1-1《都大路に出る》
広島県安芸太田町青葉学園高等学校。
広島の旧国名の安芸の名があるこの町は今は人口7000人を切り半分は高齢者だ。
そんな町の中1つしかない高校、青葉学園高等学校はこの町の人が9割を占める全632名の普通の高校だ。
そして今 入学式があった1週間後、部活の勧誘にはもってこいの時期。しかも今日はその最終日とあってどこの部活動も朝から位置取りをし大声で勧誘している。
「駅伝部ー!駅伝部入りませんかー!」
「やっぱ入部希望者少ないかー。」
「まあ、一昨年できたばっかりの部活だからね。」
パラパラと紙をめくる、その男はこの駅伝部の主将三鷹 龍介 彼は昨年全国総体5000m入賞を果たしているかなりの実力者だ。
そしてその隣にいる、懸命に呼びかけている男が中島 晃樹 中国総体1500mで決勝まで行ったこれまた実力者だ。
時刻は午前8時30分朝のHRまで20分を切ったところ。
「あー、そろそろ終わるかー。」
「そーだな、他のとこはまだやるみたいだけど、、駅伝部はもういいか。」
タッタッと音を鳴らしながら入部届の用紙の乱れを整え最後に数を確認する。
「どーだ?去年よりかマシか?」
「まぁーな、てか去年は2人やんけ。」
少し苦笑いをしながらもう一度数を確認してみる。
「6人だ。」
「おぉー、やったじゃん。これで青葉も広島の強豪校に仲間入りか!?」
「な訳ないだろ。強豪校は毎年10人以上は入るよ。」
入部届を曲げてそれを晃樹の頭に叩きつける。
「そんな雑に使って良いのかよ。」
「良いんだよー。」
気の抜けた声で返事をし龍介たちは片付けをする。
すぐに済ませたところで2人はバックを持って教室に向かう。
「おい、これ駅伝部じゃないかー。」
隣にいたサッカー部の人が拾ってくれたみたいだ。
サッカー部の隣に入ればおこぼれで誰か入ってくれると思っての作戦でここにした。
(まぁ逆効果だったが。)
「聞いてるかー。」
「おう!すまん。」
もう靴箱まで来ていたが10mある場所をまた戻る。
「どうも、」
1言礼を言ってすぐに踵を返して走る。
[宮野 駆]
拾って貰った入部届に書いてあった名前を見ながら靴箱に戻り、そのタイミングで他の入部届に重ねた。
《放課後部室にて/14:45》
部室の広さは私立とあって教室半分くらいだ。
最初は_3年2人で_どのように使うか戸惑ったが今となっては2-2-6の10人いるので少しはマシになった。
更にここで初期設備出会ったホワイトボードを3年目でやっと使うことが出来た。
「よし、1年含めて全員いるな。」
ホワイトボードに龍介がそれを軸に窓側先輩 壁側新入部員 が1列横隊で並んでいる。
これは太陽の光が当たる窓側に先輩が並ぶことによって先輩を敬うと言うのを無意識的にやらせるなんとも言えない作戦だ。
もちろんこれは彼の作戦だ。
キュッキュッと鳴らしながらホワイトボードを文字を書いていく。
[目標 都大路!!!!]
「「「はぁー!?」」」
3人が思わず声を出してしまう。
「うるさいぞ、先輩だろお前ら。」
「いやだっ、、」
と言葉を発した瞬間脇腹を突かれた。=黙れ だ。
「まずは自己紹介からいこー!俺は駅伝部部長の三鷹 龍介だ。これに書いてある通り今年は都大路を目指して行くので1年生には頑張ってもらうぞ!」
「......。」
(これは大丈夫かなー。)
晃樹はそう思ってしまう。