第七話 『狂乱線』
素晴らしい景色だ・・・一面が花でいっぱいだ・・・そこを俺と美少女が走りまわっている・・・あははは~あはは~・・・でもこの少女は妃菜ではない・・・誰だろ・・・・?
「起きろぉぉぉぉぉ!!!」
激しい痛みとともに楽園から開放された・・・くそっ!夢落ちかよ!まぁ大体予想ついたけど?
「おい・・・妃菜、起こしてくれるのは嬉しい、学校で寝てる俺が悪いのは銃・・・いや、十分にわかっている。でも、さすがに起こすは起こすでも、叩き起こすは違うだろ・・・」
「だって・・みちるちゃんが起きてくれなかったし・・・たくさんしたんだよ?体だってゆすったし・・・色気だって・・・・」
「色気はいらないよ!!!!」
まぁ、いらないこともないけど?そんなこと言ったら、クラス中の男子が俺を抹殺しにくるからな。
「「「「「おい!綾乃みちる!どういうことだ!」」」」」
なんだ・・・聞こえてたんだ・・・って聞こえたのぉぉ!!!!???
その後・・・俺は、暗い部屋に連れられ手足を縛られた・・・その先の記憶はない・・・・・・。
苦痛と戦いながら、俺は学校を出た。
「はぁ・・・災難だった・・・・」
妃菜は俺と違い、帰宅部のオタッキーではないので、部活があった・・・ちなみに水泳部だ・・・。
俺は、録画していたテレビ番組があったので帰り道を急いだ・・・・。
「今日は、A○B○8とやらが出るらしいな・・・楽しみだ・・・・・っっっっと!」
俺は顔面からこけた。この展開・・・まさか!!!
その通りでした・・・そこに広がっていたのは・・・・・・
「夢・・・の中・・・・?」
そう、今朝学校で見た夢の中の楽園だった・・・・・。
と、いうことは?
「・・・・・君は?」
「私?私はねぇ、甘夏姫香っていうの!姫香でいいよ?」
「お前・・・能力者だな・・・・・?」
俺は今までたくさんの能力者を見ている・・・一瞬でわかるわ・・・。
刹那、俺の横の花が腐り、枯れていって散った・・・・・。
「こ、これは・・・・・・」
「いやぁ・・・これは能力じゃないんだ・・・これはねぇ・・『狂乱線』って言ってねぇ、私の線に触れたものは全て狂っちゃうんだよ?」
「ごめん、あいにく俺は植物を粗末にするやつは嫌いでねぇ・・あと・・・その力・・・最悪だ!」
きっと、異空間から俺の夢に線を繋げて、狂わせたんだろう・・・・・まぁ、今はそんなことどうだっていい!!
「二つの未来を切り裂け・・・闇は右へ、光は左へ・・・自らが思うままに・・・」
俺の両手に黒と白の双剣が姿を現した・・・・・。
「あぁ!君も漆黒の輪の持ち主なんだね?」
「そうだ・・・お前の狂乱線もだろ?俺の生死双刃もだよ・・・お前とは、気が合いそうだな!」
花を踏み潰し、地面を蹴った。甘夏の所へ飛ぶ・・・双剣を甘夏に向かって振るう・・・・。
が、甘夏はすぐさま線を俺の方へと飛ばした。
「そんなの・・・想定ずみさ!」
俺はさっと線を避け、横切りへ変更した・・・。よし、これで・・・だが、切られたのは「俺自身」だった・・・。
「ぐあぁぁ!!・・・そんな・・・線が・・・曲がるだなんて・・・・」
「かっこいいこと言ってたのに・・・ごめんね?」
曲がった線が、俺の腕に当たり、腕を曲げていた・・・・・。
思いもよらない行動に、地面に倒れこんだ・・・・・。
「さぁ・・・死んじゃって♪」
「・・・・へっ・・死ねるかよ!!」
飛んできた線にわざと当たってやった・・・もちろん作戦だ。俺の足が足がおかしな方向へと曲がる・・・・。それでも構わない、倒れたまま、双剣を甘夏へ振るう。
甘夏の肩口から、腰の方へと切り裂く・・・鮮やかな朱色の血が飛び出す・・・くそっ・・・切りが浅かったか・・・・。
「ぐあぁぁぁ!!!」
「どうだ?俺の漆黒の輪は?お前のより強そうか?」
倒れ苦しむ甘夏・・・だが、その苦しみは一瞬にしてなくなった・・・苦しみが笑いへと変わった・・・。
「・・ハハッ・・・ハハハッ!!」
「これは・・・!!まさか!!俺と同じ・・・・・・」
「おい、少年よ!この女は強かったか?」
さっきまでの甘夏の声と明らかに違っていた・・・低い・・・男の声・・・。
「お前・・・誰だ・・・・?」
「わかんないのか?まだまだだなぁ・・・お前もあるだろ?世界中の皆にもあるんだよ・・・心の中の闇というものが・・・俺はなぁ・・こいつの闇なんだよ・・・!!」
「俺の・・・闇・・・・」
俺の脳裏に今までのことがフラッシュバックした・・・我を失い・・・人を殺し・・・挙句の果てに大切な親友までも殺そうとした・・・忌まわしい力・・・・・。
「やめろぉぉぉ!!うわぁぁぁ!!!!!」
「そうだろ?お前もあったはずだ・・・神はなぁ・・・世界中の限られた人にその闇を開花させる、ある能力を植えつけたんだ・・・それが・・・これ、『神の堕落』なんだよ・・」
その能力を俺が持っているだって?そんな冗談よせよ・・・俺はいつだって普通の人生を望んでいた・・・普通に生活して・・普通に働いて・・普通に死にたかったんだ!!
それなのに・・・それなのに・・・神様って・・どういう人なんだろうなぁ・・・・。
「さぁ・・・死んでもらうよ?」
たしかにな・・・もう真実を知ったんだし・・・死んだっていいかな・・・?
刹那、俺の顔面に拳が炸裂した・・・・・・。
「ぐふぅ!!・・・痛いなぁ・・どうせ死ぬんなら・・痛くないほうがいい・・・・」
「すまないなぁ・・・その願いは聞けないな!お前が痛みでのたうち回っているところを楽しみたいのだ!!」
「・・・そうか・・・じゃあ、俺はまだ死ねないな!」
甘夏?は油断していたようだった。俺は今、この漆黒の輪のおかげで風のように速くなっている。
甘夏の懐に入り込んだ・・・剣の柄でみぞおちにくらわせてやった。
「さぁ・・・どうかな・・・?」
「・・・全然効かないなぁ!」
「ぐはぁぁぁ!!」
首を締め上げられた・・・なんて力だ・・・力を緩めれば今すぐにでも死んでしまいそうだ・・・。
「うっ・・・や・・めろ・・」
「さぁ!苦しめ苦しめぇ!苦しみの顔を拝んでやる!!」
最悪の死に方だな・・・こんなんで死ぬぐらいだったら、妃菜に殺してもらった方がマシだった・・・ミオに撃ち殺してもらうのもいいな・・・・・。
と、その時銃声が鳴り響いた・・・・・。
「ぐうぁぁぁ!!!誰だぁぁ!!」
「・・・ハハッ・・またミオに助けてもらったのか・・・・」
俺の少し後ろの方でミオが立っていた・・・。良かった・・・これで一安心だな・・・・。
「みちる・・・私一人では無理・・・・」
「ああ・・・ちょっとがっかりだけど、わかってるよ」
「でも・・感謝してね?誰のために来ているのか・・・・」
「ああ、ミオの大好きなアイスたらふく食わせてやるよ」
二人は顔を見合って、微笑む。惚れてしまいそうだな。
「絶対に・・・殺してやる!!!」
全力で駆ける・・・。甘夏の目の前に立ち、顔面に渾身の蹴りをお見舞いしてやった。
「お前は・・・みちるより先に殺しておかないと!!」
ガンガンッ!ミオの失却乃銃から赤色の魔法弾が発射される。
「甘いな!!」
甘夏が結界を張った・・・。魔法弾が弾かれる・・・はずだったがミオの魔法弾はその結界を貫いた。
「ぐあぁぁ!!な、どうして!!!」
「貫通弾・・・」
「さっすが♪ミオはすげぇや!」
「あっ・・・ありがと・・」
顔を赤らめるミオ・・・単純だな・・・。魔法弾をくらった甘夏が立ち上がる・・・。
「てめぇらぁ・・・許さん・・・」
「お前・・・相当なタフやろうだな」
「でも・・・私たちには勝てないよ」
俺とミオは背中を合わせ、並んだ。そして甘夏へ剣と銃を向けて言う・・・・。
「「最弱が揃えば・・・最強にだってなれる!!」」
ついにみちるの忌まわしい力についてわかりましたね!
それと・・・感づいてるかも知りませんが・・・神の存在についても・・・