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25話 サービス


「やっと思い出した。なんとも賑やかなマップだな……」


 3階層に来たばかりの俺たちは、周囲の光景を目にしてしばらく動けなくなっていた。相変わらず、本当に騒々しい。


「た、確かにリューイ氏の言う通りですねえ」


「サラもびっくり……」


「あうあう、私もちょびっとだけ思考が停止してしまいましたあ」


「お、おでも……」


 一度行ったことのある俺ですらびっくりしたほどだし、何も知らないシグたちが呆然とするのも当然の話で、いざダンジョンだと気合が入っていた俺たちの目前には海に臨むビーチがこれでもかと広がっていたのだ。


 もちろん人が多くて、しかもほとんどが水着姿ではしゃいでるもんだから、ここがダンジョンであることを一瞬忘れてしまうほどだった。


「そういえばそうだった。ここはサービスステージだったんだ……」


「「「「サービスステージ……?」」」」


「ああ、一日に3回、不定期に魔法陣が現れて巨大なヒトデが出てくるんだけど、それがこの3階層のボスで、一番ダメージを与えたパーティーがクリアになるんだ」


「「「「へえ……」」」」


 俺がこの印象的なはずのサービスステージのことを忘れてしまってたのは、みんな遊んでる中で自分だけテントの見張り役を嫌というほどさせられたからだろう。それで辛いことを早く忘れようと思って努力した結果だ。


 当時は俺自身強く言える立場じゃないと思ってたし、これだけ混んでるからってことで渋々承諾したのを今でも覚えている。


 もちろんボスが出てきたときは参加したが、それでもセシアに睨まれつつ反属性の凡庸な『ライトニングボトル』を投げて攻撃したんだったなあ。まあ今となればそういうこともあったなと思うくらいだ。


「いやー、驚きましたね。まさかサービスステージとは……。しかし、これだけ人が多いと遊泳するにしても微妙ですねえ」


「あ、ああ……」


 さすがにこんなに混雑したところで泳ぐのはなあ。


「ホント、ちょっと泳いだら誰かにぶつかりそう」


「はうぅ、しかも気が付いたら誘拐されちゃってそうですねえ」


「ひ、ひい。おで怖い……」


「……」


 さすがにワドルを誘拐するやつはいないだろうが、ガタイがいいし無理矢理連れ去ってタンク役にしようとするやつもいるかもしれない。


 というか、みんなネガティブ発言とは裏腹に遊んでる冒険者たちを羨ましそうに見てるな。サービスステージで過去の俺と同じような惨めな思いはさせたくないし、なんとかしてやれないものか……って、そうだ、いいことを思いついた。


「どうせ遊ぶなら箱庭のビーチのほうがいいんじゃ?」


「「「「あっ……」」」」


 このマップを持っていけばルディたちに凄く喜ばれるだろうし、もちろん俺たちにとっても嬉しい。一石二鳥ってわけだ。


「さすがリューイ氏、それなら安全に遊べますねえ」


「早速サラ作るー!」


「それなら誰にも気兼ねせずに泳げそうですう」


「お、おで、誘拐されなくて済むんだ。ありがとう、リューイさん……」


「あはは……それじゃ、みんなでボスが出てくるまでテントの中で待ってようか?」


「「「「賛成っ!」」」」


 ってなわけでみんなと久々に例の中が狭い粗悪なテントに入ったわけだが、不思議と嫌な感じはしなかった。むしろ懐かしくて安堵したくらいだ。


 前のパーティーだと広いテントを使ってたわけだが、攻略するにつれて居心地が悪くなっていく感じがしたのは、自分が知らないうちにヘイトを集めて全体の空気が濁ってたのが原因なんだろうな――


「――ぶわっ……!?」


 って、考え事をしてたせいで干してあった女性物の下着にまたしても顔が当たってしまった。それも連続で。


 サラとアシュリーの笑い声が聞こえてくるし、これもう俺がわざとやってるって思われてもおかしくないな。まあサービスステージの一種だと思うことにするか……。

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