第十二話 『再会 ~後編~』
それからのみちるは無敵だった。
まるで昆虫とでも闘っているかのような強さだった。
「さっきまでの仕返しでもさせてもらうとするかぁ!!」
「き、急になんだ・・・・」
神崎の姉妹は、雅が怪我を負ったところを美々が治すというのを繰り返してなんとか形勢を保っていた。
だが、今のみちるはどの攻撃だって亀のような速度で見える。何度立ち上がり、何度立ち向かったところで抵抗することは不可能だ。
「なんだその拳は?さっきまでの気迫はどうした?」
「ダメだ・・・全然読めない・・・」
「ザコ雑魚ざこ・・・神が創った記憶はいまだに誰かの記憶の中で残されるという・・・もしかすると それは俺かも知れないなぁ?そうか?お前は神はいい人だと思っているんだな?だから雑魚なんだよ 冷酷で卑劣・・・だから神なんだよ?わかったか?」
「黙れ・・化物がぁ!!」
もう、雅に闘う気力はない。それでも闘っている・・・なぜだ?無理だとわかっているのに・・・俺は今こんな状態だ。気持ちは普通だが全く違う生態と化してしまっている。
「まだやるか・・・そろそろ時が来るんだ・・・死んでくれぇ!!」
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁっぁ!!!」
みちるは真正面から立ち向かってきた雅を片手で吹き飛ばす。
「くっ・・・そんな・・あの人さえいれば・・お前なんか・・お前なんか・・お前のせいだよ!お前の せいで・・あの人は変わった!!あの人さえいれ・・・・ッ!!」
「ッッッッッ!!!!」
刹那、雅の身体に赤黒く不気味に輝く剣が貫いた・・・・。
みちるはこの剣に見覚えがあった。というか、ひと時も忘れたことがない。忘れるわけがない・・今でもその時のことを思い出して夜も眠れない日がある。
「か・・・皆無・・・・?」
傷口を押さえるわけもなく・・ただ一点を向いたままその名前を呼び続ける雅に美々が駆け寄る。
「・・皆無さぁん!ひどいですよ!私たち仲間でしょう!!」
「誰がいつお前らなんかと仲間になったって?ガキが・・・」
俺は思わず普通に戻っていた・・。無敵モードの俺がビビる相手は一人しかいない・・・。
「よぉ?みちる・・・元気だったか?」
「・・・な、なんで・・・なんで・・あんたが・・・」
「なんだ?不満か?お前に会いに来たんだよ?感謝しろよ」
「そんなこと言ってない!!なんでお前が・・・生きてんだよ!!!」
そうだ・・・みちるが唯一、尊敬していて、絶望した人間・・・「綾乃皆無」
ある理由から、殺したはずの・・・兄!!
「あんなので死んだと思ってるのか?俺の演技はそんなに凄かったか?まぁ正確には治してもらったん だけどな?ほら、あそこで嘆き悲しんでいるガキだよ・・簡単に騙せたよなぁあんときは・・」
「てめぇ・・・よくそんな面下げてやってこれたな・・・」
「ごめんなぁ・・・弟よ・・・今日はこんな雑魚たちの相手をしにきたわけじゃないんだ・・・どう だ?一緒に『神の会』にこないか?心斬だっているぞ?」
「黙れ・・それ以上喋るな!俺はお前の言うことなど今までもそしてこれからも聞くつもりはない!」
「そうか・・・それは悲しいな・・・また・・お前と殺しあうことになるんだな・・・」
そう、この兄の能力が「空間変化」・・・俺が一番嫌いで、世界最悪の能力・・・・。
「悲しいよ・・・我が弟よ・・・兄としてのことをしたまでなのに・・・ホントに・・悲しいよ!!」
「俺も悲しいよ、お前が・・・こんなに落ちぶれたことにな!!」
━━━攻撃的空間創作・・・神は怒り狂う・・我が罪の愚かさに・・━━━
━━━二つの未来を切り裂け、闇は右へ、光は左へ、自らが思うままに━━━
二人の兄弟は、自らの思うまま、傷つけあうこととなった・・・・・。
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次回はみちると、皆無の昔を書きます。