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プロローグ “死神”
少年は水盆を覗き込んだ。
そこに映っているのはまぎれもなく自分の姿である。
黒い髪に同じ色の瞳。とても整った顔立ちではあるが、どこかやぼったい。
そんな特徴を持っている彼らを、同じ天界に住む者達は“死神”と呼んだ。
死神の仕事は、天命を迎えた下界に生きる全ての生命に死を与え、その魂を次の輪廻へと見送ること。
故に、“死神”。
少年は、生まれたその時から“死神”だった。
いつの事だったのかは忘れたけれど、少年・フォグは先輩死神にこんなことを聞いた事があった。
「どうして僕ら“死神”はいつまでたっても同じ姿なのでしょう」
たしかその先輩はこう答えた。
「俺らが“死”を扱う者だからさ。“死”を与える者が“死”を望むなんて、なんだか罰当たりだろう?だから俺らは魂の輪廻には加われない。よって、成長もしないし老いもしない。」
ま、死ぬかどうかを決めるのは俺らじゃねーけどなぁ、と先輩は笑った。
あの時僕はなんて返したのだろうか。
何百年も昔の事だから、思い出すこともできない。