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第八話 扉の向こうで、お金と彼らが待ち構えているよ

「何よ、これ……」


 深夜になってからやって来た藤乃が、室内の散らかりようを見て、驚嘆の声を上げる。どうして部屋が乱雑になっているかというと、俺と城ヶ崎で、四万円を探して、手当たり次第に荒らしまわったからだ。


 しかし、肝心の金は見つからず、部屋が廃墟のようになっただけだった。


「こうしてみると、泥棒が入った後みたいね」


 無人の部屋に侵入して、金を探し回る。やっていることは泥棒と変わらないので、俺と城ヶ崎は、赤面して黙りこむ他なかった。


「でも、お金は見つからなかったでしょ!」


 藤乃の後ろから、シロが顔を出した。部屋をこれだけ荒らされたというのに、少しも気分を害していないようだ。むしろ、無駄な努力をお疲れさまとでも言いたそうな顔をしている。


「あれ? もう始まっているのか?」


「間宮くんも今来たのね。でも、安心なさい。お金はまだ見つけられていないから」


 シロに続いて、青年も入ってきた。そうか。こいつ、間宮って名前なのか。


「お金が見つかっていないのは、本当だよ! だって、まだ発生させていないもん。いくら探したって、ないものは見つかりっこないよ」


 まだ賞金が発生していない。俺と城ヶ崎の努力を否定する無慈悲な一言が、シロの口から宣告された。せっかく先手必勝で四万円をゲットしようとしていたのに、その努力が全部無駄……。


 思わず脱力してしまいそうになるが、まだ金は見つかっていないのだ。落ち込むにはまだ早いと、自身を鼓舞した。


「昨日は、先にお金を発生させちゃったから、お兄ちゃんがここに来た時点で、もう見つけられちゃっていたでしょ。だから、今日は、みんなが集まってから発生させることにしたの!」


「ああ、そう……」


 シロからしてみれば、気を利かせてくれたのだろうが、ハッキリ言って要らないお世話でしかなかった。


 無駄な努力ご苦労さまという顔で、藤乃がほくそ笑んでいる。そのしぐさが、かなりイラッときたので、言い返すことにした。


「……お前こそ、何だよ、その格好は」


 胸元を昨日以上に開放して、下手をしたら見えてしまいそうで、目のやり場に困る。化粧も気合が入っていて、男を誘惑しているとしか思えない格好なのだ。ターゲットは魔王で間違いなさそうだな。


「今晩は暑いからね。薄着にしないと、汗がすごいのよ。あまりじろじろ見ないでね」


 嘘をつけ。少し震えているじゃないか。どう見ても、やせ我慢だろ。そこまでして、魔王に取り入りたいのか?


「そういえば、藤乃さん。シロちゃんに、魔王には奥さんがいるのか、やけにしつこく聞いていましたよ……」


 城ヶ崎がこっそりと耳打ちしてきた。大方、そんなことだろうと思ったよ。賞金を獲得しながら、魔王も誘惑するつもりか。本当にしっかりした女だよ。


 俺たちの狙いは、あくまで賞金だ。それさえもらえれば、魔王とその一派とは、関係を持ちたいとは思わない。


 だが、この女に限っては、考え方がまるで違うらしい。正直な話、ここまで大胆な行動をとられると、ドン引きを通り越して、尊敬の念すら感じる。


 その横で、シロが力を行使して、散らかっていた部屋を綺麗にしている。整理整頓まで出来るとは、恐れ入ったよ。


 ……ん?


 綺麗になった部屋に、いつの間にかドアが一つ増えていた。確かに、さっきまではなかった。金を求めて、あちこち探し回ったので、部屋の数は把握していた。


「お掃除を頑張り過ぎちゃった♪ 思わず部屋をもう一つ作っちゃったよ」


 わざとらしい……。舌をペロリと出しやがって、可愛さアピールか、こいつ……。


「せっかく作っちゃったんだから、消すのも忍びないし、このままにしておこうっと! この調子で、賞金もセットと!」


 おそらく今の一言ともに、部屋のどこかに賞金をセットしたんだろう。まあ、一番怪しいのは、新しく作られた部屋の中だがな。


「は~い! じゃあ、今晩の賞金探し開始で~す! みなさん頑張ってくださ~い!」


 声だけ聞くと、至って可愛らしいんだよな。中身は真っ黒だけどな。


 シロの掛け声とともに、俺と藤乃が飛び出す。向かう先は、新しく作られた部屋だ。


「!!」


 我先にと、室内の様子を見てビックリ! どこかの洞穴に繋がっていたのだ。


「何よ、これ。扉の先は異次元空間なの!?」


 藤乃がシロに質問するが、やつはにっこり笑うだけで、返事をしない。好きなように解釈しろってことか?


「何かRPGのダンジョンみたいだな」


「となると、この先に宝箱やトラップもあるんでしょうか」


 間宮と城ヶ崎も続いて覗き込んできた。宝箱やトラップか……。それはそれで面白そうだが、ダンジョンとなると、もっと警戒するものがあるだろ。


「魔物もいたりしてな」


「ははは……。ありそう」


 ルール説明で、魔物は出てこないとは言われていないからな。賞金が増えていけば、ドラゴンやゾンビだって出てきそうだ。


「でも、シロちゃんはノーリスクだって……」


「シロにとってはノーリスクって意味じゃないのか? あいつ、かなり強いから、大抵の魔物は瞬殺出来るだろ」


 間宮が何気なく発した一言に、全員がハッとして、シロを凝視した。みんなの視線を独り占めする事になったシロは、わざとらしく横を向いて、口笛なんか吹いていた。


 こいつ……、図りやがったな。


 腸が煮えくりかえりそうだったが、それよりも危惧すべきことがあった。否定しなかったということは、魔物を登場させる予定があるということだ。


 さすがに命を落とすようなことまではしないと思うが、相手は魔王の使いだ。日常生活が困難になるような後遺症は負うことになるかもしれない。


「どうします?」


 困ったような顔で、城ヶ崎が俺たちの顔を覗き込んできた。実際には、たいして困っていないことは察した。大方、少しでもビビっているようなやつがいたら、徹底的に脅して、賞金探しからリタイアさせるつもりなんだろう。抜かりのないやつだ。


「お金は欲しいですけど、命には代えられないですからね。欲張って死ぬことになったら、洒落になりません。命より大切なものなんて……」


「あるわよ。それはお金!」


 城ヶ崎の胡散臭い説得を遮って、藤乃が高らかに言い放った。そこまでハッキリと、ひんしゅくを買いそうな意見を宣言出来るとは、ある意味で格好良い。


「金の力はすごいのよ。たくさん持っていれば、醜男だって魅力的に見えるし、周りの扱いだって違ってくる。難病によっては、大金を払わないと、手術も受けられないものだってある。暴漢に襲われても、金を払って見逃してもらうことだってある。私が何を言いたいか分かる? 場合によっては、大金で幸せや命を買うことだって出来るの」


「でも、それが可能になるほどの大金を掴むことの出来る者は限られる……」


 熱っぽく語る藤乃に、間宮が合いの手を入れる。お前は、別のものを毎晩掴んでいるんだから、大金を手にしなくたっていいだろうにと、ちょっとひがんでみる。


「つまりね。魔物ごときで怖気づくようなやつはここにはいないでしょ? 私が最終的に言いたいのは、それよ!」


「やっぱりそうなっちゃいますか……」


 俺以外の三人の顔をマジマジと見る。確かに、気後れしているようなやつは、一人としていない。俺も同じだ。一番怖いのは、欲にまみれた生きた人間なのかもしれないね。


 現に、藤乃と城ヶ崎は、武器になりそうなものを物色しだしている。その様子を、間宮が、興味深そうに観察していた。


 そういう訳で、四万円争奪戦は、静かに幕を開けたのだった。


主要人物の名前がようやく出揃いました。

忘れないうちに、登場人物紹介を作っておくことにしましょう。

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