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プロローグ
僕こと結城暁人が、神崎小夜先輩と初めて出会ったのは、去年の冬だった。
文化祭で何気なく訪れた教室に、彼女はいた。
たった一人で運営している、新聞部の、一年生にして部長を努める少女。
艶のある長い黒髪、切れ長の瞳、整った顔立ちに、落ち着いた物腰。
彼女は、せっかくの文化祭を楽しまずに新聞部の部室で独り作業をしていた。
僕たちが通っている県立舘木高校の文化祭は、天皇誕生日、クリスマス・イブ、そしてクリスマスの三日間に分けて開催される。
その三日間で、先輩は様々な謎を、まるで通いなれた通学路を歩くかのように解き明かした。
とあるクラスの備品が、一斉に盗まれた話。
お化け屋敷で恐怖体験をした後、幽霊に憑りつかれたかのように体調を崩した少女の話。
文化祭を引っ張る肝心の生徒会長が、どこかにいなくなってしまった話。
僕は高校生になって、彼女と再会して――そして、僕たちの物語は始まる。