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悪女はあなたの破滅が見たいだけ  作者: 巻村 螢


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6/20

切り替えていきましょう

 祝福祭を終え王妃宮へと戻ってきたリナフィアは、「疲れたからしばらく一人になりたい」と侍女や衛兵を遠ざけた。


 そうして一人向かった先は、王宮書庫。

 政治や王家に関する様々な文献や書類が、所狭しと積まれている。恐らく人の出入りが少ないのだろう。入り口近くはそうでもなかったが、部屋の奥へ行くほど埃っぽくなっていく。


 扉を閉めてしまえば、静謐な空間の出来上がりだ。そこでリナフィアは窓台に腰を据えると、手当たり次第に本を捲っていった。


 光の中から人が現れる現象。

 聖女が同時代に複数現れた場合。

 異世界人の来訪の対処事例。


 しかしいくら探しても、現状と同じ事が過去に起こったという記録はない。


「マリアを現時点で排除するのは無理なのね――っと」


 祝福祭は、悪夢――一度目の人生と同じ情景を寸分違わずなぞっていた。


「だとすると二度目のこの人生……この先に起こることを知っている私が有利だわ」


 二度と同じ過ちは犯さない。


『君は王妃宮に引きこもってばかり。その上俺をいつも見下して馬鹿にしていた。そんな君を愛せという方が無理だろう。俺が彼女に惹かれるのを罪というのか?』


 それは離婚を告げられる直前、彼がいかにリナフィアを愛さずマリアに惹かれたかを被害者面で語った言葉だった。


「――っ自分だけがつらいとでも言いたかったわけ? 私が……っ、どんな思いで王妃でいたか……」


 そして、脳裏に浮かぶ自分の最期の瞬間。

 思わず広げた本に置いていた手に力がこもる。薄い紙がクシャと皺付いた。


「現状マリアをどうこう出来ないのなら、私があの最悪の最期を迎えるのだけでも回避しないと」


 悪夢を、いや、前回の自分を思い出せば首が疼いた。今世では味わったことのないはずの痛みが、忘れるなとばかりにリナフィアの首を締め付ける。


「っ私が……何をしたっていうのよ……!」


 聖女と告げられた日からずっと、リナフィアに自由などなかった。突然始まった王妃教育。変わってしまった周囲の目。聖女として求められる献身性。それでもリナフィアはしがみつくようにして全てを乗り越えてきた。


 恋を知らないうちに決められたルーベントとの婚約の時でさえ、彼を愛していこうと心に誓ったくらいだ。

 なのに、この仕打ちはなんなのか。


「……まあ、悲嘆しても終わったことだし、どうしようもないわね」


 ケロリとしてリナフィアは感情を切り替える。


「そんなことより、今よ今。大事なのは」


 リナフィアは時間も忘れ、ありとあらゆる書庫の本を読みあさった。

 そうして、ようやく僅かな光を見つける。

 本に記されたその歴史は、リナフィアに希望を抱かせるものだった。


「これ! これなら上手くすれば……!」


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