35話 本物と偽物
「――お、おい、見ろ! あそこにいるの、あのリューイじゃねえか!?」
「すごっ! あれは『トゥルーボスキラー』のリューイよ!」
「すげー、生じゃん、本物じゃんっ……!」
「「「「「わーっ!」」」」」
「……」
1階の大広間に来てすぐ、俺たちは近くにいた冒険者たちに囲まれることとなってしまった。
なんだ、『トゥルーボスキラー』って。まるで前のパーティー『ボスキラー』が偽物みたいな言い方だな。確かに正解ではあるんだが、ここまで注目、歓迎されるとさすがに照れる……。
「ちょっと、あなたたち! リューイ様はあたしだけのものよ、下がりなさい!」
「だ、誰だこいつ!?」
「この女、どけよ。見ない顔のくせに生意気だぞ!」
「うっ……」
ルディが野次馬たちから思わぬ反撃を受けて涙目だ。まあ普段は箱庭にいるから仕方ないが、いずれは魔法しか効かないモンスターとか出てくる可能性だってあるし、そのときに誰かと入れ替わりで活躍できるかもしれない。
「お嬢様をいじめたら、わたくしめがただでは済ましませんことよっ!」
「「「っ!?」」」
クレアの見た目と反したただならぬ殺気にみんなビビってる様子。そりゃ凄腕の暗殺者だしな……。
「リュ、リューイ氏、見てください、あそこに僕たちの雄姿が映ってますよ!」
「サラもだあっ! 照れちゃーう!」
「はうぅ、恥ずかしいですううぅ」
「おでもだあぁ……」
「あ、ああ……」
俺たちの周りに人がどんどん集まってきたことで、遠くからでもボスルームパネルの映像がはっきりと見渡せるようになったわけだが、その1から10までのパネルには今までの軌跡がしっかりと映し出されていて感動的だった。
「これもリューイ氏のおかげですよ……」
「だねえ。お兄ちゃんったら泣かないのっ」
「サラ、泣きたくもなりますよ、今までの苦労を思えば……」
「あうぅ。中々最後のピースが埋まりませんでしたからねえ。これもリューイさんのおかげですう」
「おでもそう思う。リューイさん、救世主だ……」
「ふん、リューイ様のおかげだなんて、そんなの当然よ!」
「わたくしめも同感ですっ!」
「いや、自分だけの力じゃここまで来られなかったよ。追放されたあと、俺は失意のままダンジョンタワーを離れていてもおかしくなかった。あそこから立ち直れたのは、みんながいたからこそだ。ありがとう」
「いやいや、リューイ氏、お礼を言いたいのはこっちのほうですよ」
「サラからもお礼ね、リューイさん、ありがとう!」
「リューイさん、私からもありがとうですうぅ」
「おでからも、ありがとう。リューイさん……」
「あ、あたしなんて数秒ごとにリューイ様に感謝してるわよ!」
「わたくしめからも、謹んでご主人様にお礼を申し上げますっ!」
「……」
おかしいな、みんなの喜んだ顔が霞んで見えない……。本当にいい仲間たちに巡り合えたし、ここまで頑張ってきた甲斐があったもんだ――
「――リューイ、久しぶりっ」
「あ……」
この、心をくすぐるようななんとも懐かしい声は……やはりそうだった。野次馬たちがどっと騒ぎ立てて注目するのもよくわかるほどの連中が大広間に現れたのだ。
「アリーシャ、ウォーレン、セシア、カイル、それに、レビーナ……」
あの面々、忘れもしない……。声をかけてきた回復術師アリーシャを筆頭に、魔術師ウォーレン、補助術師セシア、盗賊カイル、錬金術師レビーナが順にこっちに歩み寄ってきていた。
「なんだなんだ?」
「お、おい、あれ、リューイの元パーティー『ボスキラー』じゃね!?」
「ホントだ! それも偽物のほうよね? 確か、喧嘩かなんかで追い出したって聞いたわよ!?」
「これは……因縁の再会ってやつか!」
「「「「「わあぁっ!」」」」」
「……」
嫌なものを見せつけられてこっちの気分は最悪だが、野次馬たちの盛り上がりは最高潮のようだ。
「――会いたかったよ、リューイ……!」
「えっ……?」
アリーシャが満面の笑顔を浮かべて俺のほうに駆け寄ってきたかと思うと、躊躇なく抱き付いてきた。おいおい、あれだけ人を邪魔者扱いしておいてこれとか、馬鹿にするのにもほどがあるぞ……。
「ちょっと、あたしのリューイ様に触れないでよ! この阿婆擦れ!」
「ひゃうっ!?」
ルディがアリーシャを突き放してくれたので正直胸がすっとした……って、それで本性を現すかと思いきや、わけがわからないといった様子で立ち尽くしてる。おいおい、そんなタマかよ。
今度はウォーレンのほうに疑惑の視線を向けてみると、いずれも申し訳なさそうに下を向いているのがわかった。なんだ? あいつら一体何を考えている……?




