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第二話 ようこそ我が家へ

 草原を越えた先の森の中。誰も来なさそうなところに私の家はある。実際誰も来ないんだけど……。悲しきかな。

「ここが私の家だよ。ようこそ我が家へ……」

 バタン。

 オーニシに入ってもらおうと扉を開けたけど、一瞬、ほんの一瞬見えた、とてもじゃないけど人様を迎え入れるには向いていない散らかった部屋を前に、思いっきり扉を閉めてしまった。

 オーニシは見てないよな……。ちらっと様子を伺うと、ぽかぁんとした顔でこちらを見ていた。

 見えちゃって思考停止してるのか?!それとも見てないのか?!どっちだ?!

 普通に考えて初めて来る人の家がめっちゃ散らかってるの見たら引くよね!!人が来る可能性考えとけばよかったよおぉぉ。どうしよう、家の中散らかりまくってるのに人呼ぶんだとか言われたら……。

「あの、どうかしました? 」

「ひぃやぁっ! 」

 わたわたといろんなことを考えていた私にオーニシの声がかかる。びっくりして変な声出しちゃったよ……。オーニシもびっくりしてる……。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。

 大焦りで返答を考えた私はなんとか言葉を絞り出した。

「い、今、家の中、見えてない……? 」

「へ?エラーラさんが一瞬で扉閉じちゃったし、見てないですよ? 」

 ホッ。良かった。見えてないならそれでいいんだ。オーニシに入ってもらう前に片付けさせてもらおう。

「ちょっとだけ片付けてもいい?来客なんて初めてだから、ちょっと散らかってて……」

「ああ!いいですよ!待ってます! 」

 急な来客ですみませーん、とオーニシはへらっと笑っている。しかもちょっと横向いてくれてる。オーニシ、神。

 ありがとう、といって家に入りかけて思い出した。

 この辺、たまーに魔物が出るんだった。別に私だけなら気にならないんだかど、武器なんて持ってなさそうなオーニシからしたらたまったもんじゃないよね。

「たまーにだけど、この辺、魔物が出るから一応オーニシに結界魔法かけておくね。襲われたらたまったもんじゃないし」

 わぁ!ありがとうございます!とオーニシはにっこり笑顔だ。私もつられてふふっと笑ってしまった。

 オーニシに結界魔法をかけて、今度こそ家の片付けにはいった。




 ふぅ。なんとか片付いたかな。本は本棚に収めたし、見せられない書類も隠したし、食器類も洗ったし。……全部魔法だけど。

 よし。オーニシを呼ぼう!

「オーニシ。準備できたよ! 」

 扉を開けると、オーニシが私の飼い猫のアークと遊んでいた。

 ニャーンゴロゴロ、とアークはお腹を出している。

 なんか私より懐いてる気がするぞ……。

「おぉー、よしよし。お前胸に三日月があってツキノワグマみたいだな。ツッキー、よしよし」

『ツッキーなんてアホそうな名前ではない。我はアークだ』

「わわっ、猫が喋った!」

 アークはツッキーと呼ばれた途端、起き上がってオーニシに怒りの猫パンチをくらわせはじめた。だけど、結界魔法に弾かれてオーニシはノーダメージだ。

 全く当たる様子のない猫パンチに、つい吹き出してしまった。

 それを聞いた二人が顔をあげた。

「あ!エラーラさん!片付け終わりました? 」

『エラーラ!なんだこの無礼な小娘は! 』

 パァと笑顔を見せたオーニシと変な名前で呼ばれて不服そうなアークがこちらに寄ってきた。対照的で面白いな。

「終わったよ!さ、どうぞ!……アークはお客さんに向かって無礼とか言わないの」

 扉を開けてオーニシを迎え入れ、アークには釘を刺す。フンッと全く反省の色がない顔で部屋に入って、定位置の本棚の上に丸まってしまった。さらに機嫌を損ねてしまったらしい。

 まぁ、すぐに機嫌も治って降りてくるだろうけど。

「あの子、エラーラさんの飼い猫だったんですね。変な名前つけちゃってごめんなさい」

 オーニシがしゅんとしてる。

「オーニシが気にすることじゃないよ。多分すぐに機嫌も治るわ」

『我はそんなに単純ではない』

 ……。ふてくされちゃって。まったくもう。オーニシを庇おうとしたのに今のアークの一言で台無しだ。

 オーニシがさらにしゅんとしちゃってる。小さめの声でごめんなさいと聞こえた。

 アークの耳がピクッと動いたから多分聞こえたんだろう。

「と、とりあえず、服を着替えよう?着替え、そこに置いてあるし、あっちの部屋使っていいから!私はお茶を入れておくね! 」

 気まずい空気を変えようと、とりあえずオーニシに着替えてもらうことにした。

 あ、はい、とオーニシは服を持って部屋に入っていった。

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