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上手くいくのでしょうか?

ご覧になってくださり、ありがとうございます。

 作品が最高のハッピーエンドを迎える。

 主人公として記されている聖女の幸せ、それすなわち憎々しき悪役令嬢の処刑。


 魔法少女は悪役令嬢アグリから本を借りていた。

 納屋の中、消費期限をとっくに過ぎた魔力鉱物ランプの明かりはあまりにも頼りない。


「今後のために一応お聞きしておきたいのですが」


 魔法少女は早速本を開いて内容を読もうとしたところで、いくらか困ったようにアグリの方を見やる。


「どうしてあなたは、納屋なんかで寝泊まりしてらっしゃるのです?」


 古き良き納屋、とりあえずうら若き乙女が寝泊まりするための空間であるとはとても呼べそうにない。

 ……というか、イヌになった俺でも拒絶感を抱きそうになる。

 魔法少女は横になってまぶたを閉じればどこでも寝られる。

 だが温室育ちな俺にはいささかこの空間は落ち着かない。

 ましてや。


「令嬢たるあなたが、どうしてお屋敷ではなく納屋に追いやれているのでしょう?」


 俺を含め魔法少女は、アグリがこの場所に腰を落ち着かせている状況がまだ理解できていない。


 問われた。


「よくぞ聞いてくれたわ」


 すでにある程度の段階は通り過ぎたとでもいう風に、とてもうれしそうに、自分置かれている状況を他人に解説している。


「わたしはすでに、悪役令嬢として処刑されていることが決まりつつある。……いいえ、あともう少し、もう少しでわたしは聖女の前で威勢よく殺されるはずなのよ」


 彼女が語るには、どうやらこのお屋敷ではこんな出来事が起きていたらしい。


「人気投票第一位のキャラが殺害されたの」


 どうやらいま、魔法少女が読みふけっている恋愛ファンタジー小説は、アグリがもともといた世界でそれなりの人気を誇っていたらしい。

 ウェブ連載から書籍化マンガ化、アニメは一期二期ともに大好評、映画化から果ては実写映画の企画も噂されていたらしい。


「実写化は個人的には受け付けないけどね」


 それはともかく、アグリは語りを続ける。


「小説の大人気キャラ、最終的には主人公と結ばれるヒーローが……」


「んぎゃああああああっ!!!」


 しかし魔法少女の叫び声が彼女の言葉を遮る。


「なんてことしてくれるのです?! ネタバレしないでくださいよっ!!」


 言っている場合だろうか? 女一人の死ぬか生きるか、尊厳ある死が懸っているのだが。

 俺と大体同じような、あるいは方向性だけが似通った別意見をアグリが抱いている。


「そんなに怒ることないんじゃない?」


 アグリはさっさと魔法少女をなだめようとしている。


「ネタバレがなんだというの? 大事なのは結末に向かうまでの家庭とかで、最後にどうなるかなんて一番どうでもいい所じゃない」


 これはいけない、価値観の相違が生まれている。 

 目的、仕事を終わらせる前に戦争を起こしている場合ではないのである。

 俺は、ワワン! とひと鳴き、いきり立つ魔法少女をいさめる。


「んぐるるる……」


 怒りを抑えきれない、それでも本を手放すことをしない。

 そんな魔法少女に、アグリは時間を惜しむように事情の語りを再開する。


「人気一位が殺されたのはわたしの部屋、つまりアグリの自室の中。殺された当初、彼はわたしの部屋に訪れる約束をしていた」


 つまり、とアグリは人差し指をピン、とたてる。


「彼を殺した可能性が一番高いのは、生前彼と逢瀬を重ねる約束をしていたわたし、アグリ。そうして、わたしは周囲の監視の中で納屋に閉じ込められているというわけ」


「ああ、それで」


 魔法少女は猫の、猫に類する魔物としての特徴の耳をピクピク、と動かしている。


「なんだか先ほどからひそひそ、ひそひそと貴女の噂話が聞こえてくるものだから」


 声を潜めようともしないのは、魔法少女にとって監視役の彼らは対して議題にするほどの事柄でもないということになる。


 というのも、その事実はアグリにもすでに既知の事柄であった。


「貴女を強姦しようとした輩も、このお屋敷に使えている監視役であったのですか?」


「ええ、そうね」


 アグリは平静を装っている。

 嘘をつくのは、どうやら彼女のある種の固有スキルになっているのだろうか?

 魔法少女は悪役令嬢に騙されている。

 実際は心臓が半鐘のようになっている。


 だが動揺していることを知ったとしても、魔法少女にはあまり関係の無い事実でしかなかった。


「それにしても」


 魔法少女は疑問を抱く。


「そのような危険な目に遭っても、どうして従者であるモモイロさんは助けなかったのです?」


「ああ、それは」


 理由を、アグリが魔法少女に説明しようとした。

 そこへ。


「お嬢さま!!」


 バターンッ!!

 と、モモイロが納屋の扉を、ものすごい勢いで開けていた。

 ほったて小屋並みの強度しかない室内が、雑な開閉にミシミシときしんでいる。


「んぎゃあああっ?!」


 突然の騒音に魔法少女がびっくりぎょうてんしている。


 しかしモモイロは魔法少女のことなどなどまるで関心が無いようであった。


「お嬢さま、お洋服を脱いでくださいまし」


 そう言いながら、モモイロはとても慣れた手付きでアグリの衣服を脱ぎ払っていた。


 あっという間に下着姿になる。


「んにゃにゃっ?!」


 俺の股間が熱くなるよりも、それよりも早くに魔法少女が大興奮しているのであった。

読んでくださり、ありがとうございました。

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