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familie  作者: 遠藤 敦子
familie Ⅰ
3/11

3

 お兄さんには大学時代から付き合っている2歳下の彼女がいた(お兄さんは彼女との結婚も考えていたらしい)けれど、彼女は大学卒業後に就職した職場の同僚と相思相愛になり、お兄さんは振られてしまった。そのこともお兄さんのうつ病を加速させたきっかけになったそう。

「お兄さんにもそんな辛い過去があったんですね……。そんな自分勝手な理由で振る彼女とか、別れて正解だと思いますよ」

なんと言って良いのかわからず、こう返すので精一杯だった。大学卒業後は正社員として働き、結婚して子どもを産むという王道の生き方から外れてしまったとしても、しあわせに生きる道はあることを知る。ベンチで話した後、私はお兄さんと別れて家に帰った。

 「凛、きょうの面接どうだった?」と帰宅するなり、2歳上で社会人2年目の姉の春妃に訊かれる。「きょうもダメだったし、落ちてるかも」と私が言うと、「最近就活で思い詰めてるようにしか見えないし、沖縄とか行ってリフレッシュしてきたら?」と勧められた。

「リフレッシュって言われても、私就活してて時間ないのに……。就活休んで良いの?」

「休んだだけ時間が無駄になるって思ってるかもしれないけど、休む時は休んでまた再開すれば良いよ。友達がどうとか関係ないし、それで焦ることはないから」

さすが私の姉だ。時間が無駄になる不安とか、友達と比べての焦りとか、私が考えそうなことをよくわかっている。思い詰めてもどうにもならないので、私はゴールデンウィークに1人で沖縄旅行することにした。



 事前に下調べしたこともあり、沖縄ではたくさんの観光地を回る。プール付きのホテルだったけれど、1人旅ということもあって女性2人(彼女たちもそれぞれ1人旅だそう)と相部屋になった。いづみさんという女性には25歳で結婚したいという希望があったそう。しかし23歳から付き合っていた彼氏ーー付き合いだした時から25歳で結婚したいと話していたけれど、24歳の誕生日にプロポーズがなかった。結婚についてどう思うか訊くと相手が激昂し、別れ話になった。しかも後に、相手がアプローチを受けていた職場の女性の家に行っていたことが発覚ーーと別れてしまい、自暴自棄な気持ちもあり1人旅に踏み切ったらしい。

 もう1人の(こずえ)さんという30代女性には、2つの悩みがあるそう。1つ目は新卒から同じ職場で10年以上働いているのに出世できず、仕事内容が合っていないのではと思っていることだ。男性同期は他部署のチーフになり、女性同期も来年度に出世しそうだという噂があるという。

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