もう、どうだっていいわよね
どうして、こんなことになったのかしらね。
愛さなかったあなたが悪いのか、愛されなかった私が罪なのか。
いいえ……もうそんなことはどうでもいいわよね。
だって、これから始まるんですもの――断罪が。
その一声は、和やかだった場を、一瞬で凍てつかせるには充分だった。
「国王ルーベントは、王妃リナフィアに離婚を要求する!」
突然の男の言葉に、ホールの者達は時が止まったかのように動きを止め、強制的にホール中央に注目させられる。
そこでは、大輪のバラを彷彿とさせる赤髪の美女と、腰に小柄な少女をくっつけた錆色の髪をした美男が正対していた。
美女をリナフィア、美男をルーベントと言い、二人はこの国の国王夫妻である。
「正聖女であるマリアへの数々の悪行、しかと私の耳にも届いているぞ。君に少しでも反省の色があれば、離婚だけは回避してやったが……どうやら君は、よほど王妃という地位にしがみ付きたかったらしいな」
ルーベントはチラと、隠れるようにして腰にしがみ付いているマリアへ目を向けた。彼の蜜色の目は、夫婦であったリナフィアですら向けられた事もないような、甘く緩みきったもの。
その光景を見ていられず、リナフィアは思わず顔を伏せてしまった。
「国とマリアの身の安全のためにも、リナフィア……君には離婚して王妃の座を退いてもらう!」
毅然として言い放ったルーベントに、周囲からチラホラと「おぉ」と賞賛の声が漏れていた。しかし、大半の貴族達は固唾を呑んで、ホールのど真ん中で繰り広げられる国の主達の離婚劇を眺めるばかり。
出席者達もまさか、サウザード王国の建国祭というめでたい日に、国王が王妃に離婚を突き付けるなどとは思わないだろう。
皆が息を殺して見守るに徹している中、ルーベントは指先で大司教を呼びつける。
「ちょうど良い。大司教、証人になってくれ。――『宣誓。この場をもってルーベント・サウザードはリナフィア・サウザードとの離婚を申請、同時に神の決定に承諾するものとする』」
「ミスラ神の御名の下、確かに宣誓を承りました」
これでルーベントは、離婚証書にサインしたも同然となった。
大司教の視線が次にリナフィアに向いた。おのずと、周囲の視線も全てが彼女へと注がれる。
(ああ、どうしましょう。肩の震えが止まらないわ……)
「……っ分かりました」
ニヤリ、とルーベントの口角が上がった。
「確かに、マリア様のほうが私よりも……ずっと陛下とお似合いですもの」
悲しみに耐えるように俯き、震えるリナフィアをルーベントは憐れとは思えど、可哀想とは思わなかった。
そうしてリナフィアも離婚に同意し、ルーベントはこれで全て片付いたのだと思った。
そう、思っていたのだが――。
時を置かずして、ルーベントは顔を青くする羽目になる。
突如、リナフィアの横に進み出てきた男が取り出した紙束を一枚ずつめくり、何かを読み上げはじめた。
本日は11時に3話まで、18時に4話、21時に5話を更新します




