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廃村場末の純金少女  作者: 朝倉春彦
Chapter2:大地に縛られし少女
11/23

1.0.1.地下都市 -1-

「…しかし意外だったよ。この体が、こうも僕にピッタリだったとはね!」

「素体ってのは、そういうもんだ。そういう作りになってるのさ」

「1から10まで…何もかも変わらないとは思わないじゃないか。なんせ…」

「ま、それはそれって事にしとけよ。この世はな、下手に本性は出す所じゃないんだぜ」


 退廃的な廃村を出て山を降り、いよいよ地下都市に繋がる草原までやってきた俺と舞波。草原の中にポツリと建つ古びた建物の中に入っていくと、俺はいつものようにマスクを取ってため息を一つついた。


「そういえば…ヤナギン。君は外でマスクをしたがるけれども…理由を聞いてなかったな」


 地下へつながるエレベーターを呼び出して出来た、ちょっとの合間。


「とてもじゃないが生身の人間が吸える空気じゃねぇからな。長く吸ってりゃすぐに死ぬ」


 舞波の問いに、何の考えもなく答えてみせると、舞波はあんぐりと口を開けて固まった。


 #>悪手ダロ。恰好ヲ見ロ、恰好ヲ


 "あー…”


 ハンドラーから呆れ口調の指摘を受けて我に返る。俺の横に立つ舞波はワンピース姿なのだ。ワンピースに麦わら帽子…そしてそれに似合わない山岳用のブーツ。そんな姿をした舞波は、暫し唖然としたのち、やがて喉を鳴らして愉快気な顔を浮かべて見せる。


「くつくつくつ…やっぱ僕は人じゃないのかな。この世界の括りだと」


 おかしいと思わなかった俺も俺だが…よくもまぁ、ここまで歩いてきておかしいと思わなかった。こんな、生身で外を出歩けなくなった世界で…なんで舞波は飄々としていられたのか。放射能に汚染されすぎた星…そうじゃなくとも、もはや空気は俺たち人間にとっては毒といえるほどに汚染されているのだ。そりゃ、少しの間なら大丈夫なのだが…あの廃村からここまでの道のりで、平気なわけがない。


「今更だが…苦しくないのか?」

「全然。むしろ、良い空気だと思った位さ。山々の空気は美味しかったじゃないか」

「舞波、それ、街で言いふらすなよ…」

「そうしておこう。君の反応を見てたら理解できるよ。僕がおかしいことくらいね」


 舞波がそういって、ちょうどやってきたエレベータの中へ入っていく。一歩遅れて俺も中へ入りスイッチを押すと、エレベーターは不愉快な振動とともに地面の中へ沈んでいった。


「さて、ここからは暫く黙っておこう。口を開くたび誰かを絶叫させてしまいそうだもの」

「そうしてくれ」

「でも、これからどうなるんだい?僕はとりあえず…ヤナギンが住んでる街に行くとしか聞いてないんだが」

「まずはそれだけで十分だろ。衣食住…それを確保しないと始まらない」


 舞波からの問いに、適当に答えた俺は、彼女の前に手の平を突き出して、何かを言いかけた口を塞ぐ。直後、エレベーターの振動はスーッと静まってから動きを止め、エレベーターの扉が静かに開いた。


「こっから先は俺みたいなお人よしばかりじゃないんだ。調子、合わせられるよな?」

「少し不安だけどね。でも、僕は猫じゃない。なんとかなるさ」

「なんだよネコって…」

「おっと…こっちの話にしておいてくれ」


 開いたままのエレベーターの中で言葉を交わしたのち、俺を先頭にして地下都市へと足を踏み入れた。地上とはうって変わり、暗くジメジメした岩に囲まれた光景は舞波にとって新鮮に映るらしい。俺の横に来た彼女は興味を隠さぬ様子でキョロキョロと目や首を動かして周囲を見まわしている。


 "そんなに珍しい光景か?今日日、どこかしこもこんなもんだろうに”


 #>ソウダナ。オ前ニ取ッテハソウナンダロウサ


 "なんだよ。アンタだって同じ側だろ”


 #>同ジ…ダガ、オ前ヨリハ年寄ダ。マダ外デノ暮ラシモ知ッテルンダゼ


 "ほぉ…初耳だ。随分と年増なんだな”


 #>口ノ減ラナイ野郎ダ


 キョロキョロと、目に映るもの全てに興味を引かれている様子の舞波を引き連れつつ、脳内でハンドラーと適当な会話を重ねる俺。エレベーター前の階段を降りて、いくつかの路地を越えて…この地下都市の中でも指折りの大通りにまでやって来た時。明るい表情を浮かべていた舞波の顔が急に曇りだした。


 #>マ、現実ヲ見タナ


 ハンドラーの言葉が全てを物語る。岩壁を削って出来た地下迷宮…人間が作った醜い巣穴…その奥地で何が行われているのか。舞波は大通りの一角で行われている競りの様子を見ると、ツンツンと俺の腕を突いて、そっと俺の方へ身を寄せた。


「ヤナギン…あれって…まさか…人売り…じゃないよね?」

「そのまさかだ。ああ見えても奴らはまだマシなんだ。買い手は名のある連中なんだから」


 少々上ずった声で尋ねてきた舞波に、淡々と答えてやる。俺は腕にしがみつくように身を寄せてきた彼女の体を黙って受け入れながら…今の俺に言える言葉を投げかけてやった。


「俺と舞波の感覚はそうズレてないはずだ。その上で言わせてもらうが…潔癖になりすぎるなよ?感覚のままに生き延びられる程、優しくはないんだ。残念ながらな」


お読み頂きありがとうございます!

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