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第七話 冒険者ギルド

 服屋を出た私たちは、冒険者ギルドに向かうことにした。

「エラーラさん、この世界のお金について教えてほしいです。この服、金貨2枚以上してましたよね……」

 道中、サオリが震えた声で聞いてきた。

「ローブ二着とベスト、シャツ、ズボンを1着ずつで金貨二枚は大体そのくらいかなって感じだよ。古着ならもう少し安いけどね。この世界には七種類の硬貨があって、下から鉄貨、銅貨、小銀貨、銀貨、小金貨、金貨、大金貨がある。鉄貨十枚と銅貨一枚、銅貨五枚と小銀貨一枚、小銀貨二枚と銀貨一枚、銀貨十枚と小金貨一枚、小金貨十枚と金貨一枚、金貨十枚と大金貨一枚が同じ価値になる。けど、大金貨はほとんど使わない。街の商店を見てても基本金貨十枚とかって書いてあるよ。言葉だけじゃ難しいよね。家に帰ったら見せるね」

 サオリはふむふむと聞いてくれているが、だいぶ難しいと思う。長く生きていると貨幣も変わってくるから、覚えるのに毎度苦労した。今の七種類の硬貨は珍しくここ百五十年くらい変わってないから、このまま変わらないでほしい。

「なるほど。一円、十円、五十円、百円、千円、いちまんえん、十万円っぽいな。入城料が銀貨五枚だったから…五百円くらいか。服代は金貨二枚と小金貨五枚。二万五千円か。確かに。そんなものかな。大体わかりました!でも硬貨は見ておきたいです。あとで見せてください」

 ……え?わかったの?理解早すぎない??サオリ、頭いいんだなぁ……。



 冒険者ギルドに着くと、サオリはおおー!と歓声を上げた。異世界には冒険者ギルドどころか、冒険者という職業そのものがないんだそう。それでどうやって肉を得てるんだろう。異世界、わからない。

 扉を開けると、そこは酒場のようになっていた。ひぃぃ。筋骨隆々な男の人がいっぱいいるぅ……。

 怖くて咄嗟にローブの帽子を被った。ちょっと視線を逃れられている気がする。

 サオリはこれが冒険者ギルドかぁ、とつかつかと入っていった。

 お、置いていかないでぇ、とサオリのローブを掴むと、不思議そうな顔をされた。

「怖いんですか? 」

「ぼ、冒険者ギルド、来たことなくて……」

「あぁ、なるほど。一緒にいきましょ」

 サオリ、たくましい。

 長い長い時間を経て、ようやくカウンターへと辿り着いた。多分、実際は一分も歩いていないんだろうけど。

 カウンターをちらっと見ると、そこにも筋骨隆々の男の人がいた。

「よお、ねぇちゃん。なんか用か? 」

 ひ、ひぃ。まともに正面を向けない。サオリは怖くないの?

 上を見上げて、サオリの顔を見ると、にこにこしていた。怖くないんだ……。

「冒険者登録をしたいんですけど、ここでできますか? 」

「あぁ、そりゃ隣の窓口だ。こっちは魔物の買取窓口だぜ」

「あー、そうでしたか。申し訳ございません。教えていただきありがとうございます。……隣ですって。行きましょう」

 コクコクと頷き、離れようとすると、窓口の男の人にそっちのねぇちゃん、声をかけられた。ビクッと飛び跳ねてしまった。

「な、なんでしょう? 」

「なんだか怖がらせちまったみたいだったからな。すまねぇな。冒険者連中は顔は怖いが、中身はそんなに怖くないやつの方が多いぜ」

 彼はニカッと笑って、さぁ行った行った、と手で促してくれた。いい人だ……。

 隣の窓口にいたのは、女性だった。

「ここで冒険者登録ができるって聞いたんですけど……」

「はい。できますよ。こちらにお名前と年齢をお書きください。これと一緒に冒険者登録料として、小金貨三枚いただきます」

 渡された木の板には名前、年齢、と書かれている。サオリはサラサラと名前と年齢を書き始め……なかった。

「これ、苗字って書かない方がいいですかね? 」

 コソッとサオリが聞いてきた。

 そうだ。サオリに伝え忘れてた。気がついたサオリすごい。

「そうだね。この世界では、苗字があるのは貴族だけなの。だから、名前だけの方がいいと思う。よくわかったね」

「へへ、エラーラさんが苗字のことすごく気にしてたので、もしかしたらと思って」

 なるほど。私が呼び方をオーニシからサオリに変えたことが引っかかってたのね。

 そんなこんなで、サオリは名前と年齢を書き終え、小金貨三枚と共に提出した。


名前  サオリ

年齢  19


「小金貨三枚、確かにいただきました。サオリさん。十九歳ですね。少々お待ちください」

 受付の人はそう言って奥へと行った。

 待つこと数分。戻ってきた受付の人は一枚のカードと針を載せたお盆を持っていた。

「こちらがサオリ様のギルドカードとなります。ここに血判を押すことで登録完了となります」

「わかりました」

 血判かぁ。自分で針刺すのが怖くて、毎回人にやってもらってるなぁ。サオリは躊躇なく刺しそうだなぁ。

「あの、エラーラさん。針刺してもらえませんか?」

「……え、いや」

 サオリ、ここまで楽しそうに来てたじゃない!最後の最後に針で怖がるの!?

「そこをなんとか!自分で自分を刺すのって怖いじゃないですか! 」

「嫌だよ!自分の血判押すのも怖くて人に刺してもらってるのに、他人に針を刺すだなんてできない! 」

 けどサオリも引かない。

 言いあっていると、受付の方から声がかかった。

「あの……私が刺しますよ」

 サオリのお願いします、私の嫌だ、という押し問答が終わらないと思ったのか、受付の人が申し出てくれたらしい。

「お願いします! 」

 サオリはスッと針を差し出して、斜め後ろを向いた。私もそれに続く。別に私が刺されるわけじゃないけど。人のを見るのも怖い。

「行きますよ。さん、に、はい。終わりましたよ」

「ありがとうございます……」

 サオリは針を刺した親指を揉んで血を出し、無事血判を終えた。

「お疲れ様です。これで登録完了となります。最初ですので、1番下のアイアンランクからとなります。こちら、二月の間に依頼を受けなければ、冒険者になる意思なし、と見なされて登録抹消されます。早めに多くの依頼をこなしてカッパーランクに上げることをお勧めします。そうすると、登録抹消までの期間が半年になりますので。アイアンランクからカッパーランクに上がるには依頼を二十個こなすことが必要となってきますので、頑張ってください。アイアンランクの依頼はあちらのボードに貼ってあります。そちらから好きな依頼を受けてください」

「わかりました。ありがとうございます」

 私たちは、アイアンランクのボードに移動した。

 薬草摘み、ゴブリンやコボルトの討伐……色々あるんだなぁ。

 サオリは薬草摘みの依頼を取っていた。よく考えたら、武器持ってないから討伐ができないよね。

 こうして、私たちは冒険者ギルドを後にした。

 もう日が暮れかけている。

 街での用事は全て済んだので、私たちは家に帰ることにした。

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