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Re/O  作者: たま。
第1章・異世界ヴァーニス
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第14話・裸族現る

「あら? 杖がありますわ」


 アイリーンさんが、蓋が半開きになっら木箱から一本の杖を取り出した。


「あ、それは・・・」


 杖の上部に赤い宝石が埋め込まれた”魔術師用”の杖だ。

カテゴリー的にロッドと呼ばれ、特定の魔術が詠唱なしで使用出来る武器である。

ただし、ステータス上昇系の効果が一切ないので主に護身用として緊急時に利用される。

これの上位武器で魔本というのも存在し、こちらは複数の魔術が詠唱なしで使用出来る。


「なかなか、杖にしては重みがあって良いですわね」


 その杖で重要な箇所がその宝石なので間違ってもこれで殴ってはいけない。

勿論、アイリーンさんの様にブンブン振り回すのは持っての他だ。


「アイリーンさん、それは鈍器ではないです」


 彼女が重みがあると言ったのは訳がある。

それは所謂、仕込み刀で柄の部分を捻って引くとイスカ刀の刀身が露出する様になっている。

丁度、宝石部分が柄頭になる要領である。

とは言え、今アイリーンさんが持っているのは試作品で、ロッド部分もイスカ刀部分も一番最初に入手出来る安い武器でそれをミックスして出来ている。

初代を含めた歴代キャラには、魔術を習得していた者もおり、だからと言って剣を捨てる事も選択肢になかったので両方同時に使えたら良いな的な発想から生まれた。

これを作るには修理スキルをある程度習熟している必要があった。

修理スキルがLv60になると「分解」「組立」を新たに習得出来るのだが、それを利用して複数のアイテムを分解しミキシングしてから組み立てるとあら不思議、新しいアイテムの出来上がりだ。

このアイテム生産を知っている者は、ほとんどいなかったと思う。

何故ならユニークまで修理できるNPC修理工がいる上にランクの高いアイテムを修理するには修理Lvよりも各鍛冶Lvの方が重要だったので修理スキルをそこまであげる必要がなかったのだ。

また、修理スキルが低レベルの段階で「応急処置」を習得出来た為、修理スキルを頻繁に使う傭兵でさえ高レベルにする必要がなかった。

余程の戦闘マニアでない限り・・・。

ボク(ヴォルト)のフレンドに余程の戦闘マニアが複数人いたが、ボクが修理してあげてたので恐らくは知らないだろう。


「貸して下さい」

「? はい」


 ボクはアイリーンさんから杖を預かると、絶賛試し切り中のイカロスさんの横に立ち、『ファイアボール』と言うと即座に魔法が発動し藁人形に拳大の火炎弾が直撃して爆発する。

魔力の量により火炎弾の大きさも変わるため、拳大であるボクは全然大した事がないのが分る。

ヴォルト時代に見た事のある大きさでは、最大で直径一メートルほどあった気がする。


「こういう武器ですので、アイリーンさんには合いませんよ」

「残念ですわ」


 残念ながら新たに作る事は出来ない。

何故なら、ボクの修理スキルは「分解」「組立」を出来る段階ではない。

その上、この前試してみた結果、そもそも構造を理解出来ず分解さえ出来なかった。

どうも、記憶で理解しているつもりでも、実際に今のアキラで体験し学習しないと出来ない様になっている様だ。

というか、それが当たり前なんだけどE/O時代の知識が逆に邪魔をしている感じだ。


「ボク、そろそろ上に戻りますけどお二人はどうします?」

「ご一緒しますわ」

「私はもう少し試し斬りします」


 イカロスさんと別れボクとアイリーンさんは、応接間へ戻り少し休みたいと言う彼女に客室を案内した後、ボクは自分の部屋へと戻る。

各種装備を外し普段着となったボクは、ベットへ横になり目を瞑った。


◆◆◆


「ん」


 窓から差し込む夕日の眩しさで目を覚ます。

そろそろ晩御飯の事を考えなければならない。

取り合えず、アイリーンさんの部屋へと向かう。

そして、ノックした後、部屋に入ると一糸纏わぬアイリーンさんの姿があった。


「・・・」

「ギャアァッ」


 余りにも衝撃的な惨状にボクが呆然となっていたところにアイリーンさんの野太い悲鳴で我に返る。


「す、すみません」

「謝罪は良いから早く閉めて下さいまし」


 ボクは慌てて扉を閉める。


「ビックリしましたわ」


 それはこちらのセリフである。

一瞬で精神ポイント(SP)がマイナスになった気がする。

今は現実となり○○ポイントってのはなくなったのだが、少なくとも精神が削られた事は間違いない。


「もし、貴方が男性なら殴っていたかも知れませんわ」


 死亡フラグを何とか回避したらしい。

今初めてボクが女で良かったと思ったよ。


「返事を待ってからお入りなさい。 平民貴族人種関係なしに常識ですわよ」

「すみません・・・」

「で、どういった御用なのかしら?」

「そろそろ、晩御飯の時間ですし食事に誘いに来たのですけど・・・」

「そういう事ですか・・・。 ええ、構いませんわ。

着替えますので少しお待ちになって?」

「じゃ、外に出ていますね」


 しばらく、アイリーンさんの部屋の前で出てくるのを待っているとタオルを肩に掛け汗を拭いながら何故か上半身裸のイカロスさんが来る。


「先ほど、お嬢様の悲鳴が聞こえましたが・・・、何かありました?」

「特に・・・。 それよりも何故、裸なんですか?」

「当然、汗を掻いたからですよ。 一心不乱に剣を振ったのは久しぶりですよ。 はっはっはっ」


 無駄に爽やかな笑顔を向けられボクは背筋がブルッとする。


「うっ」

「?」

「おまたせしましたわ・・・。 って、セバスチャン何故裸ですの?

食事に行きますわよ。 早く服を着てくださいまし」


 アイリーンさんは、扉を開け廊下に出ると上半身裸のイカロスさんを見て明らかに不快な表情をする。

淡々と言った感じの口調からするとやはりアイリーンさんにとってイカロスさんは執事以外の何者でもないのだろう。

ボクは別として普通のお嬢さんなら顔を赤らめるなり目を手で覆って見ない様にする。

ちなみにアイリーンさんの私服は、あの目が痛くなる様なピンク色の修道服ではなく淡い水色の修道服で過度な装飾がない。

だからと言って質素という訳でもなく、 胸辺りにアクセントとして金の刺繍がされている為、素朴という言葉の方がしっくり来る。

また、あの大胆に露出されていた太股も陰を潜んでおりボクとしては助かった。


「おっと、これは失礼」


 アイリーンさんの拳が振ってくる限度を知っているかの様にイカロスさんは、すぐに自分の部屋へと入る。

ちなみにイカロスさんに宛がった部屋は、アイリーンさんの向かい側だ。


「では、行きましょう」

「・・・」

「どうしました?」


 扉を開き出てきたイカロスさんは、何故か燕尾服を着ていた。

いや、執事なんだしそれは正装なんだろうけど・・・、何か違う。


「変ですか?」

「・・・変じゃないですけど、他に服はないのですか?」

「そうですね。 これと同じ物が二・三着あったと思いますが・・・」

「・・・はぁ、もう良いです」


 服装についてはもうこれでお終いと適当に話を切り上げ、早速自宅を出て馴染みの店へ向けう。

何かと目立つ二人を伴い歩いていると周囲から視線が痛いほど突き刺さっている様に感じた。

耳を澄ますと人の垣根から「聖女様」だの「勇者様」だのという声が僅かであるが聞こえてくる。

 大体のプレイヤーは、二つ名で呼ばれる事があまり好きではない。

ボクもそうだった。

二つ名は、プレイヤーの行動や才能スキルの依存する傾向にあるが、ユニークな二つ名だと身元を隠していても特定されてしまう場合があった。

本人は一言も言ってなくても周りのNPCが先ほどの様に呟くのだ。

ヴォルト時代、NPCが「雷迅様だ」と呟くものだから、身を隠して追跡していた賞金首にばれた事が数回ほどある。

また、ご親切に「誰が○○だって?」とNPCに尋ねると指を指してくれるというおまけ付きだ。

つまり、何が言いたいかというと二つ名は、良い事と厄介ごとのどちらも呼び寄せる傾向にあるという事だ。

まぁ、だからと言って必ずという事でもないので杞憂だと思いたい。


「ここです」


 ボクが二人を連れてきたのは表通りから少し入った所にある職人区に店を構える食堂だ。

酒の種類が少なく安酒ばかりだけど値段の割りにボリュームがあり味も悪くはない。

また、客層に職人が多い為、店は比較的に静かで落ち着いて食事が出来る。

とは言え、地元(ヴェユスに自宅のある傭兵の間)では、それなりに名が通っている為、傭兵もそれなりにいる。

それでも表通りに店を構えている食堂や酒場と比べると全然マシだ。


「何か・・・素朴ですわね・・・」

「私はこういった店、一度は来てみたかったですね」

「・・・」


 何か微妙な反応だ。

店のチョイス間違ったかな?

今月は忙しいのでこの話が今年最後になる可能性があります。

出来る事ならば年末年始の休みの時に一章を終わらせたいですね。

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