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復讐の結果と終わりの時


 そのころ、王都では大きな動きがあった。第一王子の婚約者がほぼ決まった形になったのだ。お相手は三大侯爵家のひとつエルランド侯爵家のご令嬢であった。つまり、ルートヴィッヒ侯爵家の令嬢であり、クリスティアの妹であるモニカは選ばれなかったのだ。


 ルートヴィッヒ侯爵家の当主、またクリスティアの父親であるダルセルはその話を聞いてから、王都にある自身の屋敷に戻ってきた。彼は明らかに不機嫌そうであり、また不愉快そうであった。実質彼はエルランド侯爵家に政治的に負けた形になったのだから。

 彼は不機嫌そうにしながら、使用人に酒を用意させると、自分の書斎へと戻った。彼は酒を飲みながら、エルランド侯爵家への不満や王家はなぜうちを選ばなかったのかなどを愚痴っていた。


 しばらくして、彼のもとに一人の人物が尋ねてくる。それはルートヴィッヒ侯爵夫人であるマルガであった。モニカの母。クリスティアの継母であった。


「あなた。聞きましたわ、モニカは選ばなかったそうね」

「ああそうだ、くそったれが」


 そう彼は言うと机を思い切り叩く。その様子を見ながら、マルガは笑う。


「なぜ笑っている、マルガ。うちはこれでしばらくエルランド侯爵家にうだつが上がらなくなるのだぞ」

「あなた、確かに第一王子の件は残念でしたわ。でも、まだ手はあるわ。エルランド侯爵家とうちは三大侯爵家よ、例えあちらが次期国王の外戚になったとしても。家格はほぼ同じ、なら」


 マルガの話を聞く途中で、彼は気づく。この国では三大侯爵家が大きな力を持つ。大きすぎる力を今は持っている。王家に匹敵するほどの力を。となればそのうちの二家が協力すれば、対抗するには十分すぎる力を持つ。


「モニカをアルラッド侯爵家のものと嫁がせるか」

「そうよ、アルラッド侯爵家は力を持つキリング卿が先日亡くなり、また第一王子の婚約者にも選ばれなかった。となればアルラッド侯爵家とうちは対等以上に、いえうちが有利に話を進められる」


 ダルセルは笑う。アルラッド侯爵家には今モニカと年齢が近い男がいた。婚約者もまだ決まっておらず、優秀な人物であり、また彼は次男であり、当主にはならない。うちの次期当主として十分すぎるし、今後もルートヴィッヒ侯爵家を守り、繁栄させてくれるだろう。そうダルセルとマルガは考えた。


「確かにそうだ、アルラッド侯爵家と話をしよう。うちの次期当主問題も解決だな」

「それに、あなた、これでようやくあの不愉快な子を殺せますわ」


 マルガは愉快そうに言う。ダルセルはそれを聞いて、確かにと思った。もうクリスティアに価値はほとんどなくなったのである。モニカは第一王子の婚約者にはもう選ばれない。そうなれば、クリスティアはいらないのであった。クリスティアは病気でなくなったことにするほうが、もう今後良い理由のほうが多くなった。


「確かにそうだな。もう奴に生きてもらう必要はないかもしれんな」


 ダルセルも愉快そうに、マルガの意見に同意すると外にいる執事を呼ぶ。そして、執事に命じた。


「ロドリグに伝言だ。いつでも殺せるように準備をしろ、と」


 執事はかしこまりました、と言って下がる。執事がいなくなった後、ダルセルとマルガは笑いながら乾杯をする。彼らにとってクリスティアは不愉快な存在で、邪魔な存在であったのだ。だから、彼らは歓喜していた。ようやくクリスティアを処分できそうになったことに。


 ダルセルとマルガはクリスティアの母を嫌っていた。


 ダルセルとクリスティアの母は昔からの約束による婚約によって、結婚した。政略結婚だった。だが、ダルセルはクリスティアの母を嫌いだった。黒髪の地味な女性であった。ダルセルの好みではなかったし、それにクリスティアの母はダルセルに小言を言うこともあった。それはダルセルの無駄な出費が原因であったが、ダルセルには不愉快であった。


 そんな彼女が出産と同時に死んだ。しかも産んだのは娘。それはダルセルにとって好機であった。実は以前より交流を深めていたマルガとの結婚の口実になると思ったからだ。


 そして、ダルセルの思惑通りに、マルガと結婚することができた。子どもが生まれればいつでも処分するつもりであった。


 だが、二人の間に生まれたのは一人の娘。ダルセルとマルガは大いに困った。


 そんな中、クリスティアは闇魔法に目覚めた。ダルセルとマルガの二人にとっては渡りに船であった。それを口実にいかようにもできたからだ。


 そして、すぐに二人は森の奥深くに彼女を追いやった。もしもの時のために、生かせておきながら、会わなくていい。二人にとっては最高であった。


 そんな中、ついに彼女を生かす理由はなくなった。彼ら二人にとって最高の瞬間であった。忌まわしき娘を処分のできるのだから。


 レイン、いやカーヒルによるキリング・アルラッドの殺人。それはクリスティアを追い詰める一因となった。だが、きっとそれは関係ない。クリスティアが二人に処分されることは決まっていたようなものなのだから


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