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14話 正解と不正解


『『『『『ギギギギッ……』』』』』


 ダンジョンタワー、101階層の洞窟近辺にて、氷で形作られた狼たち――アイスビースト――の無数の赤い目が煌めき、独特な唸り声が重複した。


 錬金術師レビーナの使った誘魔剤の効果もあり、そこにいるウォーレンをリーダーとするパーティーの周辺をモンスターが覆いつくすほどだった。


「ちょ、ちょっとレビーナ、いくらなんでも集めすぎじゃないの!?」


「いや、姉さんは相変わらず心配性だね。これくらい、僕は一向に構わないよ」


 補助術師のセシアが苦言を呈するが、ウォーレンは涼しい顔でそう言ってのけた。


「アリーシャ、僕から少し離れてて」


「はーい」


「クローズバリア」


 自身の詠唱により仄かな青いオーラで包まれたウォーレンが、一切の躊躇も感じさせない足取りでモンスターたちのほうへと歩み寄っていく。


『『『『『――ウガーッ!』』』』』』


 アイスビーストの群れが一斉にウォーレンに襲い掛かるも、次々と跳ね返されていく。


「ウォーレン、さすがの防御力だよー! 私の回復術、全然必要なさそー!」


「アリーシャ、ふざけないで。弟はああ見えて小さな傷を負っているのだからさっさと回復して頂戴。少しの傷の積み重ねが大きなダメージに繋がるのよ!」


「は、はい!」


 セシアに叱りつけられ、しゅんとしながらもウォーレンの体を癒す回復術師のアリーシャ。


「おー、こわ。でもそういう苛烈なところも好きだぜ、セシアちゃん」


「カイル、ふざけないで! ウォーレン、ちゃんとアリーシャに教育しておきなさい」


「わかってるさ、姉さん。アリーシャ、次からは気をつけるんだよ」


「はぁい」


「レッドウォール」


 ウォーレンが次に見せた魔法は燃え盛るような赤壁であり、次こそはとウォールめがけて突っ込んできたアイスビーストたちの体がどんどん溶けてなくなっていくのだった。


「タンク役と殲滅役、どっちもこなせるなんて素敵です、ウォーレンさんっ……!」


 錬金術師レビーナが心底感心したようにしみじみと言いつつ、自身の作った劇薬『ライトニングボトル』を投げることによって援護射撃をしていた。


「へえ、レビーナったらまあまあやるわね。水属性に対して反属性の風属性を使うのは当然として、威力もあの役立たずに比べたら充分あるみたいだし。でも、無駄も多いわね。もっと命中させられるはずだけれど」


「精進します、セシアさん……!」


「まあ、いいわ。こっちも仕事しなきゃね」


 セシアはレビーナに注文をつけつつ、味方にかけていたバフを途切れる寸前で上書きさせることも忘れなかった。


 まもなく狼の大群が跡形もなく掃討され、ウォーレンたちの視界が歪み出し、見る見る別の景色へと変化していく。


「もうノルマ達成でボス部屋だ。この未だかつてないスピード……やはりリューイを追放したのは正解だったね」


「ウォーレンったら、バカね。そんなわかりきったこと」


「ほんと、セシアさんの言う通りだよ、ウォーレンったら今更ー」


「くすくす、面白い冗談ですねぇ」


「まったくだ。これが正解じゃなかったら天地がひっくり返るレベルだぜ?」


「「「「「アハハッ!」」」」」


 雪原とボス部屋が混ざり合う光景の中、ウォーレンたちの高笑いが響き渡った。




 ◇◇◇




「――ぶはっ……!」


 くしゃみが出そうになり、俺は慌てて枕を顔に当てて音量を絞った。


「ふう……」


 危なかった。誰か俺の噂でもしてたのかな? 暗がりの中、目を凝らして確認したがみんな起きることなく寝静まってる様子。


 このサラのおばあちゃんの家は個室とかがなくて、広間にあるソファをどかしてみんなで床に就く格好だったんだ。


 リーダーのシグやワドルは早くからいびきをかいて寝てたが、サラ、アシュリー、ルディ、クレアの女性陣は結構夜更けまで起きてたらしく、ヒソヒソとした会話が聞こえてきたのを覚えてる。主にボス部屋のことを話してるみたいで、ルディが特に興奮気味でいいなあと何度も零してるのが印象的だった。


 彼女は俺とほかのみんなに対する扱いが違いすぎるから少し心配したものの、大分打ち解けてるみたいだし大丈夫そうだな。クレアの心遣いがあるのも大きいんだろう。


 そういや、ボス部屋で思い出したがウォーレンたちは今頃元気にしてるだろうか? 俺がいなくなった代わりに新人の錬金術師が入ったことで、おそらく一般モンスターに対する威力は上がってると思うが、ボスに対しては厳しいだろうな……。


 まあいいや。もう俺はあいつらとは関係ないんだし二度寝するとしよう。

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