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Re/O  作者: たま。
第1章・異世界ヴァーニス
16/21

第16話・ご都合魔法

あけましておめでとうございました。

「では、三人パーティという事で宜しいでしょうか?」

「ええ」


 ボク達三人は、出立の用意を終わらせ街を出る前に傭兵ギルドへと寄った。

開拓において新たに発見された三種の魔法を教授して貰うためだ。


「それでは・・・、法術師の方はどなたですか?」

「見て分りませんこと?」


 アイリーンさん的にはそのつもりがないのだろうけど、あの巨体と強面で見下ろしていると誰がどう見ても威圧しているかの様に見える。

ギルドのお姉さんは完全に萎縮してしまっている。


「まぁまぁ、お嬢様。 お気を静めてください」


 それを優しい声色でイカロスさんがアイリーンさんを宥めた事によってお姉さんの緊張が少し和らぐ。


「何ですの? 私は怒っていませんわっ」


 ボクは二人のおまけなので一歩引いた位置で動向を伺う。

決して飛び火してくるのが面倒とかそういう訳ではない。


「あ、あの・・・。 次の説明宜しいでしょうか?」

「ええ、早くして下さいまし」

「あ、はい。 すみません。

開拓にあたり三種の魔法が発見されたのはご存知かと思います」

「ええ」

「簡単な説明はギルド前で聞いているかと思いますが、今からは詳細についてお話させて貰います」


 将来的にボクも使う機会が出てくるかも知れないので半歩前に出て聞き耳を立てる。


「まずは、これを受け取り下さい」


 お姉さんが差し出したのはクリスタルの様な結晶で透過率の高い透明色をした大体十センチぐらいの大きさだ。


「これは何ですの?」

「新たに発見された・・・と言うのは正確ではないのですが、転移と同時に生まれたアイテムです。

アイテムの効果は、ロッドと同じで特定魔法の無詠唱発動です。

そして、もう察しているかと思いますが特定魔法というのがオートマッピング、マーキング、ルーティングの三種です。

内包している魔法の事もありまして傭兵ギルドや騎士団などで保管する事になりました。

開拓にあたり傭兵の皆様へ無償提供させて貰っています。

ただし、提供されるのはパーティ1つにつき一つとなっています。

パーティを解散したりメンバーの入れ替えなどを行った際は一度返却して頂く事になります。

失くされますと当然ながらその三種の魔法は使用出来ない上にルーティングの完了手続きが出来ません。

それに伴い持ち主の識別機能などはないので別の誰かに渡りますと悪用され兼ねませんのでご注意下さい」


 その結晶を誰に渡すか迷ったお姉さんは、一番人当たりの良さそうなイカロスさんへ渡す。


「それでは各魔法についてお話します。

オートマッピングは、魔法力が消費されるのが開始と終了の時のみで消費量も微量です。

効果は、自身の半径十メートルの範囲の近い大まかな地形データを地図上に書き込みます。

ただし、結晶を所持した人のみ反映される仕組みなので基本的に法術師の方が所持して下さい」

「それなら私にお渡しなさいまし」

「も、申し訳ありません。

え、えーと、世界中の人の地図に反映されるのは開拓終了時のみなので、これは後ほど詳しくご説明します」


 魔法名が安直過ぎる・・・。

それは置いておいて、聞いた感じ時間制限のないバフみたいなものかな?


 ちなみにロッドは、特定魔法を無詠唱で発動以外に無詠唱時に消費する魔法力(MP)で全文詠唱時と同等の効果がある。

簡単に言えば、最小消費MPで最大効果の魔法を属性の得意不得意関係なく即時発動という事になる。

ただし、使用者本人が、特定魔法を使える種族で魔術を使える事が前提となり、効果は能力依存となる。


とはいえ、オートマッピングという魔法は、効果が固定の様なので詠唱者の能力は関係ないようだ。

もう完全に開拓をする為だけに生まれたご都合魔法という感じかな。


「次は、マーキングです。

これは現在地を地図上にマークする魔法です。

マーキング ○○と続けて言葉を言えば地図上にその言葉が反映されます。

例えば、マーキング ダンジョン1みたいな感じですね。

まぁ、これはメモという風にとってもらえれば良いと思います。

八文字以上はメモできませんのでご注意下さい。

消費魔法力は微量でオートマッピングよりも少ないです。

消費タイミングは、書き込んだ時のみです」


 メモまで出来るなんて地図を作ってくださいと言わんばかりな魔法だ。


「マーク出来る数には制限はありますの?」

「いえ、特にありませんが、地図の密度によっては邪魔になると思いますのでご注意下さい」

「・・・そう、ですわね」


つまり、世界地図ではなく周辺地図とかなら大丈夫って事かな。


「マーキングは、地図の指定とか出来ないのですか?」

「残念ながら。

書き込みたくない地図を詠唱者が持たないという風に対処するしかないですね。

それとマーキングに関しては、あくまでもメモの扱いです。

もし、他者にマークした箇所を知らせたい場合は、マークの横に座標が書いてありますのでご参照下さい。

また、他者から座標を教えて貰った際は、マーキング”座標”と唱えれば地図にマークされます」

「座標ですの? それは便利ですわね」

「オートマッピングもそうでしたが、このマーキングも何か作為的なものを感じますね」


 やはり、イカロスさんもボクと同じ様に感じていたみたいだ。

余りにも出来すぎている。


「ですね。

最後にルーティングです。

この”結晶”を持って、そこにある”水晶”に手をかざして使用します。

そして、出発する町での”ルーティング スタート”と到着した町での”ルーティング エンド”の二回行います」


 カウンター横に設置された水晶は、直径二十センチぐらいの大きさで重そうな金属の台座にしっかりと固定されている。

結晶と同様に透き通る様な透明度をしているが、結晶と違い水晶中央が淡い光を発している。


「ルーティングとは、町と町の間を一番適切なルートを割り出す魔法なのですが、詠唱者がオートマッピングで書き込んだ範囲に限定されてしまいます。

例外としてすでに書き込まれた地形も反映するのですが、詠唱者の書き込んだ範囲と繋がっていないと意味がありません。

それと街道や橋などの人工物の有無も影響されるらしいですが、今は関係ないですね。

後は・・・、そうですね。 消費魔法力は、前述の二つに比べて少し多いですが中級法術を使える方なら問題ない範囲です。

消費タイミングは、開始時と終了時のみです。

何かご質問は?」

「パーティの最低条件が、中級法術を使える者が一人いないと駄目だったと記憶しています。

その理由をお聞きしても?」


 アイリーンさん達と別れた後の事を考えて質問する。


「消費魔法力が微量と言いましても法術師として未熟な方だと、それ以外の事に影響してしまう恐れがあります。

戦闘で傷付いた者をいざ回復しようとした時に使用出来ないのは問題でしょう?

ですので、十分に魔法力を有している事が前提となります」


 なるほど。

複数の魔法体系を同時に習得していれば幾ら未熟な法術師でも魔法力が十分にあると思うが、

そんなの他人には判断出来ないし基準という意味で中級法術以上というのは分らなくもない。

微量というのもどのくらいかよく分らないけれど、未熟な魔法使いの魔法力枯渇なんてよく聞く話だしね。

どれもが常時消費型でないので余程のお間抜けさんでない限り大丈夫だろう。


「もし、法術師が二人いる場合、下級法術しか使えない者でも問題ないのかしら?」

「そうですね・・・。 片方が中級法術以上が使えるなら問題ないかと思います」

「ところで、その水晶というのは、傭兵ギルドへ行けばあるという認識で良いのですか?」


 あ、それボクも聞きたかった事だ。

どうも、イカロスさんと思っている事がほとんど同じ様に感じるな。


「傭兵ギルドのある町ならそうなりますね。

今の所、この町で水晶が確認されているのは、傭兵ギルド以外ですと商人ギルド、職人ギルド、教会、領主宅です。

この町にはない施設が他の町にもありますので、それ以外は個々で確認して下さい」

「個人で所有している人はいないの?」

「はい、確認されていません。

と言いますか・・・、これすごく重いんですよ」

「へぇ~」


 アイリーンさんだったら持てそうな気がする。

あれよりも重そうなメイスを片手で持っているし・・・、でも口にしない方が良いよね。

死にたくなければ・・・。


「持ってみても良いかしら?」

「え? ええ、まぁ、良いですけど、ほんとに重いですよ?」


 まさか、アイリーンさんが自分から申し出るなんて思わなかった。

水晶の台座をメイスを持つ様に握り「フンッ」と言うのと同時右腕に力を入れる。

元々ボクの腰よりも太い腕の筋肉が三割り増しぐらいに膨張し血管が浮き出るが台座は微動だにしない。

浮き出る血管の数が少しずつ増え、歯を食いしばり目が血走り出すがやはり動くどころか浮く事さえなかった。


「はぁはぁ、む、ムリですわ」


 アイリーンさんは持つ事を諦め手を膝に付けて荒い息を整える。

動かす事すら無理なら盗まれる心配はなさそうだ。

と言うより、どうやってここまで持って来たのか疑問が残る。


「だから言ったじゃないですか」

※人の得意・不得意属性

人には、種族属性と人格属性が1つずつあります。

種族属性は、生まれ持った属性で種族で固定されています。

人格属性は、個人に対する属性で人によってバラバラです。

例外として混血種族は、種族属性を二種類以上持っている場合があります。


種族属性と人格属性が同じなら、その属性魔法はすごく得意で逆属性がすごく不得意という事になります。

種族属性と人格属性が、相反する属性だった場合、お互いを打ち消す事になり得意不得意の属性がなくなります。


この得意不得意は、習得出来る魔法に影響します。

得意属性の魔法は上級まで、不得意属性の魔法は下級までという事になります。

種族属性と人格属性が同じ場合、得意な属性は最上級まで不得意な属性は使えないと極端になります。

ただし、得意属性、不得意属性ともに武器や防具の属性には影響しません。

得意属性が火で武器も火だから強力になるという訳ではないし逆も然りです。勿論、生身だった場合は別です。

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