第4話 ゆとり世代、なめんなアアアアアアアア!!
ショウタは、ロックゴーレムが発射する石つぶてを回避しながら考えた。
アニメやゲームの主人公達は、ピンチに直面した時どうやって乗り越えていたのかを。
(1)新たな能力に目覚めるor隠されていた能力が覚醒する
(2)仲間との絆の力で戦力UP
(3)機転を利かせて戦う
今のショウタには、能力もなければ仲間もいない。
ならば、答えは自ずと導き出される……。
ロックゴーレムは一度、石つぶてによる攻撃をやめた。
連続して打ち続けたので、左拳が熱を帯びてしまったのだ。
少しの間、放熱をしなければならない。
ロックゴーレムが乱射した先には、砂埃が上がっていた。
その中から、マッドゴーレムが現れる。
そしてマッドゴーレムの中から、ショウタが呟いた。
「ようよう! 俺は平成生まれ、インターネット育ち。能力無ければ、学もねぇ。金もねぇ、友達少ねぇ、彼女なんている訳ねぇ。ツ○ッターに、誰もいいねを押してくれない飯画像を投稿し続けるくらい承認欲求だけは一丁前。そんな、なんにもねぇ空っぽの俺だが……」
ショウタはロックゴーレムを睨みつけ、真っ直ぐと棍棒を向けた。
「アニメとゲームに教わった熱い心だけは、今でも忘れずに持ってるぜ!!」
ロックゴーレムは、彼の言っている意味がよく分からなかった。
しかし、何故か感動していた。
どうやらロックゴーレムの中の人は、ショウタの言葉が心に響いて涙を流している様子だ。
すると突然、ロックゴーレムが頷く。
「やっぱりアンタは、俺の思っていた通りの英雄だぜ! アンタと戦えて光栄だ!」
ロックゴーレムは言うと、右腕を突き出した。
「アンタの勇気に応えて、俺も全力でいかせてもらうぜ!!」
するとショウタの後方で、巨大な岩が炎を噴き出した!
ロックゴーレムが、先ほど発射した右拳だ。
その右拳が彼の元へ戻ろうとして、動き出したのだ!
その時!
突然ショウタが、駆け出した!
彼は飛び立とうとする岩に向かって、全力で走る!
彼の脳裏には、昔遊んだゲームの知識が蘇っていた。
大抵ボスの強力な一撃の直後は、同時に弱点が出来るものだ。
ボスの攻撃を逆手に取ったり、地形を利用したりして戦う攻略法を彼は今まで沢山見てきた。
この状況から考えるに、恐らくこの強力なロケットパンチは弱点だ!
彼は、走りながら叫ぶ!
「うおおおおおおおおおおおお!!」
そして、ジャンプ!
彼は、低空を飛ぶ右拳に飛び乗った!
ロックゴーレムは、それを見て驚く!
「なに!?」
観客からも、歓声が上がった!
解説のお姉さんも興奮する!
「凄い! 凄いぞ! マッドゴーレムが、相手の攻撃を逆手に取って空を飛んでいる!!」
ショウタは高速で飛ぶ大岩の上に跨って、棍棒を振りかぶった!
この勢いで、殴りつけたら物凄い衝撃だ!
大岩は、ロックゴーレムの目の前まで迫る!
ショウタは叫んだ!
「ゆとり世代、なめんなアアアアアアアア!!」
すると、次の瞬間!
「あっ!」
観客、解説、ロックゴーレム、そしてショウタ、全ての人が唖然とした。
なんとショウタが、勢い余ってズルッと岩から落ちてしまったのだ。
ショウタは、凄く恥ずかしい!
しかし………。
ズドーーーーン!
ロックゴーレムの正面に、ロケットパンチが直撃!
ロックゴーレムは、まさかの事態に唖然としていて自分の右拳を受け止め損ったのだ。
ロックゴーレムは倒れた。
その強固な岩の体には、ヒビが入っていた。
相当な衝撃だったらしい。
ロックゴーレムは、再起不能になってしまったのだ。
すると突然ショウタは、ムクリと起き上がる。
それを見て、ショウタ側の観客席から歓声が上がった!
少女と村人達が、立ち上がって喜んでいた!
「やったーーーー!!」
「勝ったどおおお!!」
村人達は、肩を摩りあって涙を流した。
「いがっだぁ! 勇者様ならやってくれると、おらぁ信じでだった!」
「おめぇ疑ってばりだったべや! 嘘ばりつくなぁ!」
会場には、興奮気味に叫ぶ解説のお姉さんの声が響き渡った!
「なんとぉ! なんとぉぉぉ! 一回戦の優勝者は、マッドゴーレム選手に決定いたしましたぁ!!」
それを聞いて、対戦相手側の観客も沸いた。
万年最下位だったチームが、ついに初戦を勝ち抜いたのである。
これは歴史的瞬間だった!
解説のお姉さんからも、祝福の言葉が贈られる。
「おめでとう御座います! 本当におめでとう御座います! マッドゴーレム選手には、二回戦への出場権利と1000女神ポイントが与えられます! 本当におめでとう!」
観客総立ちで拍手を送る中、ショウタは人々に手を振った。
彼に向けられた歓声と拍手は、いつまでも鳴り止まなかった。
その夜、タダノ村では宴が開かれた。
村人総出でキャンプファイヤーを囲み、飲めや歌えの大宴会が行われたのだ。
それはそれは、盛大などんちゃん騒ぎだった。
数十年、いや数百年間一度も勝ったことの無かったこの村が、遂に勝利したのだ!
村人にとって、どれほど嬉かったことだろう。
村人は皆ベロンベロンになるまで酒を飲み、腹がはち切れそうになるまで飯を食った。
ショウタは、その光景を見て少し嬉しかった。
あれ? 意外と、自分が求めていた異世界ってこんな感じじゃなかったか?
彼は、そう考えながら酒を一気に飲み干した。
「プハ~」
すると空いたジョッキに、誰かが酒を注いでくれる。
金髪の少女だ。
彼女は、ショウタを見つめた。
「ショウタさん、色々手違いがあったようでごめんなさい」
「あぁ……まぁ仕方ないよ。誰にでも間違いはあるさ」
「あの、それでなんですが……よろしかったら引き続きゴーレムライダーとして……」
「いいよ!」
「え?」
ショウタは、キャンプファイヤーの周りで踊り狂う村人達を眺めながら言った。
「俺この世界のこと、少しだけ気に入ったかも知れない。もう少しだけなら、いてもいいかな?」
少女は、それを聞いて笑顔になった。
そして、ショウタを見つめて言った。
「ショウタさん! これからもよろしくお願いします!」
「おう! よろしくな!」
村の宴は、夜通し行われた。
その熱狂は収まることがなく、ついにはそのまま朝を迎えたのだ。
翌朝、とても静かな朝が訪れた。
人々は酔っ払ったまま、その辺で寝っ転がっていた。
そんな中、突然一人の男の叫び声が響く!
「えええええええええええええええ!!」
その声で、寝ていた村人達が目を覚ました。
「なんだべ、うるせぇこと……」
「あれ、勇者様の声でねぇの?」
叫んでいたのは、ショウタだ。
彼は、金髪の少女を問い詰めていた。
「何で!? どうして!? 残り100女神ポイントしか無いってどう言うこと!?」
「あのぉ……実は……宴に使ってしまって……」
食事代:一人10ポイント×50人=500ポイント
酒代:一人6ポイント×50人=300ポイント
その他:(キャンプファイヤー等)100ポイント
それで残り、100ポイントという訳だ。
ショウタは項垂れた。
そして少女に尋ねた。
「それで、100ポイントでどれくらいゴーレムを強化出来るんだ?」
「えぇと……金属製の棍棒を一本買えますよ! 安いやつですけど……」
「……」
ショウタは、それを聞いて顔を上げた。
そして言い放った。
「悪りぃ……やっぱ俺、出て行くわ」
「ええええええええええええ!!」
ショウタは振り返り、そのまま村を後にしてしまった。
最後まで読んでくださって、ありがとうございました!
今作は、一度ここで終了となります。
また機会がありましたら、いつか続きを書きたいと思います。
そして皆様からの、いいね・評価・感想等もお待ちしております!
どうぞよろしくお願い致します!
それではまた、次の世界でお会いしましょう!
GO!GO!ゴーレム!