プロローグ、1節
0
なんでこうなったんだろう。
逃げ出したい、放り出したい。
でもそれは、許されない。
だから私はこう決めた。
あの日に決めた。
奇跡を探そう。
そう決めた。
1
冷え冷えとした蛍光灯が照らす部屋には、一輪の花が横たわっていた。
目覚めの後のパニックが収まりようやく周りを見渡すだけの余裕を持てた私は、その花を手にとった。青い薔薇、かな。
花言葉は確か、不可能と奇跡だったと思う。前に本で読んだことがある。
本に載っていた写真がとても綺麗で、記憶に残っていた。
あ、紙も落ちていた。気付かなかった。
多分、窓もない真っ白な部屋だから見分けがつかなかったんだ。
えっと……この部屋から出るための方法、かな。
……あ、普通だった。
いきなり家とは違う場所に連れてこられていたからって、謎解きをしないと出れないなんてのはそうないか。
扉を開ければ出れるだなんて、あまりにも呆気ないとは思ってしまうけれど。
青い薔薇が置いてあるのだから、奇跡の一つや二つは起きて欲しい。
あの家には帰りたくない。
どうせならこのまま扉を開けずに部屋の中に閉じこもっていようか。
いいな、それいいな。
誰に何も言われないで暮らせるなんて。
でも、お腹減るよね。トイレにも行きたくなる。
そう考えると、あまりにも無理があるということに気づいた。
少なくとも、家にいれば衣食住に困ることはない。
そこで暮らすべきなんだと思う。
あと数年我慢すれば独り立ちも出来るわけだし。
帰るなら早くしたほうがいい。
どんなことにケチつけてくるかなんてわからないから。
青い薔薇は、持って行こうかな。
どっちにしろ枯れたら終わりだろうけど、それまでくらいなら隠しておける。そうしよう。
それにしても、こんな部屋見たことない。
窓がないから部屋の外の風景を見ようにも見れないし。
外に出ればわかるかもしれないけど。もし、知らない場所にいたらどうすればいいのだろう。
近くに村とかがあればいいけど、山奥とかだったらどうしよう。
野垂れ死ぬくらいならこの部屋にいた方がいい。
まあでも、一回外に出てから決めればいいかな。
進展なしもつまらない。
よおし、外に出よう。
——ただ、ここにいると安心感が湧き上がってくる。
自分だけの聖地にいるような、あるいは優しい家族やら友人やらに囲まれている時にこのような気持ちになるのであろうか。
そんなこと、今の私にはわかるはずも感じることもない感情だった。
二日に一度、投稿をする予定です。