智
智は薬であり毒である。
ほんの一瞬だけハイになれるが、その後はずっと緩慢な苦しみが続く。一瞬の飛躍のためだけに、延々と代償を支払い続ける。……なんと言って良いか分からない。本当に分からない。適切に形容する言葉が見つからない。イルカのお腹の中にも、遠い遠い星々の間にでさえも。ただただ引きずり続けるのだ。何を引きずっているか分からないまま。何故引きずっているのかも分からないまま。時折辞めたくなるが、何をどう辞めれば良いのかすらも分からない。一つ確かなことがあるとすれば、これ以外の仕方など到底望むべくもないということだ。低く。何よりも低く。地を這うように。何はともあれ飛び続けるのだ。それが贖罪となろう。重荷を背負うことはたいてい耐えきれない。それでも構わない。たとえ耐えきれなかったとしても、地に伏せれば良いのだ。ぐうたらと寝そべるのだ。昼寝するのだ。どうにもならない苦悩はそのうちどこかへ行ってしまうだろう。それらはしばしば霧散するのだ。跡形もなく。怯える私を嘲笑うかのように。それが分かっているから、我々は眠るのだ。お利口なメロディー。アンパンマン。愛と勇気だけが……。目を休めたまへ。耳を休めたまへ。忘れたまへ。頭を休めたまへ。ぐるぐると同じところを回る。回る。回る。こんなはずでは……なかった? 水平線までずっと続く線路。重たい頭がぐらりと傾く。レールを枕にしてやおらに目を閉じる。波の音が私の耳に憑依し、君臨する。寄せては返す波。そう、これはまるで我らの……。パレード。祝祭日。神輿。
こんな事になると知っていたなら確実に扉に手をかけなかったであろう。あの日の蛮勇を恨みたくもなる。アダムとイブ。それでも。それでも楽観的であれ! 智に際限などあるはずもないのだから。




