1.0.2.地下都市 -2-
#>舞波ノ部屋ハ用意済ダ。オ前ノ隣。空イテタロ?
"空いてたんじゃねぇ。ソーサの連中にやられたんだろうが…にしてもよ”
#>ナンダ?
"随分気前が良いじゃねぇの。なんだ、どういう心変わりだ?”
#>時期ニ思イ知ルサ
"ふーん、そう。まぁ、いい。鍵とかは?どうすりゃいい?管理はそっちだろ?”
#>ソレハ、部屋ニ付イテカラダナ…テレスクリーン越シニ話ソウ
"わかった”
入り組んだ街を歩いて俺の住処の近くまでやって来た時。ハンドラーから告げられた知らせを聞いて、俺はわずかに口元を緩ませた。互いに得体の知れない存在…といえど、ここに来るまでの様子を見る限りでは、舞波を1人にしておくのもどうかと思っていたからだ。
(この様子を見る限り…数日持たずに攫われちまいそうだものな)
やってきた当初こそ、物珍しそうな…どことなく楽し気な様子で周囲を見まわしていた舞波だったが、住処が近づいてきた今では、すっかり怯えてしまって、俺の横から離れようとしない。話を聞く限りでは、こんな世をまるで知らないというのだから無理もないことだが…それにしても、舞波の俗世知らずがここまでだとは思わなかった。
(行ってみたいもんだね。どんだけ平和な世界なんだか)
「さて、そろそろ着くころだぜ」
ここまで、暫し会話がなかった俺たち。目的地に近づいてきてきて、ようやく俺が口を開くと、舞波はピクッと肩を震わせて俺の方に顔を向ける。
「そ、そうか。で…衣食住と言ってたけど…これから僕はどうなるのかな」
「あぁ、伝手を辿って探ろうと思ってたが…その苦労は今しがた無くなった」
「え?」
不安げに…少し声を震わせて尋ねてきた舞波に、ハンドラーとの決定を告げると、彼女の顔色は驚きとともに少しばかり明るくなる。これは邪推だが…彼女はこれから何か、身に悪いことでも起きると思っていたのだろう。俺は、そんな彼女の様子を見て僅かに目を細めた。
「俺の部屋の、隣の部屋が空いててな。そこを使っていいんだと」
「……いつ決まったの?」
「さっき。言ってなかったか?脳幹通信が出来るって。俺は常に雇い主と繋がってんのさ」
「言ってたっけ…でも、どのみち僕の知識に脳幹通信なんてのは無いけどもね」
「意外だな。機械の類には驚かないから、舞波の世界にもそういうのがあると思ってたぜ」
そう言いながら、俺は視線の先に見えてきたアーチ橋を指さした。今歩いている、狭い通路を過ぎた先に、アーチ状の橋が見えている。それを潜って…すぐ横の階段を上がって、アーチ橋を過ぎれば、俺の住まうアパートはすぐそこだ。
「あの橋を渡れば到着だ」
「…ってことは、あの建物?洒落てるね。おとぎ話に出てくる主人公の家って感じ」
「見た目だけだな。他所に比べりゃ…剥ぎ取られてないだけのことさ」
「…なるほど」
言葉を重ねつつ、橋を潜って…1人が通れるだけの階段を上り、石を積み重ねて作られたアーチ橋の上を渡っていく。小さなその橋を渡り切れば、道は、その先に見えるレンガ造りの四角い建物にしか繋がっていない。
「2階だ」
俺は舞波にそういって、アパート外側に露出した…ボロボロな階段を上がっていく。カンカンと足を踏み込む音を響かせながら階段を上りきると、暗く粗末な明かりがついた廊下を進み、最奥の部屋の1つ手前の所で足を止めた。
「ここ?」
「俺の部屋だな。一旦上がってくれ。部屋の鍵とかそういう諸々の準備がいるんでな」
「わかった」
「準備自体はすぐ終わる。終わったら舞波の部屋に入って…だな…そっからはどうすっか」
そう言いながら、部屋の扉に手のひらを当てて施錠を解除してノブを回し、重厚で分厚い扉を開いて中に入る。今朝以来の自分の部屋。狭い玄関があって…玄関の向こうにはベッドと、丸い窓が見えた。玄関の向こうは寝床…あぁ、狭い部屋だ。その部屋の隅に、申し訳程度に水回り設備がまとめられた部屋がくっついている。
「凄い作りだ…宇宙船の中みたい…そして、案外綺麗だね。男の1人暮らしにしては」
「…?ま、置くものなんて最低限で良いからな」
部屋に入るなり、舞波は地下都市にやって来たような表情を取り戻した。物珍しそうに部屋を見回して…そして…
「ん?これは…テレビかな」
玄関からは見えない…寝床からは、どこにいても見れるという位置に掛かったテレスクリーンに舞波が目を向けた時。
「ハジメマシテ、斑舞波」
真っ暗だったスクリーンがひとりでに明かりを纏い…スクリーンにハンドラーが映し出された。
「コレカラ少シノ間…イヤ、場合ニヨッテ末永ク…舞波ノ"ハンドラー”ヲサセテモラウヨ」
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