第四話 『最初の真実』
あれからと言うもの・・・まともに授業を受けていないな・・・・。
そろそろちゃんとしないと、成績が下がってしまう・・・下がったら、妃菜になんてバカにされるか・・・。
「・・・・おい・・・綾乃・・・」
全く・・・かのみさんはなんなんだ!あれから、行って気づいたが、かのみさんの家はあの事務所なのか?我が家のように扱いすぎだ!毎回行く人に身にもなってみろ!
「綾乃・・おい、お~い・・・」
あと・・・あの小、ミオか。ミオも俺と同じ『失われた記憶』の一人なのだろうか・・・・?だから、かのみさんのもとにいるのか・・・・。
「おい!綾乃!綾乃みちる!」
「はいぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」
「さっきから何考えてんだ!授業に集中できないのか!!」
「・・・・すいません・・・・」
さっきから呼んでたのかよ!全然気づかなかった・・・ってか、誰か教えてくれてもいいだろ!妃菜!!お前は俺の隣だろ!
「・・・おい・・・妃菜!なんで言ってくれなかったんだよ・・・・」
「・・・だって、なんか考え事してたんでしょ?・・・」
どうして俺の周りのやつらはこうも空気が読めないのだろうか・・・KYかよ!!
それから一日中、クラスから白い目で見られた・・・・・。皆俺のことがそんなに嫌いか?
なんとか、地獄の学校を終えた。今日もあそこに行くか・・・・。
「あ~おい!妃菜、俺ちょっと行くところあるから!」
「また?・・・・・うん、わかった・・・」
あれ?なんか一瞬悲しい顔をしたような・・・まぁ気のせいか!もう暗いしな。
この先に広がる光景を見て、もう一度来たい!というものはいないだろう・・・。
俺は、世界一嫌いな扉をゆっくりと開けた・・・・・。
あれ?誰もいないのかな?電気が点いていない・・・・・・。
たしか、電気はこの近くにあったハズだ・・・この前事前に確認しておいた・・・。
そして俺は電気を点けた・・・。
「うわぁっ!」
「うわっ!ってこれ何回目ですか!?さすがにもう驚きませんよ!!!」
「えぇ~みちるんならぁ~何度やっても驚くと思ったのにぃ~」
「今、遠まわしにバカにしませんでした・・・・・?」
「で、今日はどおしたのぉ?」
なんで無視するんだよ!最近なんか俺への扱いが皆ひどいなぁ・・・・。
「あの、仕事の件ですよ。秩序を乱す・・・」
最近、奇怪な事件が多発している・・・・。帰り道に突然いなくなるという・・・・。
かのみさんいわく、その時だけ、世界に若干の歪みが起こるらしい・・・・・。
「あぁ~あれねぇ、やっぱ秩序を乱す者がいるみたいよぉ~」
「やっぱりですか・・・ってことはいつか戦うときがくるんですね?」
「そだねぇ~まぁ、いつかっていうかぁ~今なんだけどぉ?」
「・・・・・・・はぁ?」
みちるはすんでのところでかのみさんの喉笛に飛び掛るところだった・・・・。
「いやぁ、もうねぇ~そいつの居場所掴んだのよぉ~だからぁ、明日決行ねぇ~」
「あんた、自由過ぎるだろ!!!!!!!!!!!!!」
つい、心の声が出てしまった。明日ってなに?まず明日の意味を忘れてしまった。
「はぁ・・・で、相手は?」
「まだわかんないのよぉ~でもぉ、みーちゃんもつけるからぁ安心してぇ~」
「わかんないのに戦えと?でもまぁ・・・ミオがいるだけまだ・・・」
「多分大丈夫だからぁ~」
「はいはい・・・・今日はもう疲れたんで・・・帰ります・・・」
「じゃねぇ~気おつけてぇ~」
いきなり、明日戦えといわれても・・・・・。
このまま歩けばいつか電柱にぶつかるのではないのか、というほど下を向いて歩いていた。まぁ、何度かもうぶつかったけど?
「相手かぁ・・・まぁ情報からして、能力者かな?・・・・っっっと!」
何かにつまづいたようにこけた。
ヤベェ、俺だっせぇ~。驚いたまま、顔を上げた。
みちるがいた場所は、街灯に照らされたコンクリートの上ではなく、黒い煙に包まれた怪しい世界だった。
「なんなんだよ・・・・ここ・・・・」
煙のせいでこの世界がどこまで続いているのかはわからない。
「またかよ・・・いや・・・なんか・・この世界は違う・・・・」
そうだ・・・あいつの能力は扉の向こうや、くぐったりするとき、空間の変わり目に連れて行くことしか出来ない。つまり自分から連れて行くことは出来ないのだ。
でも、今回は違った・・・・。明らかに、『空間の変わり目ではなかった』
刹那、爆風がみちるを襲った。なにかにつかまっていないと今にも飛ばされそうだ・・・・。
風を防ぎながら、みちるは見た。長身で、『赤い目』をした男を・・・・。
「・・お前・・誰だ・・・!」
「迷走人形・・・我に従え・・」
瞬間、俺の体が自由を効かなくなった。まるで、操られた人形のように赤い目の男に向かって走って行く。
自由も効かないのに勝てるはずがない。
「グッ!ぐはぁ!うっ!」
「さぁ!踊れ我が奴隷よぉ!!」
笑いながらみちるを殴り続ける・・・・。
俺はちょっと無理をした。骨が砕ける音がした。
あいつの能力『迷走人形』の効果がゆるむ、一瞬のうちに無理やり唱えた。
「二つの未来を切り裂け、闇は右へ、光は左へ・・・自らが思うままに・・・」
よし、この『生死双刃』があれば、まだなんとか戦える・・・。
って、あれ?・・・いつもならあるはずの双剣が俺の両手に見当たらない・・・・。
「ど、どうして・・・・・・」
「無駄無駄無駄ぁぁぁぁ!!!」
みぞおちに激痛が走る。脳が揺らいだ・・・・。
なんで・・・なにが起こってる・・・・・。
「どうしたぁ!もう終わりか?なんだぁ、雑魚じゃんかよ!」
もうすでに満身創痍だ。その上、双剣も使えない。体が操られている。
------絶望的・・・残るは死のみ---------------
振り下ろされる拳・・・最後なら、もうちょっと遊びたかったかな?恋もしたかった・・・・。
だが、振り落ちたのは拳ではなく、鮮血だった。
「グッ・・・誰だ!!!」
そこにいたのは・・・ミオ・ロゼックだった。
片手に銃を持ち構えていた・・・きっと今のは彼女の銃だろう・・・・。
「みちる・・・ホントにバカだね・・・・」
ああ、バカさ・・・でもあいにく、体の自由が効かな・・・あれ?動く・・・!
喜びと同時に頬に何かが当たる。
「忘れ物・・・それがないと戦えない・・・・」
ミオが投げたのは俺のネックレス。学校のときはつけていない。このネックレスは、死んだ父さんが俺のために残してくれたものらしい・・・やっぱり記憶はないが・・・・・。
ネックレスをつけた・・・・。
「どういうことだ?」
「まだわからないの・・・・?」
そういって、右手を差し出した。彼女の右手にはブレスレッドがつけられていた。
「私も、あなたも、力が使えるのはこの漆黒の輪のおかげ・・・」
「えっ?・・・あとで詳しく教えてもらう!」
そういうことか・・・なにかが足りないと思ったんだ・・・。
ちょうどいい具合に赤い目の男が立ち上がる。
「二つの未来を切り裂け、闇は右へ、光は左へ・・・自らが思うままに・・・・」
両手に、闇と光の双剣が現れた。
ついに出た!!
赤い目の男です!!