秘密
宇宙の秘密に気がついて
全てわかったような顔をして
冷めた目をして生きる
神目線で世界を眺めて
人間の愚かさから目を背け
自業自得と他人事にする
答を知っていても
誰彼かまわず教えるなんて狂気の沙汰
預言者は黙る
未来は選べるのだから
自分で撒いた種に悩み苦しむ人の子の
至極当然の事態に阿鼻叫喚する悲劇、いや喜劇
くだらなくてため息をつく
どうしたものか
崖っぷちへと進む小羊を上から見下ろして
あなたならどうする?
ライ麦畑のつかまえ役
ホールデンはそういうものになりたいと言っていた
(邦題『ライ麦畑でつかまえて』より)
大好きな作品
若き日の私はホールデンに共感したものだった
今の私はどうしたいのだろう
介入しないのが、宇宙の原則
生きる秘訣は、人の荷物は背負わないこと
彼らが、彼らの荷を負うのも手放すのも彼らの自由だ
彼らが崖へと進むのも彼らの選択だ
自ら心身を蔑ろにするのも
無知とはいえ、寿命を縮めるのも
知らぬが仏?
知らん顔の神だ
求められなければ与えられない
求められても与えても、受け取られない
結局、本人次第
己のことは己にしか決められない
全てを見ていても、何もできない
そして私は、目を閉じ口を閉ざす
心まで閉じそうだ
人よりよく見える目を持つ者は
幸せなのか不幸なのか
憂いてはいない
そっと目を閉じるだけ
人生ゲーム
楽しけりゃいいじゃん
夢中になったもん勝ち
そんな風に割りきるしかない
人のことはいいから自分を生きろって?
そうだね
仙人は山奥に隠って瞑想してりゃいいのか
ライ麦畑で夢中で遊ぶ子どもたちが
道を踏み外さないように見張ってつかまえる人なんて
そんな仕事はやっぱり、ないよね?
私もライ麦畑のつかまえ役になりたかったなぁ
実際はライ麦畑でボーッと立ってるだけ
見てるだけなんて、意味ない
ウロウロするだけ
木偶の坊
宮沢賢治くらいにはなれるのかも
自分を生きることしかできない
自分を生きることが、この世界のバランスを担う役割を果たすこと
人を助けるなんておこがましい
わかっていたはずなのに
歯がゆい思いが、そんな現実を私に見せるのか
ならば私は自分で自分の目を塞ぐ
耳も声も
私の気づきは繰り返し書いてきた
筆を折るまではないが
筆を置きたい気持ちである
近頃は気づきを得ても、筆をとる気にならない
響かない声は、空虚に掻き消される
晩年は水際で水の流れでも眺めているのが心穏やかな過ごし方なのだろうか
人も水もあるがまま流れゆく
諦めの境地にも似た思い
今は雲の流れる空を眺めよう