いていた。ここから導き出せる答えとして、記憶喪失をあげようか。原因は恐らく、今回の殺人事件。故意的に忘却させられている可能性もあるし、多大なるショックから身を守るためだったのかもしれない。どちらにせよ、君の記憶に秘密が眠っているということだ。」


「そんな簡単に断定できることなのですか。」


「できないよ。だから、君は一度病院で検査を受ける必要がある。今日は学校を休むといい。ワタシもついて行こう。」


病院なんて、行くの久しぶりじゃないかな。


保険証は更新されてるはずだから、まだ無償で病院にかかることができるけど。


違う、今高校生なら無料じゃ受けれない。


なんか損した気分だなぁ。


「ところで一つ、疑問があるのだが。」


部屋を出て行こうとした優井上さんが振り向いて私に問いかけた。


「なぜ君はそんなにも冷静なのだ?」

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