お前達の番だ
「東部レイザール州ノドリオ、ローチス。ロス州ミュゲリア、バーラント――」
「何だ、突然――!?」
唐突に始まった、地名の連呼にルーベントが戸惑いを露わにしていると、リナフィアがポツリと数字を呟いた。
「十分の一」
「な……何を……?」
「――南部バント州バント、ラウラン州チーチェ、ヘリオス、トロイス、ローグ――」
「おいっ、リナフィア! その男は、君は何を言っているんだ!? 今すぐに止めろ!」
状況が理解できず、ルーベントは声を荒げるが、その間も男の声は止まらない。
「――バルディオ、ケッカス州アイリオン、サリュア――」
「十分の三」
「おいっ!」
ひたすら地名だけを呟く男と、時折何の割合か分からない言葉を呟くリナフィア。しかもリナフィアの表情は、先程まで肩を震わせていたのが嘘と思えるほど、実に堂々としたものである。
「十分の五」
一切の説明なく続く状況に、ルーベントは額を押さえ、何の茶番だ、と呆れたように嘆息する。
「だから、その数字は一体何だと――」
「これで半分」
「は?」
そのリナフィアの言葉で、ようやくそれが何を意味しているのかルーベントは気付いた。
「――っまさか……まさかっ! まさかお前っ!? リナフィアッ!」
ホールに響く激声に反して彼の顔は青ざめていく。
「ど、どうしたのですかルーベント様ぁ……? あの、何が――――っきゃあ!?」
事態が把握できずにオロオロと周囲を見回しては、ルーベントの腕を引っ張ることしか出来ないマリアを、ルーベントが邪魔だとばかりに払い落とした。床に尻餅をつき、滑稽に転がるマリアに周囲から失笑がおこり、彼女は顔を真っ赤にして床で震える。
対してルーベントだが、自分の未来の妻を嗤われても、一切気付かないほどに激昂していた。
ニヤリ、とリナフィアの口端が吊り上がった。
「やめろッ! このような馬鹿げた事が認められるわけないだろう! 条件は無効だ!」
顔を真っ青にして、震える指をリナフィアに向け騒ぎ立てるルーベント。同意を得ようと周囲を見回すも、誰もルーベントに賛同する貴族はいない。
そうしてようやく、男が最後の地名を読み上げれば、リナフィアが「十分の九」とピリオドを打った。同時にルーベントは膝から崩れ落ちた。腕は力なく身体の横で垂らされ、薄く空いた唇は震えている。
リナフィアは、初めて見せるであろう極上の笑みで、慈愛に満ちた女神のごとく両手を広げた。
「さあ、離婚しましょうか」
――二度目はあなた達の番よ。
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