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第1話 オタクが全員、ロボットアニメを見る訳じゃないんですよ!

不定期更新です。

どうぞ、気長によろしくお願いします。


「貴方は、オタクですか?」


 暗闇の中から、若い女性の声が響く。

 ショウタは、突然の質問に驚いた。

 オタクですか、だって……?


 ショウタは、一瞬悩む。

 彼は幼い頃から、アニメやゲームにどっぷりと浸かっていた日々を思い出した。

 彼の場合、オタク文化は物心ついた頃から当たり前のように身の回りに存在したのだ。

 そう、まるで空気のように。


 オタクですか? という質問が、アニメ見ますか? ゲームしますか?

 と言う意味だとしたら、貴方空気吸った事ありますか? と言うのと同じくらい馬鹿らしい質問だ。


 ショウタは、最後のゆとり世代。

 この世代の人間ならば、アニメやゲームに一切触れていない人間の方が少ないのではないだろうか?

 もしアニメを見たりゲームをするだけでオタクとされるのならば、同世代の人間は殆ど皆オタクと言うことになる。


 しかし、現実はそうではない。

 アニメを見ていようがゲームをしていようが、オタクとして生きている人もいればそうでない人もいる。

 ショウタの悩みどころは、そこにあった。

 確かに自分は人生の大半をアニメやゲームに捧げてきたが、オタクを名乗れるほど知識が深いわけではない。

 ハッキリ言うと、オタクとして浅いのだ。


 ショウタには、こんな自分がオタクを名乗って良いのだろうかと言う思いがあった。

 しかし、それではオタクでは無いのかと問われれば……それも違う。

 ショウタのようなオタク文化にどっぷりと浸かった人間が、オタクではないと言い張ったとしても滑稽でしかない。


 それ故、ショウタは返答に困った。

 彼は暗闇の中で、一人自問自答する。

 自分は、オタクか否か?


 すると突然、彼の中に一つの疑問が浮かんだ。

 なぜ、女性が自分にこんな質問を?

 彼は学生時代以来、殆ど女性と関わっていない。

 でもまあ、時々コンカフェの女の子とは話すので全く女性と関わりがないわけではない。

 ああ、あと母親。


 ショウタはそれに気づいて、初めて周囲を見渡した。

 周囲は、真っ暗で何もない。


 どうして自分は、こんな所にいるのだろう?

 彼は、思い出そうとした。ここまで辿り着いた経緯を。

 ……。


「あっ」


 そして、彼は思い出した。

 自分が、死ぬ場面を。

 まるで転生ものの主人公のように、交通事故で死んだのだ。

 自分がトラックに轢かれる場面が、鮮明に記憶に残っている。


 彼は、再び周囲を見渡した。

 交通事故で死に、暗闇に放りだされて、若い女性に質問を受けた……。

 これって、もしかして……異世界転生では?

 彼は、口元に笑みを浮かべた。


 もしこれが異世界転生ならば、この先に待っているのは剣と魔法の冒険世界!

 仲間と共に魔王を倒し、美少女に囲まれながら、まったりスローライフを送るのだ!

 最高じゃないか! やっぱり、異世界はあったんだ!


 だが待てよ、何でオタクかどうかを聞いたんだ?

 ……まあ、いいか。

 相手がオタクを求めているのならば、答えてあげるが世の情け!

 実際、嘘では無いのだから!


 ショウタは、深く息を吸い込んだ。

 そして、盛大に言い放った!


「ああ! 俺はオタクだ!」


 彼の声は、闇の中にこだました。

 するとすぐに、暗闇から返事があった。


「よかった! 成功です!」

「お?」


 次の瞬間!

 突然、目の前から光が迫ってきた!

 眩しい。目を開けていられない。

 ショウタは、手で顔を覆った。


 すると突然、明るい部屋に出た。

 木造の民家だ。

 少し古びていて、家具も随分と簡素。

 ショウタの足元には、魔法陣が描かれている。


 ショウタは突然暗いところから移動してきた為、目がチカチカしていた。

 しかし、次第に目が光に慣れてくる。

 彼は、ゆっくりと顔を覆っていた手を退けた。

 すると……。


 目の前には、金髪の美少女が立っていた!

 キター! 異世界美少女キタコレ!

 ショウタは、興奮気味だ。


 少女はよく見ると、そばかすがあり、服が冴えない感じで、何だか田舎っぽい雰囲気だが、まあそんな事はどうだって良い!

 本物の、異世界美少女なのだ!

 ショウタが喜んでいると、少女が声を掛けて来た。


「ショウタ様ですね! 我々の村へようこそ!」


 少女の言葉に対し、ショウタは落ち着いて堂々と返事をした。


「そうだ! 俺が、ショウタ! 君が俺を呼び出したのか?」

「はい! ショウタ様、どうか我々の村をお救いください!」


 キタキタキタキタ!

 これは、魔物か何かに苦しめられている村を救うパターンだ。

 これからスキルを与えられて、悪い奴らをバッタバッタと倒していくのだ!

 盛り上がって参りましたぁ!


 ショウタは、少女に告げた。


「分かった! 俺が何とかしよう!」

「本当ですか! 良かった!」


 少女は、ショウタに笑顔を向ける。

 可愛い!

 それを見てショウタは、続けた。


「それじゃあ早速、スキルを選ばせて貰おうか!」

「……スキル?」


 あれ? スキルを貰える訳ではないのか。

 ならば……。


「ああ、すまんすまん。じゃあ武器を選ばせてくれ!」

「えぇと……」


 武器でもないのか?

 ショウタは続けた。


「魔法か? 仲間か? ペットか?」

「……あのぉ。私よく分からないのですが……」


 少女は困惑しながら続けた。


「一応、ゴーレムを用意してあります」

「ゴーレム?」


 ショウタは、首を傾げた。

 ゴーレムで、異世界を冒険するのか?

 んー……。ま、いいか! なんか強そうだし。

 ショウタは気を取り直して、少女に告げた。


「分かった! では、そのゴーレムとやらまで案内してくれ!」

「はい!」


 少女は振り向き、古びた建物の出口へと向かう。

 どうやら、ゴーレムは外に用意してあるようだ。

 ショウタは、ワクワクして来た。

 これから、夢とロマンの冒険の旅が始まるのだ。


 しかし突然ショウタは、一つ気になる事を思い出した。

 彼は少女を呼び止めて、質問する。


「なあ! そういえば、何で俺がオタクかどうかを聞いたんだ?」

「え?」


 少女は、不思議な顔をした。

 そして、答えた。


「ゴーレムを操作するに当たって、オタクが最適であると占い師のお婆さまが仰られたので……」

「オタクがゴーレムの操作に最適?」


 どう言う事だろう。

 オタクとゴーレム、全然結びつかないが……。

 ショウタが困惑していると、少女が続けた。


「オタクの方って、ロボットやメカに詳しいんでしょう?」

「え……」


 ショウタは、彼女の発言に驚いた。

 この子はオタクならば皆、「ガ○ダム」を見てると思っているタイプなのだろうか?

 それはちょっと偏見では?


 ロボットアニメを見ないオタクだって世の中には沢山いるんですよ!

 いや、沢山かどうかは正直分からないが、現にショウタはあまり見ていない。

 それを聞いて彼は、キッパリと答えた。


「俺、全然メカとか詳しくないけど?」

「えぇ!!」


 少女は狼狽えた。


「でも……でも……、占い師のお婆さまが……」


 彼女が衝撃の事実に驚いていると、突然玄関が開いた。

 すると、外から農民のような姿の人々がゾロゾロと入ってきた。


「勇者様の召喚、うまぐいったべか?」


 彼らは、ショウタを見た。

 すると突然、喜びの声を上げた。


「おお! あんだが、ゴーレムの扱いに長けた勇者様でがすか!」

「いや……俺は……」


 ショウタは、ゴーレムの事など知らない。

 興味もない。

 キッパリと、違うと言い切ろうとした。

 その時!


 金髪の少女が、彼の前に立ちはだかった。

 そして彼女は、村人達を見る。


「そうです! この方が、ゴーレムライダーのショウタ様です!」

「おお!」


 村人達は、喜ぶ。

 そしてお互いに肩を摩り、涙を流した。


「いがっだ~。おらだずのなけなしのポイント、あづめだかいがあっだな……」


 ショウタは、少女に声をかける。


「おい、俺ゴーレムなんか操作できないぞ!」


 すると少女は切羽詰まった様子で、ショウタを見た。


「お願いです、話を合わせてください! あなたの召喚の為に、村の全財産を使ったんです!」

「あ?」


 何だか、めんどくさい事に巻き込まれたらしい。

 ショウタは、急にダルくなってきた。


「ねえ、もう帰っていいかな? 多分、まだ火葬されてないから間に合うよね?」

「ダメです! もう、間に合いません!」

「えぇ……」


 彼らがそんな会話をしていると、村人達が外へと促した。


「ゴーレムは、こっちさ用意してあります。さあ……」


 ショウタは促されて、仕方なく外へと出た。

 すると外は、何もない農村だった。

 周辺には、畑と民家がポツリポツリと点在している。


 その小さな村の中央に、大きな人型のゴーレムが座っていた。

 大きいと言っても、立ち上がって5メートルくらいだろう。

 ゴーレムの周辺には、村人が集まっていた。


「こっちでがす! 勇者様、どうぞ乗ってけらいん!」


 村人達はショウタに対して、ゴーレムに乗るよう薦めた。

 ショウタは、取り敢えずゴーレムに近寄ってみる。

 このゴーレムは、土? いや、泥で出来ている様子だ。

 ゴーレムって普通、岩では?


 ショウタはしばらく、ゴーレムを見つめた。

 しかし、乗り方が分からない。

 肩にでも乗るのだろうか?

 彼が困惑していると、村人達がヒソヒソと話を始めた。


「勇者様、乗り方が分がんねんでねぇべか?」

「んな訳ねぇべっちゃ! プロを呼んだでがすど!」


 すると見かねて、ショウタの元に金髪の少女が急いで駆け寄った。

 彼女は、慌ててささやく。


「ゴーレムの背中に触れてください! 早く!」


 ショウタは、言われるまま仕方なくゴーレムに触れた。

 すると……。


 ズブズブズブッ!


 なんとショウタの腕が、ゴーレムの体に取り込まれ始めた!

 ショウタは、驚いて暴れる!


「え!? 何これ大丈夫? キモいんだけど!!」


 彼は抵抗するが、その抵抗も虚しくどんどんゴーレムの中に飲み込まれていく。


「助けてくれ! う、うわああああああああ!」


 彼は叫びながら、泥の中に飲み込まれてしまった。

 辺りは急に静かになる。


 すると突然、ゴーレムの目が白く発光した。

 そして、座っていたゴーレムが立ち上がる!

 その様子を見て、村人が歓声を上げた!


「うおおおおおおおおおおおおおお!!」


 ゴーレムは、自分の腕を眺めている。

 ゴーレムの体が、ショウタの体と一体化したのだ。

 彼は、自分の体がそのまま大きくなったように感じていた。


 ショウタは、巨大な体で振り返る。

 そして少女を見た。


「まあ、悪くないな……それで? 敵はどこだ?」

「敵?」

「そう、敵だよ。魔王? 魔女? それとも他国の王様とか?」

「ああ! 対戦相手の事ですね!」

「ん? 対戦相手?」


 ショウタは困惑した。

 村を救ってくれと言っていたのに、あまり危機に瀕している感じがしない。

 悪者を倒すような雰囲気ではなさそうだ。


 すると少女が、得意げな表情で言い放った!


「既にトーナメントへのエントリーは、済ませてあります! 早速、闘技場へ向かいましょう!」

「え? ちょっと待って、何それ? 一回、世界観の設定を聞いてもいいかな?」

「?」


 少女は、困惑したが。

 肩をすくめて、解説をした。


「ショウタ様にはこれから、ゴーレムトーナメントに出場して頂きます! そしてトーナメントで優勝をして、我々の村に富と名声をもたらして下さい!」


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