ゴーストタウン
おそらく、これはコンビニだったのだろう。
おそらく、これは床屋だったのだろう。
そうして、これはおそらく町役場だったのだろう。
暗闇の中、月明りでしか確認できないが、どの建物も特徴的で、見た目ですぐにわかる。
こんな時に限って、妙に天気が良い。
誰も住んでいない町だと聞いていた。
そんな町は、インフラは関係が壊滅している。
聞いていた通りだ。
住む人間が居なくなれば、色々なものが必要なくなる。
電気、水道、ガス、電話、何もない。
車なんて、通るはずがない。
ここには、文明、文化が存在しない。
最高だ。
最高の場所だ。
アスファルトのいたるところから突き出た雑草。
倒れた街路樹。
何色にも光ることはない、真っ黒の信号機。
月が流れてきた雲で隠れると、辺りは本物の暗闇に包まれる。
星明かりは、弱々しく、光の意味をなさない。
物の陰影を曖昧の中、転ばないように注意深く、所々割れて穴だらけになっている舗装道路を歩く。
たまに風が吹いて、音がするだけ。
とても静かで、今の自分には丁度良い。
ここでいいや。
俺は道の真ん中で横になる。
もう、何も俺を繋ぎ止めるものは何もない。
怖いものなんて、何もない。
不意に暗闇の中、黄色い目が光る。
「だ、誰だ?」
大声を上げていた。
だが、黄色い目は素早くその場からいなくなった。
野生の動物の類か。
思ってる傍から、声を上げてしまった。
自分で自分が馬鹿らしくなった。
別にいいさ。
後は死ぬだけだ。
1年後。
その町は、長い行列が出来ていた。
皆、ひっそりと、誰にも迷惑を掛けずに死にたいのだ。