第10話・あっという間に
説明回なので読み飛ばして貰っても良いです。
次話に簡単なあらすじを入れておきます。
あれよあれよと色々している内にもう一週間が経ってしまった。
その間、何もなかった訳ではなく、それはもう色々あった訳で・・・。
スラム街から帰ったら母様の拳骨とお説教を頂き、父様から重大な話があると居間まで行くと「俺達、傭兵に復帰したから三日後には、この街出るわ」と軽く告げられ、父様と母様は四日前に旅立たった。
もちろん、前時代に使用していた武器防具と騎乗魔獣も持って行っている。
だけど、しばらく戻るつもりはないらしく残った物は全てボクの物になった。
傭兵は定住する事がほとんどない。
定住するとしたらそれは引退した時、もしくは幼い子どもがいる時、はたまた片方が傭兵でない時ぐらい。
ボクが十六歳になった事もあって二人とも復帰すると決めたら、もうここには心残りがないらしい。
目の前にいるボクの目があるにも関わらず、まるで新婚の様にイチャイチャしていた。
傭兵の仕事というより新婚旅行かと錯覚してしまった。
それはさておき、準備の為に色々悪あがきをしている時、ある重大な事に気付いた。
それは、ゲームでなくなった事で習得出来るスキル数の制限がなくなった事だ。
やろうと思えば全てのスキルを習得出来る。
とは言え、逆にゲームでなくなった事で習得には、適正に見合った時間が必要になった。
クエストやトレーナーから教えて貰ってすぐに習得出来るという訳ではない。
ちなみに、スキルは全てスキル本というものに変わっている。
また、転移前になかったスキルも多くあり、図書館で目的のスキルを見付けるのに大分苦労した。
専門店・図書館共に見た感じ、初級スキルが図書館で中級スキルが専門店といった感じで上級スキルはどちらにもなかった。
ただ、歴代キャラが今まで習得した事のあるスキルは、級に関わらず自宅の本棚や父様の書斎にあった。
習得方法は至って簡単、読んで実践して成功したら習得出来る、というか実践できた時点で習得出来たようなものだ。
そして、試しに読んで分った事は、ボクには戦闘以外のスキルに適正がほとんどないという事だ。
逆に、戦闘を中心としたスキルや流派スキルの理解度はかなり高いという事も分った。
遠征でほぼ必須と言われている『野営』と『料理』は、読み始めてから四日、実践してから三日経つが身に付きそうにない。
特に『料理』なんて壊滅的で、洗って切って盛ってドレッシングをかけて完成の筈のサラダが何故か謎の物質《鑑定不能》になる。
これじゃ、ボク一人で旅なんて夢物語になってしまう。
あと、武器防具のスキルによる制限がなくなった。
修練系のスキルがなくなったのだから、それは当然なのかも知れない。
モノによっては若干動きづらかったり重かったりするけど、大方の物は装備出来る。
歴代キャラ(父様は除く)の最終装備をいきなり装備出来るという事だ。
そういう事もあって、今、実力テストの為の装備を選定中なのだ。
最後にもう一つ、現実となったのだから生理現象も当然生まれている。
また、お風呂に入っている時、稀に自分の性について疑問に思う事がある。
ボク、実は「男」だったんじゃないかって、転移前の記憶がないので何とも言えないけどね。
逆に、ボクのちっぱいを見て「まだまだボクは成長途中」と思う自分がいる訳で本当のところどっちなのかは分らない。
まぁ、ボクの事はどうでも良いか・・・。
まずは、目先の武器と防具をどうするかだよね。
機能・実用面・性能などを考慮してデザインさえ気にしなければ歴代キャラの装備でなかなか良いのが揃っている。
特にアップルシリーズというカテゴリーの棚やマネキンには、女性用の装備が結構な数がある。
全体的に見れば可愛い系なのだけど、意味の分らない箇所に生地がなく肌が露出していたりする。
一番大事な心臓部分が守られていない服まである始末。
ボクの体型は、まだ女性というより少年に近く「む、胸もちっちゃいし」似合わない様な気がするんだよね。
髪をもう少し伸ばしたら女の子っぽく見えるかな?
まぁ、後ほど装備出来る中一番良い防具を選んで装備するとして次は武器だ。
良い武器を選ぶのは勿論重要なんだけど、スキル制限がない代わりに重量が重要となる。
すごく強い武器だけど重くて動けませんでは意味がない。
ただ、ゲームから現実になった事で実際持ってみないと扱えるかどうか重さなどを考慮した組み合わせが難しい。
そして、ここにそれらを考慮した武器が計六つ並んでいる。
一.緑龍森剣
グリーンフォレストドラゴンの仔龍を丸ごと一匹使用した贅沢かつ残酷な龍殺しの蛇腹剣。通常サイズは小剣程度だが使われている素材的に見た目以上の重さがある。
一.魔刀・黒夜叉
特別な効果は一切ない漆黒の刀身をした長刀。ただし、武器としての性能は極限まで極められており、凄まじい切れ味を持つ。
一.朧龍天照
名匠オボロの作品である『朧月』シリーズに次ぐもう一つの作品群『朧龍』の最高傑作。鏡の様に美しく輝く刀身は万人を魅了するという。抜刀術に特化した光属性の太刀で抜刀すると見えなくなる上に加速する。
一.魔破羅邪
金と宝石で装飾された細身の曲剣。指揮能力向上とカリスマが一時的に付与される。武器としての特殊効果はないものの基本性能は高い。
一.桜吹雪・一目千本
桜吹雪シリーズの後期作品の一つ。特殊効果は、他のものと同じで振るうと桜の花弁が舞う。ただ、その桜吹雪の量が倍以上あり、エフェクトダメージも歴代トップクラス。
一.白夜の戦槌試製三十八式魔導大剣
職人クラン『白夜の戦槌』の工房で造られた試作三十八作目の魔導剣の大剣。使用者の魔法力によって攻撃力が増減するのは他の魔導剣と同じだが、なくてもある一定以上の攻撃力が保障されている。また、使用者の人格属性を反映した属性に変化する特性がある。
ちなみに武器名・詳細は、ゲーム時代の事を思い出して書いている。
自分のステータスが見れないと同様にアイテムの鑑定も出来なくなってしまっているからであるが、ステータスと同様にアイテムの鑑定にも何らかの処置がされていると思う。
まぁ、推測の域を脱していないけれど・・・。
これ以外にも候補はあったのだけど、速さが重要なボクの剣術では少し重く感じたので今回は外した。
緑龍森剣と魔破羅邪がユニークアイテム。
それ以外がプレイヤー生産品で三十八式魔導大剣がレアアイテム。
黒夜叉と朧龍天照と桜吹雪がエピックアイテム。
ユニークアイテムはアイテムランク的にエピックよりも下だけど特殊な効果が付いている事が多い。
今のボクに何本も武器を装備するほどの能力はないので二本に絞る。
一本目の重量的に緑龍森剣で決まり、残り一本は黒夜叉か朧龍天照か桜吹雪のどれかだろう。
攻撃力では黒夜叉、速度では朧龍天照で、エフェクトダメージなら桜吹雪。
どれも捨てがたいけど、今回は長所を伸ばす為に朧龍天照にしよう。
それと共に防具は、数ある中でイスカ刀および抜刀術に対するボーナスのある壬生で良いだろう。
壬生は、どこかの戦闘集団が羽織っていた服装をモデルにしたと聞いている。
ただし、前は肌蹴ており、胸の部分がサラシで巻かれている以外素肌が露出している。
また、袴の左脚部分がスリットになっていて抜刀術の構えをすると脚が露出するというおまけが付いている。
その代わり軸足となる右脚の方は、鎧で防御が固められている。
若干いやかなり防御面に不安があるが、当たらなければどうという事はない。
これで武器と防具の選定は終わった。
時間も押している事だし、約束の場所へ行こうと思う。
本当は、対セバスチャンまで書いていたのですが、長くなり過ぎたので分けました