4話 寝てる間にレベルアップだ!
僕が助かるにはこのままレベルを上げて魔獣を倒すしかない。
少し前のレベル1の僕なら、魔獣を倒すなど考えもしなかったことだった。
しかし、今の僕は小さな町なら1番の魔法使いに匹敵するレベルに成長していた。
今は焦らずに、このまま攻撃を受け続けよう。
チャンスを待つんだ!
相変わらず魔獣は攻撃の手を緩めない。
「そういえば、石化した状態でも【バランス】は使えるのかな?」
石化中でも【鑑定】が使えたのだ、【バランス】も使えるだろうと思った。
【回復】
試しに回復魔法を自分にかけてみた。
すると、岩に潰された足、全身の打撲が少しづつうちに治っていく。
「おぉっ! すごい!」
レベル1の時は指のささくれを治せるくらいの魔力だった。
それが今では全身の怪我を治せるまでになっていた。
「信じられない……僕の魔法がこんなにレベルアップしているなんて」
【石化の首飾り】のおかげで気を失っているだけでここまで成長していることに驚いた。
石化のおかげで元々痛みはなかったが、なににしろもう歩けないだろと思ってた足を治すことができた。
「回復魔法でこれなら、攻撃魔法はどうなっているんだ……?」
僕は魔獣に攻撃魔法を使ってみようと思った。しかし……
「いや……待て、やめておこう。魔獣が警戒して攻撃をやめても困るしな……」
このまま魔獣の攻撃を受け続け、経験値を貯めるしか、僕が生き延びる方法はない。
余計なことをするのはやめておこう。
魔獣のレベルは一番高くてレベル60くらいか?
僕もレベル60くらいまで……いや、念のためレベル70くらいには上げて石化を解きたい。
どれくらいの時間がかかるかは分からない。
でも、待つしかない。この魔獣たちを倒し、ダンジョンを脱出できるレベルになるまで。
◇
しばらくたって、また自分を【鑑定】してみた。
身動きの取れない今、僕にできることは【鑑定】くらいだ。
レベルアップのおかげか、以前よりも細かく情報を見れるようになっていた。
体力、攻撃力なども成長しているが、それよりレベルアップした自分の使える魔法をみて驚いた。
魔法の名前は知っているが、自分には使うことなど考えたこともない魔法をたくさん取得していた。
僕の【バランス】は様々な魔法を同じ魔力で使える珍しいスキルだが、魔法の種類が多くなるとその分1つ1つの魔法は弱くなってしまう。
そのため、この【バランス】のスキルを持つもので強力な魔導士になったものはほとんどいないと聞く。
僕も同世代の【炎使い】や【水使い】のような1つの属性に特化した魔導士には歯が立たないのだ。
貴重な【スキル】だが、なかなか使いこなせないでいた。しかし、今の僕は違う。
レベル1の僕が、本来ならあり得ないような場違いなA級ダンジョンで強力な魔獣と戦闘? を続けて、爆発的にに成長していた。
「すごいな……僕がこんなに魔法を使えるなんて。聞いたことのない魔法もあるな」
僕は1つ1つ魔法の能力を【鑑定】していた。
日頃は勉強熱心ではないが、時間はまだまだかかるのだ。とにかく時間を潰さなければならない。
【鑑定】にも飽き始めた僕。
もっと早くレベルを上げることはできないのだろうか?
新しく使えるようになった魔法の能力をみる。
「おっ? この魔法は使えるか? これも悪くないぞ」
いくつか気になる魔法があった。それは【誘導】と【眠気】だ。
「……これならいけるかもしれないな」
僕は1つの作戦を思いついた。
【誘導】はフェロモンを放出し、魔獣の注目を集める魔法だ。
本来は自分から魔獣を遠ざけたいときに【誘導】を離れたところに使い、注意をそらす使い方をする。
【眠気】は文字通り、相手を眠らせる魔法。
僕の考えた作戦はこうだ。
まず【誘導】を僕自身にかける。
そうすれば今より多くの魔獣が僕に襲い掛かるだろう。
そして、【眠気】も自分にかける。
そうすれば、睡魔に襲われ、退屈な時間を過ごすことなく、目が覚める頃には今よりもレベルアップしているはずだ。
魔獣な軍団のど真ん中で寝るという、危険な作戦ではあるが、僕はこれに賭けてみようと思った。
◇
【誘導】発動!
僕は自分に【誘導】をかけた。モンスターをおびき寄せるフェロモンが僕から溢れ出る。
すると………
「「「「「「ガァァァアアアアア」」」」」」
すぐにとんでもない数の魔獣が襲い掛かってきた!
「ひいぃ!!」
石化しているとはいえ、おびただしい数の魔獣に襲われてるのは恐怖であった。
「こんなに魔獣が集まるなんて……大丈夫かな?」
さすがに不安になってきた僕だったが、
「まあ、やるしかないか……じゃあな魔獣ども、僕が起きる……それがお前たちの最期だ!」
【眠気】発動!
僕は眠気に包まれた。
魔獣達に牙や爪の打撃音が子守歌に聴こえるような安らかな眠気だった。
大量の魔獣が襲い掛かる中、僕は熟睡した。
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