2話 質問と疑問
キーン コーン、カーン コーン
終業の鐘が鳴り響き、ホームルームも終わり生徒が下校を始める。
金髪のハーフツインをなびかせながら、いつものように中庭へと向かう宇ノ中さん。
中庭にあるベンチには遠目から見てもわかる銀髪の女の子が座っている。
宇ノ中さんはその女の子に向かって軽く手を降る。
それに答える様に銀髪の女の子、伊勢川さんが手を振り返す。
宇ノ中さんは伊勢川さんの隣に座り喋り始める。
「伊勢川さん、このベンチ好きだよね」
伊勢川さんが前を見ながらそれに答える。
「うん、この中庭のベンチちょうど人が来なくて静かだから」
「あれ、じゃあ私ここに来ないほうがいい感じ?」
宇ノ中さんが質問する。
「宇ノ中さんは、なんていうか」
「私と同じ感じがするから嫌じゃない」
伊勢川さんが答える。
「ほぅ、よくわからないが喜んでいいやつかな」
宇ノ中さんが微笑む。
「宇ノ中さんてさ……」
そんな宇ノ中さんに伊勢川さんが問いかける。
「うん」
宇ノ中さんが相槌をうつ。
「宇宙人なんだね」
伊勢川さんがストレートに聞いた。
「……ぇ」
宇ノ中さんが伊勢川さんの方を向く。
「UFO、迎えに来ていたから」
驚く様子もなく前を見て話す伊勢川さん。
「ぇ、えとあれは……」
「そう!ドローン!」
宇ノ中さんが身振り手振りでドローンを模した動きをする。
「最近のドローンは人が乗れるほど高性能なんだね」
伊勢川さんは落ち着いた顔で宇ノ中さんを見る。
「ぁ、えと、ほらT○Y○TA製だから」
「万博とかでもあったから、ね~」
宇ノ中さんが即席の言い訳を続ける。
「そっか、じゃあそういう事にしておく」
伊勢川さんはまた前を見ながら話す。
「……」
それを見た宇ノ中さんは少し唸って考えた後、話し始めた。
「う~ん、まいっか~」
「伊勢川さんにはいつか話すつもりだったし~」
そう言ってベンチから立ち上がり、
「そうです、わたしが宇宙人です!」
なぜか胸を張って伊勢川さんにいい放つ。
「そっか、だからこの間あんなこと言ったんだね」
伊勢川さんは再び宇ノ中さんの方を見て話す。
「あれ、あんまり驚かないんだね」
宇ノ中さんが再びベンチに座る。
「宇ノ中さんは、なんだか私と同じ感じがしていたから」
冷静に話しているがちょっぴり嬉しそうな伊勢川さん。
「そっか~、ということはこの間言っていたみたいに伊勢川さんも異世界人だったりして~」
「そんなわけないか~」
宇ノ中さんが喋っていると、伊勢川さんが
「異世界人だよ」
そう言った。
「……」
「……まじ?」
宇ノ中さんが目をまん丸くして聞き返す。
「うん」
伊勢川さんが静かに返す。
「おじさんから見た異世界人とかではなく?」
宇ノ中さんが再度聞き返す。
「うん」
伊勢川さんは再び静かに返す。
「ぇえぇぇえっ!!?」
「異世界って、あのファンタジーな?」
宇ノ中さんがベンチから立ち上がる。
「うん」
伊勢川さんはずっと冷静に返答する。
「剣とか魔法とかのあの?」
宇ノ中さんが興奮気味に話す。
「まぁ、だいたいそんな感じかな」
伊勢川さんはそう言って微笑む。
「すご~ぃ、本当に居るんだ異世界人って」
宇ノ中さんが感心しながら話す。
「いや、それを言ったら宇宙人も本当に居るんだってなるよ」
伊勢川さんが軽くツッコむ。
「確かに」
「というか、私がここに居るんだから間違いなく宇宙人は存在するのだ!」
宇ノ中さんが謎に自信満々で喋る。
「ということは」
「伊勢川さんは魔法とか使えちゃう系?」
宇ノ中さんが興味津々で質問する。
「まぁ、一応」
伊勢川さんが答える。
「おぉ~、炎とか雷とか操ってドカーンとかしちゃうやつだね!」
宇ノ中さんが身振り手振りで嬉しそうに表現する。
「この世界は魔素が少ないから、そんな大技はなかなか使えないと思う」
伊勢川さんが冷静に返す。
「なんだかこじらせた中学生みたいな言い訳だ」
宇ノ中さんがそう言ってニヤける。
「いや、私は中二病男子じゃないぞ」
伊勢川さんは宇ノ中さんを横目で見て話す。
「宇ノ中さんこそ、宇宙人なら目からビームとか出せるんじゃないの」
伊勢川さんが宇ノ中さんに反撃する。
「ぁ~流石に目からビームは出ないなぁ」
「光線銃なら護身用に持たされたけど」
宇ノ中さんはそう言って亜空間収納から光線銃を取り出した。
「殺傷能力は低いけど、一時的に行動不能とかに出来る」
「スタンガン?みたいなものかな」
光線銃を前に向けて構え宇ノ中さんが話す。
「って、宇ノ中さんアイテムボックスのスキル持ってるの?」
珍しく伊勢川さんが驚いた返事をする。
「あいてむぼっくす?」
「ぁあ、これは亜空間収納だよ~」
「なんというか、宇宙超科学的な?」
宇ノ中さんの方が冷静に返す。
「まぁ、どんな仕組みかはよくわからないけどね~」
「通学用の鞄とか入れれて便利なんだよね」
「伊勢川さんも通学用の鞄とか持ってないし」
「亜空間収納使ってる?」
宇ノ中さんが伊勢川さんに質問する。
「うん」
「アイテムボックスのスキルだけどね」
伊勢川さんも謎の異空間から魔法の杖を取り出した。
「おぉ~、一気にファンタジー感が出てきたねえ」
宇ノ中さんが嬉しそうに話す。
「いや、宇ノ中さんも似たような物を使っているし」
伊勢川さんがツッコむ。
「あ、そっか、にひっ」
宇ノ中さんが微笑む。
「アイテムボックスのスキルはレアスキルだから、所有者があまり居ないの」
「宇ノ中さんが持っているのは以外だった」
そう言って伊勢川さんは宇ノ中さんを見る。
「まぁ、確かにこの亜空間収納も適性が無いと使えないらしくて、うちの両親とかは使えないんだよね~」
「おじいちゃんは使えたみたいで、そのおじいちゃんから貰った物なんだ」
宇ノ中さんは空を見ながら話す。
「まぁ人前では使うなって言われているんだけどね」
宇ノ中さんがそう言うと
「思いっきり私の目の前で使ってるね」
伊勢川さんが返事する。
「にひっ」
宇ノ中さんはニヤケ顔でこう言った。
「伊勢川さんは特別だから」
「そう、なんだ」
伊勢川さんもちょっぴり照れた顔で微笑む。
「そういえば、なんで伊勢川さんにUFOで帰っているってバレしたんだろう」
伊勢川さんは少し呆れた感じで
「思いっきりUFOに乗っていったし」
「あれでバレない方がおかしいかと」
その返答に対し宇ノ中さんは
「あれ?認識阻害機能使っているから、普通の人には見えてるけど見えてない的な事を」
「パパが言っていたんだけれど」
それを聞いて伊勢川さんは手を口元に持ってきた後、考え込む。
「私も認識阻害魔法を使っているから、それが影響しているのかも」
「ぇ、じゃあ前からUFO見えていたの?」
宇ノ中さんが聞き返す。
「うん」
伊勢川さんが冷静に返事する。
「あちゃ〜」
「思いっきりバレていたのか」
「あんまり効果無いのかなぁ、認識阻害ってやつ」
宇ノ中さんが肘をついてうなだれる。
「私が特殊なだけで、効果はあると思う」
伊勢川さんが励ますように答える。
「まぁ、確かに認識阻害ってのを切り忘れた時」
「自動ドアが反応しなくなった事あったし」
「一応効いてはいるのか」
宇ノ中さんがちょっぴり元気になって話す。
「ぁ〜、最後までバレないと思ってたのにな〜」
宇ノ中さんがそう言うと
「最後?」
伊勢川さんが問いかける。
「うん、最後」
宇ノ中さんは普通に返す。
「どういう……事?かな」
伊勢川さんが少し心配そうに聞き返す。
「えっとね〜」
「UFOでの送り迎え」
「今日で最後なんだ」
宇ノ中さんがサラッと話す。
いつも静かな伊勢川さんが
「ぇ!?」
そう言って宇ノ中さんを見つめる。
「引っ越しするんだ」
宇ノ中さんが普通の笑顔で伊勢川さんに話す。
「……急、なんだね」
平静さを装いながら静かに話す伊勢川さん。
「前から決まっていたんだけどね〜」
「ようやく手続きが完了して」
「今日で終わりになっちゃった」
宇ノ中さんは元気な口調で返事する。
「……そっか」
伊勢川さんが哀しげな顔を見せないように前を向いたまま答える。
空を見ると迎えのUFOが来ていた。
「迎えも来たし」
「色々伊勢川さんの事を知れて良かった」
「これで最後だけれどもありがとうね」
宇ノ中さんがベンチから立ち上がる。
伊勢川さんは少し哀しそうな顔で
「また、会える……かな」
そう言うと
「うん?そうだね」
「また明日〜」
大きく宇ノ中さんが手を振る。
「うん?また明日?」
伊勢川さんが首をかしげる
「そう〜、送り迎えUFOは今日で最後」
「明日からは歩きなんだ〜」
宇ノ中さんがニッコリ微笑む。
「ぇ!?」
「でも引っ越すって」
伊勢川さんが宇ノ中さんに問いかける。
「うん、この近所に引っ越すから」
「歩いて通学なんだ」
宇ノ中さんはニヒっと微笑む。
「だから伊勢川さん、また明日ね〜」
そう言って宇ノ中さんは大きく手を振り、中庭に着陸したUFOに乗って帰って行った。
「……そっか」
「また明日も宇ノ中さんに会えるのか」
伊勢川さんはそっと微笑み、転移ゲートを召還して帰って行った。




