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1話
近くの人の音漏れが気になる。
その黄色いイヤホン、不良品なんじゃないか。
それとも朝からそんな大音量で演歌を聴くのか。
今日びの高校生には演歌が流行しているのか。
日々疑問が湧いてくる。
毎朝電車で会うその少女は毎朝毎朝大音量で演歌を聴いていた。
同じ車両の、同じ席。
田舎なだけあっていつも席は空いている。
いつもの車両の、いつもの席。
必ず彼女は僕のお気に入りの端の席に一番近いドアの前に立つ。
どれだけ席が空いていようとも彼女は座らない。
何にもつかまらないのに、よろけている彼女は見たことがない。
そして彼女はいつも同じように髪を三つ編みにしている。
僕は毎朝会うそんな彼女に興味を持った。
好意ではないからそこのところは勘違いしないで頂きたい。
え、どうして彼女に興味を持ったかって?
違う違う、演歌を聴いていたからじゃないよ。
彼女がいつもほんの少しだけ浮いているからだ。